2026年3⽉6⽇ 公開
グローバルリスクが互いに連関し、不確実性が高まる昨今の事業環境において、地政学的緊張、事業ポートフォリオの変化、海外拠点の拡大、サプライチェーンの寸断、サイバー攻撃、規制対応、そして気候変動がもたらす激甚災害など、企業を取り巻くリスクは複雑化の一途をたどっています。リスクは単体ではなく互いに連関しながらその影響度を高め、企業経営に大きなインパクトを与えます。こうした中で、リスクマネジャーは、リスクマネジメントを通して経営の意思決定を支えるパートナーとしての役割を求められています。
2025年10月15日に開催された「AIG Client Summit 2025※」でのパネルディスカッションの内容に触れながら、リスクマネジャーの役割について解説します。
- AIG Client Summit では、AIGが世界で培った知見をもとに企業のリスクマネジメント戦略への示唆を提供しています
リスクマネジャーの役割とは
リスクマネジャーは企業が直面する不確実性を最小化し、事業運営に欠かせないリスクマネジメント戦略の策定・実行をリードする専門職です。
リスクマネジャーの主な4つの役割
- リスクの見える化
事業計画・運営の状況を踏まえ、企業の屋台骨を揺るがすような重大なリスクを洗い出し、優先順位付けを行い、経営陣の意思決定を支えます。 - リスク対応策の設計
リスクの回避、軽減、転嫁、保有のリスク対応策の選択肢を検討します。リスク転嫁の為に保険を活用する場合は、保険プログラムの要件整理や更改管理を行い、事業の持続可能な成長を支えます。 - 現場と経営をつなぐ社内ハブ
各事業部のリスクを横串で把握し、海外子会社とのコミュニケーションを図りながら、自社および海外現地法人のリスク管理の全体像を俯瞰して把握します。リスクの全体最適を図る司令塔として、現場の実態と経営の視点をつなぎます。 - 外部パートナーとの連携
決定したリスクへの対応策を実施するにあたり、外部のパートナーと連携します。保険リスクに関しては、保険会社、保険ブローカー(保険仲立人)等から保険マーケット動向や専門的な知見を取り込み、条件交渉や事故対応を含めた調整を行います。グローバル規模の最適な補償内容の組成、海外の商習慣や法令を遵守したリスク対応、グローバルな事故対応体制などを通して、グローバル標準のリスクマネジメントに進化させます。
欧米企業と日本企業のリスクマネジャーアプローチの違い
<欧米企業>
欧米企業では、リスクマネジャーが専門職として明確に位置付けられ、経営戦略や主要な意思決定にリスクの観点から関与する体制が一般的です。ERM(Enterprise Risk Management:全社的リスクマネジメント)においては、組織全体のリスクを統合的かつ戦略的に管理し、企業価値の最大化を支援します。
欧米企業におけるリスクマネジャーのアプローチとして、次の3つが挙げられます。
- 経営戦略をリスク観点で支援
- 財務、法務、サプライチェーン担当部門等と横断的に連携
- グローバル保険プログラムの標準化を推進
Amazon社の事例
各事業部門が大きな裁量を持ち、意思決定が早く進む組織文化があります。リスクマネジャーは、企画・構想段階から新規事業やプロジェクトに参画し、事業やプロジェクトの進行に合わせて継続して関与する文化が根付いています。Amazonでは150名超から構成されるリスクマネジメントチームのうち、約20名がAmazon本体の各事業および子会社のリスクマネジャーとして配置されています。リスクマネジャーは専門職として位置づけられており、経営幹部や事業部門へのリスクと保険に関する対話を行います。
2025年10月15日開催 AIG Client Summit 2025
第1部 特別対談 『世界トップ企業のリスクマネジャーが語る、企業リスクマネジメントのグローバル最前線 ~資産管理から再保険までのベストプラクティス~』
ゲストスピーカー: マックス・バンジー氏 Amazon.com. Inc. ヘッド・オブ・コーポレートリスク&インシュランス(左)
対談者: ジェームス・ナッシュ AIG損害保険株式会社 代表取締役社長 兼 CEO(右)
<日本企業>
リスクマネジャーが新規事業、投資判断、海外展開などの戦略の企画検討段階から関与するケースもあれば、実務段階から関与するケースもあり、多様な関わり方が存在します。「保険リスクマネジャー」として、保険リスク管理を中心に担っている場合もあります。
日本企業におけるリスクマネジャーのアプローチ例として、次の3つが挙げられます。
- 事業部門と本社機能の役割を分担
- 全体最適を重視した運用を実践
- 合意形成を慎重に進める意思決定プロセスを確立
本社主導型・現場主導型・複合型のリスクマネジャーの特徴
不確実性が高まる昨今、海外進出や海外事業の拡大を検討する企業においては、海外拠点に潜むリスクがブラックボックス化しやすく、リスクの一元管理が求められています。ここでは、本社主導型と複合型(本社主導型+現場主導型)のリスクマネジャーの特徴を説明します。
<本社主導型>海外拠点を含めた全社的なリスクの把握と統制が求められる企業では、本社主導でリスクを集約・管理する本社主導型のアプローチが採られることがあります。
旭化成株式会社の事例
本社主導型の保険リスク管理を行っています。本社が意思決定の要となり、保険リスクマネジャーは全社的な整合性や管理基準の維持を担います。最高財務責任者(CFO)と密に連携して保険リスク管理を行う場合もあります。海外拠点、事業部門、関連部門からの情報を本社に集約し、整合性を保ちながら精査します。中には事業計画や方針が固まった段階で初めて保険リスクマネジャーに情報が共有されるケースも少なくありません。そのため、限られた期間で適切な判断を下し、必要な整理や調整を進めることも多く、全社で統一した管理基準やプロセスを維持し、保険会社や保険ブローカー等のリスクプロフェッショナルから情報を収集しながら、保険契約の管理や更改業務にあたります。
2025年10月15日開催 AIG Client Summit 2025
第3部 パネルディスカッション 『「守り」から「戦略」へ ~進化するリスクマネジメントのこれから~』
パネリスト: 三輪 剛氏 旭化成株式会社 保険・リスクマネジメント領域リードエキスパート 経理・財務部 保険・リスクマネジメントグループ長
<複合型>事業領域や・地域が多様な企業では、各事業現場に即した自律的リスク管理と全社共通リスクに係る本社主導型リスク管理の複合型アプローチが採られることがあります。
三井物産株式会社の事例
多種多様な事業を運営する三井物産では、事業現場と主管本部による第一線の自律的なリスクマネジメントを重視しています。その上で、第二線のコーポレートスタッフ部門、第三線の内部監査部が重層的に連携し、適宜経営報告を行い、統合リスク管理体制を構築しています。保険リスクマネジメントを担うリスクマネジャーは、第一線ではリスクコントロールを含む各事業現場の保険リスクマネジメントを側面から支援します。また、第二線では共通リスクに係るリスクファイナンスを統率、第三線では各事業現場の対応状況を定期的に評価し、改善取組を行います。複眼的な視野と機動的な対応で、保険リスクマネジメントの高度化と企業価値向上に貢献しています。
2025年10月15日開催 AIG Client Summit 2025
第3部 パネルディスカッション 『「守り」から「戦略へ」 ~進化するリスクマネジメントのこれから~ 』
パネリスト:鈴木 あや美氏 三井物産株式会社 コーポレートディベロップメント本部 総合力推進部 保険・リスクマネジメント室 室長
おわりに
欧米と日本では動き方(アプローチ方法)に違いもあるものの、リスクマネジャーは企業の価値向上、持続可能な成長を支えるキーパーソンであることには変わりありません。AIGはリスクマネジャーが抱える課題に寄り添い、実践的なソリューションやアドバイスを提供します。AIGのグローバルネットワークを生かした次世代リスクマネジャーの学習・交流の場であるAIGリスクマネジメントアカデミーを通じて、グローバル標準のリスクに関する情報をご提供します。
リスクマネジャーの戦略的パートナーであるAIGにご相談ください。
よくある質問
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