【2026年シーズンの全体的な傾向と最大要因】
StormGeo社が発表した2026年5月時点の最新予測によると、北西太平洋(台風)および大西洋(ハリケーン)の双方における今シーズンの活動を左右する最大の要因は、観測史上最大級となる可能性がある「エルニーニョ現象」の再来です。
昨シーズンまで続いたラニーニャ現象が終息し、夏から秋の最盛期に向けて強いエルニーニョ現象が継続・発達すると予測されています。この地球規模の大気循環の変化が、海域によって「活動の活発化(台風の東偏)」と「活動の抑制(ハリケーンの低調)」という相反する影響をもたらす、非常に特徴的なシーズンとなる見込みです。
【北西太平洋域(台風)の予測:発生域のシフトと局地的な発達リスク】
- 昨シーズンの振り返りと序盤の動向について
2025年シーズンは合計27個の熱帯低気圧が発生し、そのうち13個が台風に発達しました。特にフィリピンから台湾にかけて大きな影響がありましたが、日本への影響はありませんでした。しかし、2026年は立ち上がりが早く、5月時点ですでに5個が発生。4月中旬にはスーパー台風「Sinlaku(シンラク)」がサイパン付近を直撃するなど、強い警戒が必要なスタートとなっています。 - エルニーニョと正のIODによる影響について
エルニーニョ現象の発達により、南シナ海やフィリピン周辺では大気の下降気流が強まり、台風の発生が抑制されます。さらに、今シーズンはインド洋西部が高水温となる「正のインド洋ダイポール(IOD)」が発生する見込みであり、これが下降気流を一層強化します。その結果、台風の発生域はフィリピン東方海域からマリアナ諸島付近へと大きく東側にシフト(東偏)する見込みです。 - 海面水温と発生数予測について
南シナ海からフィリピン海にかけては平年より水温が低い(冷水傾向)ですが、台湾から日本北部にかけては平年を大幅に上回る高温となっています。そのため、日本へ接近する台風は豊富な熱エネルギーを取り込み、強く発達しやすい危険な環境にあります。StormGeo社の予測では、今シーズンの発生総数は過去30年平均(26個)をやや上回る「28個」、台風への発達数は平年(16個)を上回る「17個」と見込まれています。全体数はやや多めであり、日本付近での接近・上陸数は平年並みと予想されていますが、高い海水温による強い勢力での襲来リスクには厳重な警戒が必要です。
【大西洋域(ハリケーン)の予測:全体活動の抑制と警戒エリアの移行】
- エルニーニョ現象による発達の抑制について
大西洋域では、エルニーニョ現象がハリケーンの活動を抑え込む方向に働きます。太平洋東部の海水温上昇に伴い、カリブ海および大西洋熱帯域では下降気流が発生しやすくなります。さらに、上空の風向・風速が急激に変化する「ウインドシア」が平年より強まることがヨーロッパの予測モデルで示されており、これがハリケーンの組織化や発達を強力に阻害します。エルニーニョがさらに発達すれば、シーズンは早めの11月までに収束する可能性もあります。 - 海面水温の偏りと局地的なリスクについて
大西洋の海面水温は、カリブ海東方では冬季の強い貿易風の影響で平年を下回っています。一方で、メキシコ湾および大西洋の亜熱帯域では平年を大幅に上回る高温となっています。過去の類似年(海面水温や大気状態が似ている年)の分析によれば、このような状況下では、カリブ海北西部やメキシコ湾において熱帯低気圧が発達しやすくなる傾向があります。 - 発生数予測と警戒エリアについて
StormGeo社の予測では、今シーズンの熱帯低気圧の発生総数は過去30年平均(14個)を下回る「13個」、ハリケーンは平均(7個)を下回る「6個」、大型ハリケーンは平均(3個)を下回る「2個」にとどまると予想されています。全体的な数は減少するものの、強いウインドシアの影響を逃れやすい海域へと活動域がシフトします。具体的には、バハマから米国東沿岸部を含む大西洋亜熱帯域の北側、およびメキシコ湾周辺ではハリケーンが発達しやすくなり、これらの地域における被害リスクは平年をやや上回る可能性があるため、油断は禁物です。
【2026年シーズンのリスク管理に向けて】
2026年は、エルニーニョ現象の影響により、北西太平洋では「平年をやや上回る」活動、大西洋では「平年を下回る」活動と、海域によって明確なコントラストが表れる予測となっています。しかし、両海域に共通して言えるのは、海面水温の偏りによって「特定の地域(日本の近海やメキシコ湾など)ではかえって強い勢力に発達しやすい」という点です。全体の発生数に関わらず、一度接近・上陸した場合の破壊力は甚大になる恐れがあるため、局地的な気象リスクに対する周到な備えが不可欠なシーズンと言えます。
作成:StormGeo
発行:AIG損害保険株式会社 海上保険部
台風関連の記事は、参考までに下記をご覧ください
無断での使⽤・複製は禁じます。
お客さまのグローバルビジネスに、世界基準の知見とノウハウを
経験豊富な担当者が、コーポレートリスクに関するアドバイスから
グローバル保険プログラムの構築まで、お客さまのニーズにあわせたソリューションをご提供します。
まずはご連絡ください。
注目タグ
- 経営者 働き方改革 事業継続 人材確保 福利厚生 両立支援 労災 病気 感染リスク メンタルヘルス がん 健康診断 予防 自然災害 ハラスメント 海外 IT セキュリティ 火災 自動車 雇用トラブル 解雇 資金 人件費 パート 経営者から学ぶ BCP ESG ERM 法制度・法規制 M&A 訴訟リスク 水災 地震 台風 サプライチェーン 海外進出トレンド アメリカ アジア ヨーロッパ アフリカ グローバル保険プログラム 海外PL保険 D&O保険 環境保険 サイバー保険 約款 キャプティブ 製造業 建設業 販売業 飲食業 IT業 戦争・紛争 地政学リスク インフレ 環境問題 損害サービス 賠償リスク リスクコンサルティング 物流リスク 海上保険 取引信用保険 サービス業 貿易 経営保険 サイバーセキュリティ