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企業レジリエンスを高めるサイバーリスク対応とは|ARMA 2026 Day 1

2026年8⽉12⽇ 公開

もし明日、自社がサイバー攻撃の被害を受けたら ―

システム停止そのものよりも深刻なのは、その後に迫られる意思決定かもしれません。
サイバーインシデント発生時に企業が向き合うのは、主に次の4つの意思決定です。

  • 顧客への説明
  • 取引先への報告
  • 情報開示
  • 事業継続の判断

サイバーリスクや危機管理の議論というと、多くの場合は「どう防ぐか」に焦点が当たります。しかし、企業に求められるリスクマネジメントは、防御だけではありません。事業継続(BCP)や企業レジリエンスの観点から、組織としてどう対応し、企業価値を守るかも重要なテーマです。

攻撃を受けた後も事業を継続し、顧客との信頼を守り、企業価値を維持できるか。

その力こそが、企業レジリエンスではないでしょうか。
前回の記事では、ARMA Day 1で見えてきたリスクマネジャーの共通課題について紹介しました。本記事では、その中でも関心の高かったサイバーリスクを取り上げ、企業レジリエンスの観点から考察します。

企業価値向上につながるリスクマネジメントの共通課題

サイバーリスクが企業経営に与える影響とは

サイバーインシデントは、IT部門だけで完結する問題ではありません。
有事には、経営、IT、法務、広報、事業部門など、多くの社内関係者が同時に動くことになります。

ARMA Day 1の参加者からも、

名前
参加者の声

「サイバーリスクはIT部門だけの課題だと思っていたが、経営や事業部門を含めた全社的な対応の必要性があることを改めて認識した」

「システム部門との連携や、グループ横断の対応体制を見直したい」

という趣旨の声が聞かれました。組織が止まるのは、必ずしもシステムが停止した時ではありません。

本当に組織を止めるのは、意思決定が止まった時です。

AIG 阿部 瑞穂
AIG 中村 玲於奈

サイバーリスクの変化は、企業に何を問いかけているのか

AIG阿部瑞穂と中村玲於奈は生成AIの普及やサイバー犯罪の組織化による脅威の変化を紹介。サイバーリスクが技術的課題にとどまらず、経営課題として捉えられるようになっている現状について議論しました。

サイバーリスクは「重大な経営リスク」へ

サイバーリスクは企業のリスクランキングでも上位に位置づけられており、経営層の関与やステークホルダーへの説明責任が求められる重大な経営リスクとなっています。

リスクマネジャーが押さえたい、サイバーリスク対応の5つの視点

  • IT部門の課題を超えた経営課題
  • 経営層による主体的関与
  • ステークホルダーへの説明責任
  • サプライチェーン全体を含むリスク認識
  • 企業価値に直結するリスクマネジメント

サイバーインシデント対応に必要な企業レジリエンス

もちろん、防御は重要です。一方で、生成AIの悪用やサイバー犯罪の組織化によって、攻撃はより巧妙になり、その影響も拡大しています。だからこそ今、企業に求められているのは、「侵入されないこと」を目指すだけではなく、「侵入されても動き続けること」なのかもしれません。

参加者からも、

名前
参加者の声

「サイバーBCPは整備しているが、有事に本当に機能するかを確認したい」

「専門業者への依頼先や初動対応の流れが十分整理できているか不安が残る」

という声が挙がりました。

問われているのは、計画の有無ではなく、その実効性です。

有事に動ける組織は、平時から準備と訓練を重ねている組織です。

「検知できなかったら次にどうするか」

AIGでサイバーリスクアドバイザーを務める中村玲於奈は、生成AIの悪用によって攻撃者の裾野が広がり、サイバー攻撃の高度化が進んでいる現状を紹介したうえで、「検知できなかったら次にどうするか」が重要になると指摘しました。

リスクマネジャーが確認したい、有事の組織対応における5つの論点

  • 完全防御を前提としないリスク認識
  • 有事を見据えた事業継続体制
  • 防御とレジリエンスの両立
  • 技術対策と経営判断の接続
  • 持続的改善を前提としたリスク管理

リスクマネジメントと事業継続(BCP)の関係

ARMA Day 1のワークショップでは、参加者がそれぞれの組織でリスクマネジメントを担う当事者として、自社で最悪の事態が発生した場合を想定しながら議論しました。

そこで挙がったのは、次の4つの経営インパクトです。

  • 顧客離れ
  • レピュテーションの低下
  • 資金調達への影響
  • 事業停止・企業価値の毀損

興味深いのは、議論の中心が攻撃手法そのものではなく、「その時、自社はどうなるのか」だったことです。

参加者からは、

名前
参加者の声

「最悪のケースを考えることで、自社が本当に守るべきものが見えてきた」

「グループ会社との情報共有や意思決定の流れを確認したい」

「身代金要求への対応方針を事前に整理しておく必要がある」

という声も聞かれました。

リスクマネジメントは、危機対応のためだけのものではありません。平時においては、企業を取り巻くリスクを把握し、経営課題への対応や投資判断を支えます。有事においては、迅速な意思決定を支援し、事業継続や企業価値の防衛を支えます。平時の備えが有事の対応力につながり、有事の経験が次の経営判断に活かされるのです。

その循環こそが、企業レジリエンスの土台です。

KPMG Forensic and Risk Advisory 上原 豊史氏
KPMG Forensic and Risk Advisory 野崎 真樹氏
AIG 阿部 瑞穂(左)
AIG 中村 玲於奈
AIG 堤 浩介

ランサムウェア対応から見える組織の課題

KPMG Forensic and Risk Advisoryの上原豊史氏、野崎真樹氏、AIGの阿部瑞穂、中村玲於奈、堤浩介は、ランサムウェア事例を題材に、初動対応、被害把握、情報統制、事業継続などについて議論。サイバーインシデントは、組織全体の意思決定が問われるテーマであることを共有しました。

被害者でありながら、加害者にもなり得る

ランサムウェア被害は、自社だけで完結するものではありません。顧客や取引先など多くのステークホルダーに影響が及ぶため、企業には被害の拡大を防ぐ視点も求められます。

リスクマネジャーが確認したい、ステークホルダーへの影響5つの論点

  • 自社だけでは完結しないサイバーリスク
  • 顧客・取引先との信頼維持
  • 情報開示と説明責任
  • レピュテーションリスクへの備え
  • 企業価値を軸とした危機対応

リスクマネジャーに求められる危機管理の役割

サイバーリスクが企業に問いかけているのは、セキュリティの問題だけではありません。

組織は本当に動けるのか。誰が意思決定を行い、何を守るのか。
その問いへの答えを、平時から持てているか。

リスクマネジメントとは、危機を避けるためだけの活動ではありません。

変化や不確実性の中でも事業を継続し、企業の成長を支え、企業価値の向上につなげていくための経営機能です。

そしてリスクマネジャーは、その実践を支える存在です。

これからのリスクマネジャーに期待される3つの役割

  • 平時の経営課題への対応
  • 投資判断の支援
  • 有事の意思決定と事業継続の支援

ARMA Day 1でも議論された「経営の右腕」という役割は、まさにこの3つを支える存在として期待されているのではないでしょうか。

「その時、自社はどうなるのか」を考える

参加者は、それぞれの組織でリスクマネジメントを担う当事者として、自社で最悪の事態が発生した場合を想定しながら議論。顧客対応や事業継続、情報開示など、有事における組織の対応力について意見を交わしました。

組織のレジリエンスについて、共に考えてみませんか

サイバーリスクに限らず、企業を取り巻くリスクは複雑化し、相互に影響し合う時代になっています。

その中で求められるのは、リスクを個別に管理することだけではありません。

平時は経営課題への対応や投資判断を支え、有事は事業継続と企業価値の防衛を支える。

そうした視点でリスクマネジメントを捉え直すことが、企業レジリエンスの強化につながります。

AIGは、リスクマネジャーの皆さまとともに、リスクマネジメントの高度化と企業価値向上について考える機会を提供しています。

有事に、組織として動ける準備はできているか。

その問いに向き合うことが、レジリエンス強化への第一歩です。