2026年2⽉10⽇ 公開
グローバル化やDXの浸透、AIの進化、気候変動、情勢不安など、世界はますます複雑になり、不確実性も増しています。グローバルなビジネス環境も⼤きく変化していく中、どのような点に注意して、リスクマネジメントを海外展開すればいいのでしょうか。その考え⽅や実践⽅法について解説します。
Index
-
リスクとは? リスクマネジメントとは? -
複雑化する有形・無形のリスクに備えるにはリスクマネジメントが不可⽋
リスクマネジメントの必要性
リスクとは? リスクマネジメントとは?
「リスク(risk)」は、⼀般的に「危険」「危険度」などの意味で使われますが、リスクマネジメントの国際規格 ISO31000では「⽬的に対する不確かさの影響」と定義されています。
では「リスク」の語源をご存じでしょうか。イタリア語で「勇気を持って試みる」という意味を持つ「risicare(リジカーレ)」だと⾔われています。「リスク」の語源には「チャレンジする」という意味が含まれているのです。
多くの⽇本企業は、より⼤きなビジネスチャンス、より多くのリターンを求めて海外進出をしています。「取ったリスクに⾒合うリターンが得られるか」、「リスクを取ってでもやる価値があるか」、慎重に⾒極めた上でのチャレンジです。
リスクマネジメントは「チャレンジ(勇気を持った試み)をマネジメントすること」だと⾔うことができます。
複雑化する有形・無形のリスクに備えるにはリスクマネジメントが不可⽋
かつて企業が抱えるリスクは、⾃社ビルや⼯場、設備、社有⾞などに関する有形のリスクがほとんどで、⽐較的シンプルにリスクを把握することができました。
しかし近年は、ビジネス環境の変化に伴い、事業活動に伴うリスクは複雑化するとともに、多くのリスクは無形なものに移⾏しています。例えば、サイバー攻撃の脅威は、30年ほど前には存在しなかったリスクです。グローバル企業がサイバー攻撃の被害を受けた場合、どの国でどのような影響が出るのかを算出するのは容易ではありません。
さらに、世界が相互に結びつくグローバルなサプライチェーンにおいては、予測困難な多くのリスクが潜んでいます。特定地域で発⽣した⾃然災害がグローバルな供給網全体に影響を与えるケースも増えています。
万が⼀のときビジネスを中断させないために、複雑化する有形・無形のリスクをマネジメントしていくことは不可⽋です。
求められるリスクマネジメントのプロフェッショナル
新しいリスクや複雑化したリスクは予測・認識・把握が困難なため、リスクマネジメントのプロフェッショナルの必要性も増しています。欧⽶では、CRO(Chief Risk Officer)やリスクマネージャーを設置し、企業全体のリスクマネジメントを統率するのが⼀般化しています。⽇本の海外進出企業でもリスクマネージャーを設置することが、リスクマネジメントの前提になってきています。
重要な経営課題としてリスクマネジメントに取り組む
リスクマネジメントは、コンプライアンス、内部監査と並ぶ「企業経営の3本柱」と⾔われ、リスクを統合的・包括的・戦略的に管理していくERM(Enterprise Risk Management)の重要な位置を占めています。
リスクマネジメントを取締役会で議論すべき重要なテーマと位置づけ、⾃社を取り巻くリスクやリスクマネジメントにかかるトータルリスクコスト(Total Cost of Risk:TCOR)を理解し、必要な対策を準備していくことが重要です。
リスクマネジメントをグローバルに展開する難しさ
ビジネスの舞台が⽇本国内から海外に変わっても、リスクマネジメントの本質は変わりません。しかし、⽂化や法律、商習慣が異なる海外では、対応するべきリスクそのものが変わります。
例えば、⽇本で健康に良いとされている⾷品でも、ある国では健康被害を引き起こすリスクがある⾷品として規制されているケースもあります。また⽇本的な感覚で「まさかこんな使い⽅はしないだろう」と思うような使い⽅でも、PL事故が発⽣した際に「注意書きがなかった」と訴訟を起こされる⽇本企業も珍しくありません。
「進出先の国や地域ごとに、事業の中断に発展するリスクは異なる」、そのことを理解した上でリスクマネジメントを実践していく必要があります。
グローバルリスクマネジメントの3ステップ
ビジネス環境が変化するように、企業を取り巻くリスクも変化しています。多様化・複雑化していくリスク、海外進出先ごとに異なる状況に対応していくには、リスクを把握し、対策し、定期的にチェックして改善へとつなげていくことが重要です。
ファーストステップ:リスクを把握する
リスクの種類は、⼤きく3つに分類できます。資本の逸失リスク、事業運営リスク、経営戦略リスクです。事業成⻑のために取るべきリスクは何か、抑えるべきリスクは何かを把握することがリスクマネジメントのファーストステップとなります。
カントリーリスクは、海外進出先の⽂化や⾃然環境、政治・経済・社会情勢などに起因するリスクです。代表的なものに、アメリカの訴訟リスク(⽂化として訴訟が根付いている)、タイの洪⽔リスク(国⼟が低く⾬季もある)などがあります。また、政情が不安定な国や地域ではテロや紛争に巻き込まれるリスクが⾼まる、財政が悪化している国や発展途上中で法整備が整っていない国では債務不履⾏のリスクが⾼まる、といった傾向があります。
セカンドステップ:リスク対策を講じる
リスク対策の⽅法は「保有」「低減」「移転」回避」の4つに分類できます。⽇本国内と海外進出先では、同じリスクでも発⽣する頻度や影響度が異なるため「⽇本国内で実践している対策を、同じように海外進出先でも⾏えばいい」というものではありません。
どの対策を選ぶかは、社内だけで検討するのではなく、海外進出先の事故事例を知る専⾨家や、リスクマネジメントの専⾨家など、第三者の客観的視点と知⾒を交えて検討するといいでしょう。
リスク移転で保険を活⽤する際の注意点
保険によるリスク移転は、事故発⽣時の財務的損失をカバーするツールとして有効です。海外ビジネスで保険を活⽤する際は、進出先の国や地域の法規制、業界慣⾏、商習慣などに注意する必要があります。代表的なものをご紹介します。
| 法規制・慣習 | 内容 |
| 付保規制 |
|
| 強制保険 |
|
付保証明 |
|
| 保険料税 |
|
| 損害調査 |
|
| 保険⾦の⽀払い |
|
サードステップ:定期的なリスク健診
⽣成AIのような新しいビジネスが⽣まれたら、それに伴う新しいリスクも⽣まれます。また、海外進出先の法改正により、それまで当たり前だったことがリスクの要因になることもあります。さらに、事業成⻑により関わる従業員、取引先が増えていくほどガバナンスが効きづらくなり、これまで以上に対策を⾏わなければ、事故や不祥事につながるリスクも⾼まってしまいます。
常に変化するリスクに対応できるよう、定期的なチェックは不可⽋です。AIG損保では「少なくとも年に1回は、リスクコンサルティングができる保険の担当者のレビューを受けてしてほしい」とお客さまにアドバイスしています。
事前に想定・把握することが難しいリスクもある
企業を取り巻くリスクの中には、事前に想定することが難しいリスクもあります。これらは階層に分けることができ、中には事象が起こってから初めて認識するリスクもあります。
事前に想定・把握することが難しいリスクを⾒過ごしたままにすると、緊急事態が発⽣した際に急な対応を迫られることになります。
⼗分な対応ができなければ事業復旧の遅れや、⾼額な賠償⾦⽀払いに発展し、事業継続が困難になる可能性もあります。専⾨家にアドバイスを仰ぐなどして、リスクを早期に発⾒することが重要です。
最後に
甚⼤化・頻発化する異常気象や⾃然災害、サイバー攻撃、国家間の対⽴や紛争、海外進出先の景気や需要の変動、世界規模の新型感染症、法律や規制の改正、働き⽅の多様化、サプライチェーンの拡⼤など、海外進出企業を取り巻く環境は⽬まぐるしく変化しています。
リスクを過度に恐れていては、新たなビジネスチャンスを逃してしまいます。急激な変動の中でも、事業を成⻑させていくには、リスクを適切に予⾒して、対策を打つことで「レジリエンス(事業継続⼒)」を強化していくことが必要不可⽋です。
AIG損保は、約200の国や地域で保険ソリューションを提供するAIGグループの⼀員として、お客さまの事業継続⼒強化を通じた企業価値の向上、海外進出に伴うグローバルリスクマネジメントを⼒強くサポートいたします。
本記事について
編集:AIG損害保険株式会社 マルチナショナル保険部 / 中⼩企業セグメント営業部リスクコンサルティングユニット
お客さまのグローバルビジネスにどのようなリスクがあるのか、
どのような対策が適しているのか
経験豊富な担当者がアドバイスいたします。
お気軽にご相談ください。