Global Risk Manager

ロシアのウクライナ侵攻によるサプライチェーンへの影響と対策とは

2022年12⽉22⽇ 公開

RIMS⽇本⽀部 × AIG損保

Global Risk Manager Vol.003 ロシアのウクライナ侵攻によるサプライチェーンへの影響と対策とは

本連載シリーズは、リスクマネジメントのグローバルな⾮営利組織、RIMSの⽇本⽀部とAIG損保の共同編集により、これから海外進出を⽬指す、またはすでに海外進出している企業のリスクマネージャーのスキルセット向上を⽬指しています。⽇々の業務はもとよりビジネスの先を⾒据えた洞察・推察にお役⽴ていただければ幸いです。

ロシアによるウクライナ侵攻が⻑期化するいま、ビジネスや産業へのダメージを分析し、まだ表⾯化していない次なるリスクを推察することが重要です。いま、グローバルビジネスに必須の覚悟と準備とは?現状把握と未来洞察、ふたつの視点から国際紛争によるビジネスのリスクマネジメントを考えます。

サプライチェーンの混乱で影響を受ける国と地域は、130以上

エネルギーだけでなく戦略的⾦属の主要輸出国でもあるロシア

ロシアの軍事⾏動は、新型コロナウイルスのパンデミックとは別の有害な打撃を、世界のサプライチェーンと無数の商品市場に与えています。

 

ロシアはエネルギー以外にも、⾷料品や⾼級品に使われる戦略的⾦属などの主要輸出国です。ブルームバーグ・ニュースの分析によれば、実に130以上の国・地域が、ロシア、ウクライナ、ベラルーシから1つ以上の商品を調達しているといいます。

世界のサプライチェーンが受けるリスク

半導体不⾜は169の産業に影響

あるシンクタンクは、ロシアによるウクライナ侵攻を「世界のサプライチェーンが直⾯する最⼤のリスク」とし、多くの産業で状況を悪化させると警告しています。

 

ロシアは半導体製造の主要資源である世界のパラジウムの40%を供給し、ウクライナはコンピューター・チップの製造に必要な世界のネオンの70%を⽣産しています。どちらも半導体⽣産に重要な位置を占めています。別のシンクタンクは、半導体不⾜は169の産業に何らかの形で影響を及ぼすとしており、半導体関連の部品調達への影響は、あらゆる分野に影響を及ぼす可能性があります。

ロシアが世界経済をけん制!? ⽯油や天然ガスへの懸念

ロシアは世界第3位の⽯油輸出国であり、世界第2位の天然ガス輸出国でもあります。制裁が続き、ロシアが燃料販売を削減することで報復したら、世界の燃料供給が中断され、⾦銭的に⼤きな影響を与えるブラック・スワン・イベントとなる可能性もあります。
 

  • ブラック・スワン理論は、予想外の出来事が発⽣すると、確率論や経験、常識が通⽤しないため、社会や市場に極めて⼤きな衝撃を与えるとする理論。

滞る⽣産と輸出。モノの不⾜と価格上昇の先にあるもの

最も劇的な不⾜状況と価格上昇に⾒舞われていると⾔われているのが、⼩⻨、肥料、半導体、⾃動⾞部品です。紛争のためにロシアやウクライナからの調達が困難になれば、多くの企業が主要な国際サプライヤーを失うことになります。

 

また、モノ不⾜と価格上昇が続けば最終的に、パンデミックの影響に揺らぐ⼩売業界も影響を受ける可能性があります。

予⾒できない国際紛争のリスクを管理するために、⾒直したいポイント

ウクライナでの軍事紛争は、直接関与していない国や地域でさえ、国際的な経済紛争を引き起こす可能性があります。潜在的な脆弱性に対処し、それらが確実に保護されるようにするために、企業が⾒直すべきポイントを2つご紹介します。

事業継続計画(BCP)を⾒直す

破壊的な事故が発⽣した場合に必要な製品やサービスを継続的に提供するためのシステムを確保し、最終的には、継続的な事業活動を確実にするべきです。

会社の保険契約、編成を⾒直す

保険でカバーできないもの、またカバーできるが十分ではないものを把握しておくことが重要です。今回のような戦争危機は、⼀般的な保険商品でカバーすることは難しいです。しかし、ビジネスを無防備な状態にして損失を被る可能性を低減する⽅法として、⾃社のリスクを専⾨的に引き受けるキャプティブ保険会社を活⽤する⽅法があります。

 

キャプティブによる保険契約は、従来の保険契約の除外を避けるためのカスタマイズができる可能性があります。また、保険請求に応じた後、キャプティブ保険会社に残った保険料は利益となり、困難を切り抜けるための資⾦に充てることができます。

詳しくはRIMS⽇本⽀部の
『Risk Management』【Web特別版】2022年8⽉号をご覧ください。

出典

本記事は、リスクマネジメントのグローバルな⾮営利組織、RIMSが発⾏する機関誌「Risk Management」【Web特別版】2022年8⽉号を、RIMS⽇本⽀部とAIG損保が翻訳・共同編集したものです。原⽂と和訳に相違があるときには、原⽂を優先します。

RIMS⽇本⽀部のページ(外部のサイトに移動します)

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