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製造物責任法(PL法)とは?認定事例と免責事例をあわせて解説

2026年8⽉13⽇ 公開

「製造物責任法(PL法)」は、製品の欠陥によって人の生命、身体または財産に係る被害が生じた場合に、被害者が製造業者等に対して損害賠償を求めることができるとする法律です。1995年に施行されて以来、多くの訴訟や判例が積み重ねられてきました。
PL法の大きな特徴は、企業側に過失がなくても、製品に欠陥があれば損害賠償責任が発生する「無過失責任」が採用されている点にあります。

この記事では、PL法の概要や製造物責任が認められる要件、PL法の認定および免責事例、企業がとるべきリスクマネジメントのほか、PL保険で備える経営リスク対策についても解説します。

製造物責任法(PL法)とは?

PL法は、製品の欠陥が原因で人の生命・身体・財産に損害が生じた場合、被害者が製造業者などに対して損害賠償を請求できることを定めた法律です。
PLは「Product Liability(製造物責任)」の略で、1995年に施行されました。

ここでは、PL法が制定された背景や目的、また従来の民法との違い、混同されがちな「リコール制度」との違いについて解説します。

出典:「製造物責任法」(e-Govポータル)(https://laws.e-gov.go.jp/law/406AC0000000085)

PL法の目的と成立背景

PL法は、被害者の円滑かつ適切な救済という観点から、製造業者等に「過失」がなくても、製品に「欠陥」がある場合に製造業者等に賠償責任を負わせることにより、被害者の立証負担を軽減することを目的として施行されました。

その背景には、製品の高度化・複雑化により、消費者が製品事故の原因を特定するのが難しくなった社会状況があります。従来の民法では、被害者自身が企業の過失を立証しなければならず、そのハードルは高いものでした。その結果、多くの事故で被害者が十分な救済を受けられないという問題が発生していました。

PL法は、こうした状況を踏まえて施行された法律です。製造業者等に対し、一定の条件下で「過失がなくても責任を負う」というルールを設けたことで、被害者が救済を受けやすくなり、製品の安全性に対する企業の責任を社会的にも制度的にも明確にしたのです。

民法とPL法の違い

従来の民法では、「故意または過失がある場合に限って損害賠償責任が生じる」という「過失責任主義」が基本でした。そのため、被害者自身が損害の原因や企業の過失を立証する必要がありました。

これに対してPL法は「無過失責任主義」を採用しています。つまり、製品に欠陥があり、それが原因で損害が発生したと認められれば、企業に過失がなかったとしても賠償責任を負うことになります。
この考え方は、消費者保護の実効性を高める上で、極めて重要な転換点といえるでしょう。

出典:「民法 第709条」(e-Govポータル)(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_3-Ch_5-At_709)

リコールとPL法の違い

リコールとは、製品や商品に不具合・欠陥が発見された際に、企業が回収・修理・交換を行う制度です。
これは、将来的な被害の発生や拡大を防ぐための予防的対応として行われます。
一方、PL法は、すでに損害が発生している場合に、被害者が製造業者や加工者、または輸入者に対して損害賠償を請求できるという事後的な法的責任制度です。
リコール制度とPL法は目的や運用が異なり、「PL法違反=リコールが義務になる」とは限りません。

ただし、リコールとPL法は密接に関わっているため、企業は両面を理解し、被害者への対応はもちろん、リコールについても対策しておくことが重要です。例えば、欠陥が判明した際には、被害者への適切な対応や原因の究明を行うとともに、必要に応じて速やかにリコールを実施する体制を整えておかなければ、企業の信頼やブランドイメージを大きく損なう可能性があります。
そのため、企業はリコールとPL法の両面を理解し、いずれにも対応可能な体制を整えておくことが重要です。

出典:「リコールについて」(経済産業省)

製造物責任が認められる要件

製造物責任が認められる要件は、下記の6つです。

  1. 被請求者(責任を負う対象者)が「製造業者等」であること
  2. 損害の原因となったものが「製造物」であること
  3. その製造物が「引き渡された」ものであること
  4. 製造物に「欠陥」があったこと
  5. 請求者に「拡大損害」が発生していること
  6. その損害が欠陥によって生じたものであること(因果関係)

参考:「第3条 製造物責任」(消費者庁)

ここでは、1の被請求者や2の対象となる製造物、また3の引き渡しに該当する要件および4の「欠陥」の定義について詳しくみていきましょう。

被請求者(責任を負う対象者)

被請求者、つまり製造物責任を負う対象者は、製造業者だけではありません。次のような事業者も対象となります。

<PL法における主な被請求者の例>

  • 輸入業者(海外製品を国内で販売する場合など)
  • OEM提供先(他者が製造した製品を自社ブランドとして販売している事業者)
  • 表示製造業者(自社名で販売・表示している事業者)

例えば、「販売元:◯◯株式会社」「発売元:◯◯株式会社」といった表示を製品に付して販売している場合、その会社も製造業者とみなされ、責任を問われる可能性があります。

対象となる製造物

PL法が対象とする「製造物」は、原則として「動産(形あるもの)」です。主な例として以下が挙げられます。

<PL法の対象となる主な製造物の例>

  • 食品
  • 医薬品
  • 機械・電気製品
  • 日用品 など

なお、不動産やサービスは基本的には対象外です。しかし、不動産の構成部品(エレベーターなど)が、製造業者から「動産」として引き渡された段階で欠陥があった場合は、製造物責任の対象となるケースがあります。

「引き渡し」に該当するもの

PL法上の責任を問うには、その製造物が「引き渡された」ものである必要があります。
ここでいう「引き渡し」とは、製造業者等が自らの意思で製造物を移転させたことを意味し、一般的には「販売」や「譲渡」が該当します。

また、「引き渡しの時点で欠陥が存在していた」ことが前提条件です。
中古品やリース品も対象になりますが、欠陥が後から発生した場合は対象外となります。なお、盗難品など本人の意思に基づかない移転は、「引き渡し」に該当しません。

PL法における「欠陥」の定義

PL法における「欠陥」とは、製造物が通常有すべき安全性を欠いている状態のことです。欠陥があるかどうかを具体的に判断する際には、次の3つの類型のいずれかに該当するかどうかが重要な基準になります。

  1. 設計上の欠陥
    設計段階で安全性に十分な配慮がされなかったことにより、製造物そのものに危険性が内在している場合。
    例:小さな部品の誤飲リスクが想定されていない子ども用玩具、強度不足の家具など
  2. 製造上の欠陥
    製造工程において不良材料の混入や誤った組み立てが行われた結果、設計どおりに製造されず、安全性を欠いた場合。
    例:金属片が混入した食品、不良素材で発火したバッテリー、部品の取り付けを誤った機器など
  3. 指示・警告上の欠陥
    製品の使用に危険が伴うことを予見できたにもかかわらず、使用者に対してそのリスクを回避するための情報提供(説明書や警告表示など)が不十分だった場合。
    例:アレルギー成分の未表示、高温注意の記載漏れ、危険な誤使用についての注意喚起不足など

PL法が経営に与えるリスク

PL法によるリスクは、損害賠償金の負担にとどまりません。製品の欠陥が発覚すれば、ブランドの毀損、取引の停止、SNSでの炎上といった波及的な損害が発生し、企業の信頼性や売上にも深刻な影響を与える可能性があります。

さらに、品質管理体制や取扱説明書、警告表示などの整備が不十分であった場合には、裁判で「安全確保を怠った」と判断され、不利な立場に置かれるおそれもあります。

このように、PL法への対応は法的リスクへの対処にとどまらず、企業価値や経営全体に関わる極めて重要な課題といえます。

PL法により欠陥が認定された事例

PL法関連訴訟の中から、欠陥が認定された3つの事例を紹介します。「設計上」「製造上」「指示・警告上」といった異なる欠陥の類型ごとに、どのように欠陥として認められたのか、それぞれ参考にしてください。

出典:「PL法論点別裁判例 一覧」(消費者庁)

設計上の欠陥が認められた事例(丸のこ切断機指切断事件)

丸のこ切断機指切断事件では、工作機器に安全防護装置を設けなかったことが「設計上の欠陥」と判断され、製造業者の責任が認められました。

  • 背景
    工作機械を使用して木材を切断中、作業者が材料を取り出そうとした際に手が刃に触れ、指を切断する事故が発生。
  • 判断理由
    機械の使用形態上、作業者が刃の近くに手を入れる場面が避けられず、かつ安全装置の設置は技術的に可能であった。当時の国内外の安全基準にも適合していなかったため、「通常有すべき安全性を欠いていた」とされ、設計上の欠陥が認定された(東京地裁 平成29年1月24日判決)。

製造上の欠陥が認められた事例(折りたたみ足場台脚部座屈傷害事件)

折りたたみ足場台脚部座屈傷害事件では、通常使用中に折りたたみ式足場台の脚部が突然変形し、転落事故が発生。製造段階の不具合が認定されました。

  • 背景
    修理作業中、折りたたみ式の足場台の脚部が突然座屈して作業者が転落。肋骨骨折などの傷害を負った。
  • 判断理由
    事故発生時点での使用状況は通常の使い方といえるものであり、製品に初期不整や補強金具の不具合が存在していたと推認された。よって「製造時点での不具合が原因である」として、製造上の欠陥が認定された(京都地裁 平成18年11月30日判決)。

指示・警告上の欠陥が認められた事例(給食食器破片視力低下事件)

給食食器破片視力低下事件では、食器の破損時の危険性について十分な表示がされておらず、警告表示の不備が「欠陥」と判断されました。

  • 背景
    小学生が給食用のガラス製食器の破片で角膜裂傷を負い、視力低下の後遺障害が残った。
  • 判断理由
    製品カタログや説明書では「丈夫で割れにくい」といった利点のみが強調されており、割れた際の危険性に関する情報提供が不十分だった。消費者が製品の選択や使用方法について適切に判断する機会が奪われていたため、指示・警告上の欠陥があると判断された(奈良地裁 平成15年10月8日判決)。

PL法における免責とは?

PL法では、製品に欠陥があっても、一定の条件に該当する場合には製造業者等が損害賠償責任を免れることができる「免責事由」についても規定しています(製造物責任法 第4条)。

ただし、免責が認められるのはごく限られた例外に限られます。PL法は消費者保護を目的としており、製造業者等には原則として重い責任が課されるからです。
第4条は、その責任を免除する特別なケースとして、製造業者等が以下の2つのいずれかを立証できた場合を定めています。

  1. 当時の科学・技術水準では欠陥を発見できなかった場合(第4条1号)
    「開発危険の抗弁」といわれる。製品を引き渡した時点で科学的・技術的に予見不能な欠陥が後に判明したケースなど。
  2. ほかの製造物の部品や原材料として使用されたような場合(第4条2号)
    設計や仕様を指示したのが完成品メーカーであり、部品メーカーに責任を問うのが不合理とされるケースなど。

どちらも、「欠陥はあるが製造業者等に責任を問うのは不公平」と判断される例外です。
一方で、欠陥が存在しないと判断された場合は、第4条の免責ではなく、PL法の適用対象外として請求自体が退けられます。

出典:「製造物責任法 第4条」(e-Govポータル)(https://laws.e-gov.go.jp/law/406AC0000000085#Mp-At_4)

企業がとるべきリスクマネジメント

企業は、事故を未然に防ぎ、万が一の際も迅速かつ適切に対応できる体制を整えておくことが重要です。企業が取り組むべきリスクマネジメントの主なポイントは、大きく次の3つに整理できます。

欠陥を防ぐための品質管理・設計体制

PL法におけるリスクを最小化するには、欠陥そのものを発生させない体制づくりが基本です。
製造過程では、原材料の受け入れから出荷までの各工程で品質基準を明確にし、異常があれば速やかに是正する仕組みが求められます。

設計段階でも、安全性や耐久性の検証を継続的に行い、テスト結果や設計変更の履歴を記録として残すことが重要です。これらの記録は、トラブル発生時に企業の責任を適切に説明し、法的リスクから身を守る証拠にもなります。

警告表示・取扱説明書の改善

事故の多くは、誤使用や不注意によって引き起こされます。警告表示や取扱説明書は、使用者が直感的に理解できる内容であることが不可欠です。

特に危険な操作については、記号・イラスト・色などを用いて視認性を高め、注意喚起の効果を高めましょう。また、想定外の使用や誤った使い方による事故も想定し、可能な限り幅広いリスクをカバーする表記が求められます。

事故発生時の初動対応

万が一、事故が発生した場合には、迅速な初動対応を行いましょう。
まずは原因調査を速やかに開始し、問題の発生箇所とその背景を明らかにします。その上で、必要に応じて情報開示を行い、再発防止策を設計・製造・取扱説明書の各方面から講じます。

対応状況や改善内容は記録として残すことで、外部への説明責任も果たせます。迅速かつ誠実な対応は、企業の社会的信頼を守るうえでも非常に重要です。

PL保険で備える経営リスク対策

製造物責任に関わる経営リスクを軽減する手段のひとつが、PL保険(生産物賠償責任保険)への加入です。
ここでは、PL保険の基本的な仕組みや補償内容、加入の目安となる業種、社内体制との併用方法について解説します。

PL保険の仕組みと補償内容

PL保険とは、製品の欠陥などによって他人に損害を与えた場合に、企業が負う損害賠償リスクを補償する保険です。対象となるのは、対人事故や物的損害に対する賠償金、および訴訟・弁護士費用などの争訟費用にあたります。
ただし、製品そのものの修理や交換といった費用は、一般的に補償の対象外とされています(保険商品によっては、オプション特約で補償できる場合もあります)。補償内容を正確に把握し、自社のリスクに合った保険を選びましょう。

なお、自社の役務・サービスの提供によって損害が発生するリスクに備えたい場合は、PL保険ではなく「E&O保険(Errors & Omissions保険)」の検討が適しています。

E&O保険については、以下の記事をご参照ください。
製造業E&O保険とPL保険の違いとは?【専門家解説】
E&O保険(業務過誤賠償責任保険)とは?PL保険との違いや必要とされる業種も解説

PL保険に加入すべき企業・業種の目安

PL保険は製造業だけでなく、広く多くの業種にとって重要な備えです。製品やサービスに関連する損害賠償リスクがある業種は、基本的に加入を検討すべきといえます。
例えば、以下のような業種では、製品や提供物の不具合によって第三者に損害を与えるリスクがあり、PL保険が有効です。

<PL保険に加入すべき主な業種>

  • 製造業
  • 卸売業
  • 販売業
  • 輸入販売業
  • 飲食業
  • 美容業
  • エステ業  など

また、取引先からPL保険の加入を条件として求められることもあります。このような場合は、契約上の要請として、速やかに対応することが求められます。

PL保険と社内体制の併用でリスクを最小化

PL法に抵触してしまうリスクを少なくするためには、品質管理や社員教育などの社内体制の強化とPL保険の併用が有効です。

具体的には、設計から製造、流通、販売に至るまでの各工程で品質管理を徹底し、製品の安全性を高めていきます。そのうえで、万が一事故が発生した際には、PL保険を「最後のセーフティネット」として活用しましょう。
日常業務でリスクの発生を抑えつつ、PL保険で損害に備える「二重の防御」は、企業の安定経営にとって効果的なリスクマネジメントといえます。

PL法への理解と備えで企業リスクを軽減する

PL法は、製品に欠陥がある場合、企業に過失がなくても損害賠償責任が発生する「無過失責任」を採用しています。欠陥は「設計上」「製造上」「指示・警告上」の3つに分類され、いずれも企業経営に大きな影響を与えるリスクとなります。

企業としては品質管理体制の強化や警告表示の改善など、欠陥を防ぐための社内体制を整備していても、製品事故のリスクをゼロにすることは容易ではありません。それだけでなく、製品の欠陥が発覚すれば、損害賠償金の負担のみならず、ブランド毀損や取引の停止といった波及的な損害が発生し、企業の信頼性や売上に深刻な影響を与えるケースも考えられます。

そのため、リスクマネジメントのひとつとして、製造物責任に対応する保険に加入しておくという選択肢もあります。
AIG損保では、「事業賠償・費用総合保険 ALL STARs」で製造物責任をはじめとする事業活動にともなう賠償リスクを総合的に補償しています。PL事故対策の一環として、加入をご検討ください。

よくある質問

Q. PL法とリコールはどう違う?

PL法は、製品の欠陥により生命・身体・財産に損害が発生した場合に、被害者が製造業者等などに損害賠償を請求できる法律です。
一方、リコールは製品の不具合や欠陥が判明した際に、企業が自主的に製品を回収・修理・交換する対応を指します。

目的や適用場面が異なり、PL法違反があったからといって、必ずリコールが命じられるとは限りません。

詳しくは、以下の項目をご参照ください。
リコールとPL法の違い

Q. 下請け企業やOEMでも責任を問われる?

PL法の責任主体には、製造業者に加え、輸入業者、OEM提供先、ブランド表示者(実際の製造を他社に委託している場合)なども含まれます。
ただし、部品の単なる供給者であり、欠陥の原因が他社にあることが明らかであれば、免責が認められる可能性があります。

詳しくは、以下の項目をご参照ください。
製造物責任が認められる要件

Q. PL保険に加入していれば、すべての損害が補償される?

PL保険が補償するのは、被害者に対する損害賠償金や訴訟費用などです。
一方で、製品そのものの修理費用や交換費用、自社の営業損失といった損害は一般的に補償の対象外となるため、契約内容をよく確認しておく必要があります。

詳しくは、以下の項目をご参照ください。
PL保険で備える経営リスク対策

<監修>

坂本玲央(さかもと れお)

東京弁護士法人

東京都内3拠点(新宿東口法律事務所、立川法律事務所、八王子法律事務所)を構える東京弁護士法人にて、刑事事件・離婚・相続・交通事故等の個人向け業務から企業法務等の法人向け業務まで幅広い業務を取り扱っている。学生時代に長く野球に携わってきた経験から、その持ち前の体力を武器に、決してあきらめず、お客様に誠心誠意真正面から向き合う姿勢を持ち続けることをモットーとしている。

  • 記事中に特定の商品の名称を記載している場合、これらは参考情報であり、東京弁護士法人が推奨したものではありません。