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米国で事業展開する日本企業にとって、訴訟リスクは重要な経営課題です。米国では陪審員裁判、ディスカバリー、クラスアクション、懲罰的損害賠償といった日本とは異なる制度が存在し、訴訟費用や賠償額が企業経営に大きな影響を与える可能性があります。

米国進出企業が直面する訴訟リスクの実態

米国は世界有数の訴訟大国であり、米国に進出する日本企業は、米国で訴訟の標的になりやすいといえます。その背景には、以下の3つの構造的要因があります。

資金力:米国は原告側弁護士が成功報酬制をとるため、賠償金の回収見込みが高い(な資産を有する企業や、保険による補償が見込まれる)企業が狙われやすい。

文書管理・意思決定のギャップ:証拠保全(Litigation Hold)の意識の薄さや、稟議制度による対応の遅れが訴訟戦略上不利に働きやすい。

事業規模:自動車や電機など製品出荷量が多く、事故や紛争の接点が多くなりやすい。

さらに、弁護士費用の大半を占める「ディスカバリー(証拠開示)」の対応コストや、1,000万ドルを超える高額判決(Nuclear Verdicts)が増加していることから、米国訴訟は企業経営に重大な影響を及ぼすリスクとなっています。

日本と米国の法制度の主な違い

米国の民事訴訟制度は日本と根本的に異なります。

陪審員裁判:法律の専門家ではない一般市民が事実認定と賠償額を決定します。そのため、弁論術や感情への訴えかけが判決に影響しやすく、「大企業対一般市民」という構図が高額判決を生む一因となっています。

州法とコモン・ロー:米国は各州の独立性が高く、過去の判例(コモン・ロー)が重視されます。州によって責任の判断基準が異なるため、進出先の州(管轄裁判所)によって訴訟リスクは大きく変動します。

ディスカバリー制度:訴訟に関連する広範な証拠(メールや電子データ等)の開示を強制される米国特有の制度です。開示対応には膨大な時間とコストがかかり、証拠保全義務に違反すると裁判所から重い制裁を受けます。

米国民事訴訟の流れ

米国の民事訴訟は主に5つの段階を経ます。

  1. 訴答:訴状受領と答弁書の提出。早期の訴え却下を申し立てることも可能。
  2. ディスカバリー:双方が証拠を開示し合う。和解を検討する余地もある。
  3. 略式判決:事実関係に争いがない場合、陪審を経ずに裁判所が判決を出す。
  4. トライアル:陪審員裁判。ただしここまで進むのは稀で、大半は和解や略式判決で終結する。
  5. 判決・控訴:判決後、賠償額の減額等を求めることが可能。

米国訴訟の事例に見るリスク

過去の事例から、日本企業が直面するリスクの大きさがわかります。

懲罰的損害賠償:悪質な行為を罰する目的で実損害とは別に課される賠償で、日本では認められていない制度です。過去には実損害の数十倍の賠償が認定された事例もあり、巨額の負担となるリスクがあります。

PL(製造物責任)訴訟:日本の自動車メーカーの急加速問題をめぐる事例では、後に公的機関の調査で「製品の欠陥はなかった」と結論付けられたにもかかわらず、訴訟の長期化やブランドイメージ低下を避けるために巨額の和解金が支払われました。「過失がなくてもコストが発生するリスクがある」という米国の実態を示しています。

クラスアクション(集団訴訟):エアバッグの不具合事例では、部品メーカー1社の問題が、その部品を採用した複数の完成車メーカーの巨額賠償責任へと波及しました。サプライチェーン全体が連鎖的な訴訟リスクにさらされます。

米国訴訟リスクを軽減する4つの備え

米国訴訟は「起きてから対応する」のでは手遅れであり、平時からの備えが不可欠です。

  1. 契約書と文書管理の整備:契約書にあらかじめ有利な準拠法や管轄、裁判外紛争解決(ADR)の条項を組み込んでおくこと。また、訴訟が予見された際に直ちに「証拠保全(Litigation Hold)」を発動できるよう、社内の文書管理ルールを徹底することが重要です。
  2. 専門弁護士の事前確保:初動スピードが勝敗を分けるため、米国訴訟特有の手続きに精通した「リティゲーター(訴訟専門弁護士)」を平時から確保し、初動対応フローを社内で明文化しておきます。
  3. リスクマネジメント体制の構築:訴訟リスクを全社的リスクマネジメント(ERM)に組み込み、日本本社・米国子会社・現地弁護士が緊密に連携して意思決定できる体制を構築します。
  4. 保険による財務的備え:数億〜数十億円に上る弁護士費用や賠償金の負担を軽減するため、海外事業に伴うリスクに対応した賠償責任保険などにあらかじめ加入しておくことが有効です。

AIG損保のサポート

財務的な備え(保険)だけでなく、専門知識を持った弁護士チームのサポートが欠かせません。AIG損保では、北米の強力な弁護士ネットワークを活かし、適切な弁護士の手配や費用管理、国境を越えたサポートを行う「訴訟管理サービス」を提供し、企業の訴訟ダメージ最小化を支援しています。

万が一米国で訴訟を起こされた場合は、期限内に答弁書を提出する必要があるため、①専門弁護士への速やかな相談、②直ちに関連文書の保全(Litigation Hold)の実施、③加入している保険会社への速やかな通知、の3点を最優先で行う必要があります。なお、米国における「懲罰的損害賠償」については、州の公序良俗の観点や保険の免責条項により、原則として保険ではカバーされないことが多い点に注意が必要です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 米国で訴訟を起こされたら、まず何をすべきですか?

訴状を受領した場合、対応期限が限られているため迅速な初動対応が重要です。まずは米国訴訟に精通した弁護士へ相談し、訴え却下の可能性やADR(裁判外紛争解決手続)による早期解決の可否など、適切な戦略を検討します。また、メールやチャット、契約書など関連資料の保全措置(Litigation Hold)を速やかに実施することが不可欠です。さらに、加入している保険会社へ速やかに通知し、保険契約上必要となる手続きを確認しながら対応することが重要です。

Q2. AIGの訴訟管理サービスはどのような企業に適していますか?

AIGの訴訟管理サービスは、米国で事業展開している、または進出を検討している日本企業に適したサービスです。特に、米国で製品の製造・販売・輸出を行う企業、米国に子会社や支店を持つ企業、そして社内に米国訴訟の専門人材が十分でない中堅・中小企業に有用です。訴訟発生時の弁護士選定や費用管理、日本本社と現地法人・弁護士との連携などを支援し、企業の負担軽減と適切なリスク管理をサポートします。

Q3. 懲罰的損害賠償は保険で補償されますか?

懲罰的損害賠償は、一般的に保険の補償対象外となるケースが多く見られます。米国では一部の州において、公序の観点から保険による補償自体を認めていないため、多くの海外PL保険や賠償責任保険には「懲罰的損害賠償免責条項」が設定されています。ただし、補償内容や免責条件は保険商品によって異なるため、自社の事業内容や進出地域に応じて契約内容を確認することが重要です。不明な点がある場合は、保険会社や専門家への相談をおすすめします。

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