規制を強める環境規制当局(欧州事情)

欧州では、環境汚染損害の発生頻度が高まり、また損害の規模が拡大しており、これまでの環境汚染対策では回避できないリスクが増大しています。よく見受けられる誤解としては、「環境汚染事故は一部の業種に限って発生する。」または「環境汚染事故が発生しても一般的に普及している施設賠償責任保険で補償される。」というようなものがあります。
しかし、これは実に危険な認識で、想定もしていなかった環境汚染事故のために巨額の賠償責任を負ってしまった企業の事例も報告されています。

さまざまな業種・事業規模で生じている環境汚染事故

環境汚染事故は、重工業など特定の企業に限られた問題ではなく、大企業から中小企業まで幅広い範囲で見受けられます。2016年には約30の産業区分に属する企業から100を超える環境汚染事故の通知があり、燃料管理や排水管理、廃棄物管理、運送、最終製品管理、資産管理・維持など、いろいろな業務に起因する事故がありました。

環境汚染事故の割合を産業部門別にみると、最も多かったのは「運輸・通信・電気・ガス・公衆衛生事業者」(55%)で、「製造」(27%)、「農林水産」(7%)、「建設」(5%)、「金融・保険・不動産」「小売」(3%)と続いています。特徴的なのは、環境汚染事故の通知が高リスクの産業から低リスクの産業まで幅広い分野でみられることで、EU環境責任指令導入前には環境汚染賠償責任を負うことがほとんどなかった分野でも目立つようになりました。

また、欧州各国の規制当局の姿勢は、より厳格化しています。2017年3月には、イギリス環境庁が下水道網から繰り返し下水が流出していることに関し、テムズ・ウォーター社に2030万ポンド(約28.6億円※)という高額の罰金を科した事例も報告されています。罰則を強化することで、抑止力としての効果を高める狙いもあり、厳格化の動きはEU加盟国内で強まっていくと予想されています。

(※1ポンド=約141円(2017年9月時点))

原因となる汚染物質:見過ごされがちな燃料管理

環境汚染事故で最大の懸念事項は、燃料管理です。2016年にAIGグループの欧州中東アフリカ地域において通知された環境汚染事故のうち、最も大きな原因になったのは石油系炭化水素で、全体の35%を占めました。燃料は製造現場だけでなく、暖房や処理作業、建設業の機械操作などあらゆるものに使われており、ほぼすべての企業が燃料管理のリスクを抱えていると考えられます。こうした認識は見過ごされることが多く、環境汚染事故の被害拡大を招く要因にもなっています。

環境汚染事故における浄化作業は複雑で、賠償費用が高額になりがちなことも多くの人が見過ごしています。特に石油系の汚染物質は、化学反応や生物学的プロセスを通じて分解されにくく、環境にそのままとどまり続けます。さらに、こうした汚染物質の多くが生物に対して強い毒性を示すほか、食物連鎖の中で蓄積される傾向があり、その影響は長期間におよびます。その結果、その浄化作業はより複雑になり、浄化費用が増大する傾向があります。

第三者が起こした環境汚染に起因する損害

環境に関連する法制では、環境汚染原因者が被害を負担するのが原則です。しかし、環境汚染者を特定できない場合、規制当局は現在の土地の所有者に賠償責任を追及できるため、土地の所有者が最終的な賠償責任を負うことになります。AIGの不動産関連のクライアントの中にも、環境汚染で責任を負うべきテナントを特定できず、不動産所有者が加入する環境汚染賠償責任保険で補償を行った事例が報告されています。

規制当局は環境汚染に関する環境汚染者の追究や訴追の動きを強めており、第三者が起こした環境汚染で賠償責任を負うリスクが高まっています。環境汚染の発生を知りつつ黙認をしていたケースもそのひとつで、資金が豊富な企業の場合には罰金額が高額になる可能性があります。コンプライアンスに問題がなく、許可された限度内で操業している企業でも、第三者に対する環境汚染賠償責任リスクを常に抱えていることを認識しておく必要があるでしょう。

環境汚染賠償責任に関するリスク管理のご相談は

環境汚染事故の様態は以前と大きく変わりません。しかし、これまでにない損害賠償請求や環境汚染事故が増えており、社会の考え方が大きく変化しています。環境汚染事故に対する備えの重要性は、今後さらに高まっていくといえるでしょう。

AIGグループでは豊富な事例研究をもとに、環境汚染賠償責任対策とリスク管理について幅広くサポートしています。

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