海外進出白書

専門家が選ぶ、アフターコロナの成長都市ランキング

2024年8⽉19⽇ 公開

専⾨家が選ぶ、アフターコロナの成⻑都市ランキング

海外進出を検討する上で、「どの国で⾏うか」はとても重要です。実際に⽇本企業の海外進出をサポートしている海外ビジネスの専⾨家たちは、アフターコロナの今、どの都市にチャンスがあると考えているのでしょうか。アンケート調査の上位10都市について、回答コメントを交えて解説します。

この記事は、AIG損保と海外ビジネス⽀援プラットフォーム『Digima 〜出島〜』(運営:株式会社Resorz)が協⼒して制作した「海外進出⽩書2022-2023」の中から、AIG損保が注⽬したトピックを⼀部編集してご紹介しています。

「海外進出⽩書2022-2023」をダウンロードする

専⾨家が選んだ「最も成⻑する都市」は?

⽇本企業の海外進出をサポートしている事業者に対して、「今年(2023年)チャンスのある都市は?」という質問をしました。トップ10は以下のような結果となりました。

⽇本企業の海外進出動向調査

調査概要:『Digima 〜出島〜』によるインターネット⾃主調査
調査対象:海外進出をサポートする事業者144社
調査期間:2023年4⽉4⽇〜4⽉21⽇

今年チャンスのある都市

1位:ベトナム・ホーチミン(25票)
2位:ベトナム・ハノイ(15票)
3位:インドネシア・ジャカルタ(13票)
4位:フィリピン・マニラ(11票)
5位:シンガポール(6票)
5位:インド・バンガロール(6票)
7位:タイ・バンコク(5票)
8位:インド・デリー(4票)
9位:ドバイ(3票)
9位:アメリカ・テキサス州(3票)

1位:成⻑を続けるベトナム最⼤の都市、ホーチミン(ベトナム)

最も票を集めたのは、ベトナム最⼤の都市で経済の中⼼、ホーチミンでした。なんと6年連続の1位となりました。

本調査に回答した海外進出サポート事業者の半数以上がベトナムを⽀援エリアとして挙げていることから、バイアスも若⼲は⽣じているかと思います。しかし、海外進出サポート事業者もチャンスがあると考えているからこそ、⽀援エリアとしてカバーしようという動きが多いのかもしれません。

専⾨家の回答では、街並みの変化GDP成⻑率といった経済成⻑について、また⽇本との関係性が安定していることについて⾔及されていました。

名前
ホーチミンを選んだ専⾨家

拠点を構えて実際に現地の街並みの変化(近代化、モダンな店舗増加)を感じる。

名前
ホーチミンを選んだ専⾨家

内需が底堅く、また投資環境としても⽇本との親和性が⾼い。また製造業を中⼼に開発が進むことで、裾野産業も含めた産業開発が進むと考える。近年、M&Aや進出相談も急増。全体の7割がベトナム。件数はホーチミンが多い。

2位:ポストチャイナの進出先として注⽬を集めるハノイ(ベトナム)

ベトナムの⾸都で政治の中⼼、ハノイ。ポストチャイナにおける中国との距離的な近さや、インフラ整備について⾔及する専⾨家が多くいました。また、「⼈材の質」というキーワードも挙げられていました。北に位置するハノイの⼈材は、ホーチミンの⼈材と⽐べ、真⾯⽬であると指摘する専⾨家もいます。

名前
ハノイを選んだ専⾨家

⽶中経済戦争・台湾問題などのチャイナリスク、ロシア・ウクライナ戦争を受け、中国・ロシアからの事業撤退が進んでいる。特に⽶中経済戦争についてのリスクヘッジはBetterからMustになってきている。そのためASEANでの代替・追加投資に向かっているが、その中でもベトナムへの展開希望が多く、中国から近いベトナム北部への進出傾向が強い。

名前
ハノイを選んだ専⾨家

ハノイ周辺の⼯業地域が増えてきていて、商⽤施設も多く建設されている。また、都市鉄道システムの開業がようやく⾒えてきたため。

3位:市場規模はASEAN随⼀のジャカルタ(インドネシア)

⼈⼝2億7,000万⼈超を抱えるインドネシアは「⼀⼈あたりのGDP」も4,000ドルを超え5,000ドルに迫っています。市場規模はASEAN随⼀と⾔えるでしょう。そんなインドネシアの⾸都、ジャカルタには、⼈⼝の多さ、市場規模、経済成⻑の可能性について⾔及する回答がほとんどでした。

名前
ジャカルタを選んだ専⾨家

インドネシアは東南アジアでは最⼤の⼈⼝であり、資源が豊富、インフラも徐々に整備されており今後成⻑が期待できる市場であり、⾸都であるジャカルタは⾸都が移るまではインドネシアの拠点であるため。2022年度のGDP成⻑率が5.3%とコロナ禍ながら、2014年以来の最⾼に達したこと。輸出に加えて国内消費がコロナ禍以前に戻り始めた。

インドネシアはイスラム教徒が多い国です。イスラム教では、⽇常⽣活で⼝にするもの、⾝に着けるものなどが「イスラム法」により規定されています。そのため、イスラム圏でのビジネスでは「ハラール(イスラム教の⾔葉で「合法」という意味)」の認証を取得できなければ、業態・業種によってはノーチャンスの都市になってしまうこともあります。
ASEAN随⼀の市場規模でありながら3位になっているのは、そうした事情もありそうです。

4位:経済成⻑への期待感が⾼いマニラ(フィリピン)

マニラという回答では、英語インフラに触れているものが多くありました。特にIT・通信業では、⽇本国内の⼈材不⾜やオフショア開発、グローバル開発の体制構築のために、英語⼈材の豊富なフィリピンは注⽬の進出先となっています。

また、マニラ⾸都圏から北⻄約120キロに位置する⽶空軍基地の跡地は経済特区に指定され、国家的なスマートシティ開発(ニュークラークシティ計画)が進められていることから、その点に⾔及する専⾨家も多くいました。

名前
マニラを選んだ専⾨家

南北通勤鉄道計画を進捗するに当たりクラークとマニラを結ぶことでクラーク基地開発ならびに周辺ビジネス、ベッドタウンとしての住宅開発がおこなわれることもあり、今後の成⻑が⾒込まれるため。

2022年には、マルコス新⼤統領が誕⽣し、副⼤統領には前任のドゥテルテ⽒の娘、サラ・ドゥテルテ⽒が就任。新旧体制を統合し、フィリピンの国としての結束を⾼め、より⼤きな経済成⻑を⽬指している点も、明るい材料でしょう。

5位タイ:「ASEANのハブ」として注⽬を集めるシンガポール

シンガポールに関しては、「政策の明瞭さ」や「カントリーリスクの⼩ささ」といった国家としての安定感、そして「ハブとしての役割」「インフラやテクノロジー」についての⾔及が多いようでした。

名前
シンガポールを選んだ専⾨家

経済成⻑率が⾼く、世界的な⾦融センターとしての地位を確⽴しており、インフラストラクチャーの整備やテクノロジーの進歩が期待されます。

また、税制⾯の優遇を受けられることから、ヘッドクォーターを設⽴し、グローバル展開の礎にしていこうという流れはまだまだ続いていくと⾒ている専⾨家も多いようです。

5位タイ:グローバル企業の開発拠点が集まるバンガロール(インド)

バンガロール(ベンガルール)には現在、グローバル企業の開発拠点が740以上あり、IT⼈材は47万⼈を超えると⾔われています。専⾨家の中には「IT」というキーワードに⾔及するコメントも多くありました。

名前
バンガロールを選んだ専⾨家

今年最⼤市場となるインドのITの⼼臓部。経済成⻑が著しいインドの中でも、IT企業や各国の⼤⼿メーカーが進出しており、⼯業団地の建設も進められており、現地政府の⽀援も充実している。

また、2022年にはバンガロール商⼯会議所が海外初となる事務所を東京に設置しました。現地で⽇本企業の投資を誘致しようという機運が⾼まっていることも、専⾨家が「チャンスのある都市」と挙げた追い⾵のひとつと考えられます。

7位:政治や制度の変化に期待が⾼まるバンコク(タイ)

タイは2014年の軍事クーデターの影響が尾を引いているものの、地理的なメリットがあり、消費市場としての期待もあるため、ポテンシャルが⾼い国であることは間違いありません。
また、2023年2⽉に改正・⺠商法典が施⾏されたこともあってか、「政治や制度の変化」に関するコメントが寄せられていました。

名前
バンコクを選んだ専⾨家

医療機器に関する認可の整備に伴い、進出企業が多くなっている。また、国政選挙が⾏われ、⼤きな変化が起きそうなため。

8位:市場規模と⾼度⼈材の豊富さで注⽬を集めるデリー(インド)

そもそもインドは、爆発的な⼈⼝増加の只中にあり、世界中から注⽬を集めている国です。⼀⽅で、⽇本企業の進出数があまり伸びない国でもあります。その要因は、広⼤な国⼟や商習慣の違いによるものと考えられますが、やはりポテンシャルは⾮常に⾼く、専⾨家も注⽬しているようです。

デリーに関しては⼈⼝に加え、「⾼度⼈材の豊富さ」と⾔った点が添えられていました。

名前
デリーを選んだ専⾨家

インドは、⼈⼝が中国を抜く勢いであり可能性を感じている。その成⻑性に加え、デリーでは⾼度⼈材が豊富になってきている。経済成⻑の伸び、⼈⼝(特に若い⼈⼝が多い、中間層)の伸び、多様性などを勘案し、⼤きなチャンスがあると思う。

9位タイ:「テクノロジー」の集積地として注⽬を集めるドバイ(アラブ⾸⻑国連邦)

ドバイに関しては、Web3などを始めとした「テクノロジー」の集積地として注⽬が集まっているようです。また、フリーゾーンと呼ばれる経済特区があり、⼀定の条件をクリアすると法⼈税が免税となるなど、さまざまな優遇措置が受けられる点も、⽇本企業に限らず世界中の企業が進出している理由となっています。

名前
ドバイを選んだ専⾨家

Web3関連を中⼼に伸びてきている。また、推進中のエコ・テクノロジーは将来性も⾼く、資⾦⼒もあり、地理的にも、欧州、アフリカ、アジアの中間点にある為、デジタル的な産業のみならず、各種⼯業製品の⽣産拠点としての可能性も考えられる。逆に云えば、マニュファクチャリングを全くせず、資源⼒、情報⼒だけでは、成⻑維持には限界がある。

9位タイ:世界的企業が進出し、⼈や技術が集まるテキサス州(アメリカ)

⽇本企業の海外進出先として⼈気のアメリカの中でも、今最も注⽬されているのが「テキサス州」です。専⾨家のコメントでも⼤企業の移転に関するコメントが寄せられていました。テスラやトヨタ、オラクルなど、近年テキサス州に本社を移転する有名企業が増加しています。その背景には税制優遇や交通の便、⽣活コストが安定していることなどがあるようです。

名前
テキサス州を選んだ専⾨家

ご存じのようにシリコンバレーの銀⾏が倒産。今やシリコンバレーへの期待は下⽕です。かたやテスラが本社をテキサス州に移し、現地のトヨタも本社移転や⼯場への追加投資を⾏うなど、メキシコやカリフォルニア、ハワイなどから続々とテキサス州へ⼈や資本が集まってきています。ダラス、ヒューストン、サン・アントニオなどが活性化してきています。いままさに世界中の⼤企業が進出している都市で、税制その他費⽤⾯でのメリットも⼤きいです。

以上が専⾨家が選ぶ、アフターコロナの成⻑都市ランキングでした。

出典

本原稿は、2023年4⽉に海外ビジネス⽀援プラットフォーム『Digima 〜出島〜』が海外進出⽀援企業を対象に実施したアンケートをもとに作成された「海外進出⽩書 2022-2023」を出典元にAIG損保で編集したものになります。

海外ビジネス⽀援プラットフォーム「Digima 〜出島〜」のページ(外部のサイトに移動します)

詳しくは「海外進出⽩書 2022-2023」をご覧ください。

海外進出サポート企業の実態や他の意識調査もご覧になれます。

グローバルリスクマネジメントの先端を追うキュレーションメディア

まずはお話をお聞かせください

AIG損保にコンタクトする

無断での使⽤・複製は禁じます。