海外進出白書

海外進出トレンド変化か。「拠点ナシ」の進出形態が増える理由

2023年3⽉1⽇ 公開

海外ビジネス担当265⼈に聞く! #4 海外進出トレンドに変化の兆し?「拠点ナシ」の進出形態が増える理由とは

かつて⽇本企業の海外進出は、「安い⼈件費を求めて海外に製造拠点を設ける」というパターンが⼀定の割合を占めていました。しかし近年、その傾向に⼤きな変化が訪れていることがわかりました。今回は海外ビジネス担当者への実態調査データをもとに、「進出先の国を決めた理由」と「海外進出形態」にスポットをあてて、⽇本企業の海外進出実態をご紹介します。

調査概要について

調査概要と回答企業のプロフィール

本調査では、海外進出を検討している・実施している企業の担当者にアンケート調査を⾏いました。調査概要と回答企業は以下のとおりです。

海外進出企業の実態調査

調査⽅法 :インターネットによる⾃主調査
調査対象 :⾃社の海外ビジネス展開を検討したことのある担当者265名
調査期間 :2022年 4⽉18⽇〜 5⽉10⽇

回答企業の業種、所在地域、売上規模を⾒る

アンケート回答企業の業種

アンケート回答企業の所在地域

アンケート回答企業の売上規模

海外ビジネスの明暗をわける、成功企業の分岐点とは

⽇本とは環境の異なる海外ビジネスにおいて、事業を存続させていくとは簡単ではありません。海外ビジネスにおいて、事業をスタートさせるだけでなく、撤退せずに3年以上継続させられていることは、成功と⾔えるのではないでしょうか。そこで本調査では「海外事業を3年以上実施している企業」を「成功企業」と定義して、分析を⾏っています。

⽣産拠点としての海外進出から、販路拡⼤先としての海外進出へ

浮き彫りになる「国内市場規模の縮⼩」という課題

⽇本企業は何を求めて、海外進出を検討しているのでしょうか? 海外ビジネスに取り組むきっかけについての回答が下記のグラフです。

回答:海外ビジネスに取り組んだきっかけ

国内マーケットの縮⼩」が4割程度の回答を集め、最も多いきっかけとなりました。僅差で「取引先からのニーズがあった」が続き、「海外企業から問い合わせがあった」など、いずれも販路拡⼤にかかわるものが多くの回答を集めています。⼀⽅で「コスト削減の必要性」をきっかけとした進出は⾮常に少なくなってきていることがわかりました。

6割以上の⽇本企業が「市場規模の⼤きさ」を理由に、海外進出先の国・地域を選んでいた

進出先の国・地域を決めた理由」に対する回答が次のグラフです。

回答:進出先の国・地域を決めた理由

最も多かった回答は、「市場規模の⼤きさ」で、6割以上を占めています。本実態調査は、海外進出トレンドを定性的に調査するため2015年度から毎年実施しておりますが「⼈件費の安さ」は、ここ数年で⼤きな変化があった項⽬。⼀時期は34%ほどありましたが、今回の調査では15.5%と半減しています。
2015年から続く、「海外進出=販路拡⼤」という傾向は、今後も更に加速していくでしょう。

「販路拡⼤」を狙う海外進出は、国・地域の市場規模や成⻑性が重要なファクターに

「販路拡⼤」という視点では、市場規模が⼩さく成⻑性の低い市場では、成功しても事業としてのインパクトが⼩さくなってしまいます。また、⼩さな市場規模を奪い合うことになり、成功そのものが難しくなります。

 

どれくらいの市場規模を⼤きいと⾒なすかは業種によって様々ですが、⼀般的に、⼈⼝規模や⼀⼈あたりのGDP3000ドルを⼀つの指標とする向きが多いようです。ただし、マクロデータのみを鵜呑みにしてしまうことは、海外ビジネスにおける落とし⽳の⼀つです。⾃社製品・サービスの顧客層を元に市場調査などを⾏い判断していく必要があるでしょう。

もう「⼈件費の安さ」で進出先の国・地域を選べなくなっている!?

「⼈件費の安さ」が減少したウラに、各国の賃⾦上昇

「進出先の国・地域を決めた理由」の回答で「⼈件費の安さ」が減少した理由としては、各国の賃⾦が上昇していることが挙げられます。

賃⾦の前年⽐昇給率(%)2020年度→2021年度

各国の賃⾦上昇の幅には差があり、いくつかのブロックに分かれます。3%前後の上昇率のブロックが、台湾、韓国、タイ、マレーシアなどの国々です。
4~5%程度のブロックが、ベトナム、インドネシア、フィリピン、中国、カンボジアといった国々です。そして、ミャンマーやバングラデシュ、インドなどは6~8%のブロックです。

 

⼈件費が安い国の上昇率が⾼いのは⼀⽬瞭然で、こうした上昇率を⾒ると、⻑期的に「⼈件費の安さ」による進出メリットが薄れていくことは明らかです。そのため、今後も「⼈件費の安さ」を理由とした進出は減っていくでしょう。

国際競争⼒が求められる時代において「⼈材」は重要な経営資源

海外進出の⽬的が「販路拡⼤」になっている以上、現地の事情をよく知る「海外⼈材の活⽤」は、増加していくはずです。海外⼈材を活⽤する⽬的が、⼈件費の安さ、コスト削減ではなく、リソース確保が主流となっていくでしょう。その点でも、企業にとって⼈材確保が難しくなる各国の賃⾦上昇は、進出先の国・地域を選ぶ判断に影響を与えているのかもしれません。

海外進出形態のトレンドは「拠点を設けない」。「雇⽤代⾏」も流⾏の兆し

現地のパートナー/販売代理店と越境ECで、7割以上が「拠点は設けない」

進出先の国と並んで重要なファクターとなるのが「海外展開を⾏った際の進出形態」です。

回答:海外展開を⾏った際の進出形態

「拠点は設けない(パートナー/販売代理店)」が「現地法⼈設⽴」を超え、「拠点を設けない形」で海外ビジネスをスタートさせる形が⼤きなトレンドとなっていることが⽰されました。加えて、「拠点は設けない(越境EC)」という回答割合も増加しています。

新しい事業形態として注⽬を集める「雇⽤代⾏」

海外ビジネスにおいて「現地法⼈」の⼿続きは煩雑で、⼤きなコストが必要となります。⼀⽅で、「⽀店」や「駐在員事務所」では規制や制限が出てきてしまいます。その双⽅の課題を解決するための⽅法が「雇⽤代⾏」です。

 

サービス名称としては「GEO(Global Employment Outsourcing:国際雇⽤委託)」、EOR(Employer Of Record:記録上の雇⽤主)」、「PEO(Professional Employment Organization:習熟作業者派遣組織)」、と呼ばれるもので、欧⽶企業を中⼼に海外進出時の事業形態として注⽬を集めています。

 

仕組みとしては、現地の雇⽤代⾏サービス提供会社とサービス契約を結びます。そして、サービス提供会社は、進出を検討している企業が指定する「現地責任者」を現地で雇⽤します。その⼈材が、サービス提供会社が提供するサービスの⼀環として、進出企業の事業活動を⾏うというシステムです。

 

⽇本における派遣に近い仕組みですが、⼀番⼤きな違いとしては、進出を検討している企業が⾃ら選定した⼈材を雇⽤代⾏サービス提供会社に雇⽤させる点です。すなわち、⾃社の事業を任せるに相応しい⼈材を⾃ら主体的に選ぶという点では、現地法⼈と⼤きく変わらないと⾔えるでしょう。そして「雇⽤代⾏」も広い意味で「拠点を設けない」形での進出に含まれています。

出典

本原稿および全てのグラフは、2022年4⽉18⽇〜 5⽉10⽇の期間に、海外ビジネス⽀援プラットフォーム『Digima 〜出島〜』が「⾃社の海外ビジネス展開を検討したことのある担当者265名」を対象に実施したアンケートをもとに作成された「海外進出⽩書〈リスク管理版〉2021-2022年版」を出典元とし、AIG損保で編集したものになります。

海外ビジネス⽀援プラットフォーム「Digima 〜出島〜」のページ(外部のサイトに移動します)

詳しくは「海外進出⽩書リスク管理版 2021-2022
(海外ビジネス担当265⼈に聞く!進出先の選定理由と進出形態編)」を
ご覧ください。

本記事で割愛した質問と回答などもあり、より詳しい内容をご覧になれます。

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