グローバル企業のサプライチェーンは、海外拠点や取引先の広がりとともに複雑化しています。
自然災害やサプライヤーの倒産など、一見自社と関係のない出来事が、遠く離れた拠点の生産停止や売上損失につながるケースも少なくありません。
本記事では、サプライチェーンリスクの実態や実際に発生した寸断事例を紹介したうえで、BCP(事業継続計画)や保険による備え方、AIGのソリューションを解説します。
■この記事でわかること
- グローバル企業のサプライチェーンで想定すべきリスクの種類
- タイ洪水やコンテナ船火災など実際の寸断事例
- BCPと保険を組み合わせたサプライチェーンリスクへの備え方
グローバル企業のサプライチェーンリスク
サプライチェーンリスクとは、原材料の調達から製品の納入までの供給網(サプライチェーン)が寸断され、自社の事業継続に損害が生じるリスクのことです。
原因は自然災害だけでなく、テロ、サプライヤーの倒産、労働争議、地政学リスク、感染症の流行など多岐にわたり、発生時期や規模を事前に予測することは困難です。
サプライチェーンは複数の企業が連鎖して成り立っているため、サプライヤー1社の被災であっても、自社の生産停止や売上損失に直結する構造があります。実際に、東日本大震災では関連倒産1,979件のうち87.8%が、サプライヤーの被災などを原因とする間接型倒産でした。
グローバルにサプライチェーンを展開する企業ほど、調達先や物流経路が複数の国・地域にまたがるため、リスクの所在そのものを把握しにくくなります。自社の管理が及びにくい海外拠点や取引先のリスクをどう可視化し、備えるかが経営課題になっています。
出典:「"震災から10年”東日本大震災関連倒産件数状況」(東京商工リサーチ、2021年3月2日)
サプライチェーン寸断の事例
実際にサプライチェーンが寸断された事例を見ると、自然災害や事故が想定を超える規模で事業に影響を及ぼすことがわかります。ここでは代表的な2つの事例を紹介します。
タイ洪水によるサプライチェーン寸断(2011年)
2011年に発生したタイの大洪水では、約450社の日本企業が被害を受け、主要な工業団地7箇所が水没しました。直接被害を受けた日系企業は全体の25%にとどまる一方、部品供給の停止などによる間接的な影響は60%に及んだとされています。
サプライチェーンが複数の国・企業にまたがっているため、直接の被災地から離れた拠点でも生産が滞り、日系損害保険大手3グループの支払保険金は約5,000億円に達しました。
出典:日経ものづくり「タイ洪水の教訓」助川成也氏インタビュー(2019年5月8日)
巨大コンテナ船火災と共同海損による貨物遅延(2017年)
2017年4月、インド洋上を航海していた最大コンテナ積載数約1万3,800個の巨大コンテナ船で火災が発生しました。鎮火までに数日を要する大規模な事故となり、船主は共同海損を宣言しました。
共同海損とは、事故の救助費用などの損害を船主と荷主で分担する制度で、荷主は現金または保険会社の保証状をデポジットとして提出しない限り、貨物の入ったコンテナを受け取れません。
AIGは、この事故で貨物が留め置かれた約20社の契約者の関係書類を取りまとめ、1つの保証状を発行することで迅速な対応を実現。契約者の1社は、貨物をヨーロッパ行きの代船第一便に載せることができ、納期への影響を最小限に抑えました。
こうした対応を可能にしたのが、世界25以上の国や地域に広がるAIGのグローバル損害サービス体制です。
事故対応の詳しい経緯は、下記の事例紹介資料をご覧ください。
輸送中の貨物リスクに備える保険については、下記をご覧ください。。
サプライチェーンリスクへの備え
サプライチェーンの寸断リスクは、海外拠点などの「拠点」と、貨物輸送の「輸送」の両面で発生します。どちらか一方だけでなく、両方に対応した備えが必要です。
まずは、サプライチェーンにおける、リスクマネジメントの考え方から解説します。
サプライチェーンリスクマネジメントの考え方
サプライチェーンにおけるリスクマネジメントは、リスクの状況を把握し、リスクを洗い出したうえで分析・評価し、最後に具体的な対策を講じるという流れで進めます。
この最後の「対策」の段階で取りうる方法は、一般的に「回避」「軽減」「移転」「受容」の4つです。
たとえば、リスクの高い取引先を分散させる対応は回避、拠点の防災設備を強化する対応は軽減にあたり、保険への加入はこのうち「移転」に該当します。
サプライチェーンリスクへの備えについては、対策の選択肢の中に保険が位置づけられることを踏まえたうえで、拠点・輸送それぞれのリスクに応じた具体的な備え方を検討することが重要です。
参考:TAPA Risk Assessment Training 2026 course document、東京スタンダード「ISOリスクマネジメント入門!基本プロセスから実践事例まで完全解説」
BCPにサプライチェーンリスクを組み込む
東日本大震災以降、自社拠点だけでなくサプライチェーンの途絶も想定したBCP(事業継続計画)の策定が標準的な考え方になっています。内閣府の「事業継続ガイドライン」でも、BCPが対処すべき事象としてサプライチェーンの途絶が明記されています。
ただし、BCPはあくまで事業を継続・復旧させるための計画であり、発生した損害そのものを補填する役割は担いません。損害の補填には、保険による備えを組み合わせる必要があります。
出典:「事業継続ガイドライン(令和5年3月)」(内閣府)
企業財産と休業損害をカバーする保険に加入する
海外に拠点を持つ企業には、拠点の「建物・設備」そのものの損害に備えるだけでなく、事業停止による利益の喪失(休業損害)まで含めた保険への加入が求められます。自社の拠点が直接被災した場合だけでなく、サプライヤーの被災によって自社の生産が止まった場合の休業損害リスクも、こうした保険で備えるべき対象のひとつです。
AIGでは、海外拠点の財物保険において、火災・爆発や自然災害による直接の被災リスクだけでなく、事業継続リスクに関わる利益喪失までカバーする仕組みを提供しています。
輸送の備えとして外航貨物海上保険に加入する
原材料の調達から半製品、完成品、そして納入先への輸送まで、サプライチェーンの各段階で貨物には損害のリスクが伴います。
輸送中の貨物の損害に備える保険には外航貨物海上保険があり、輸送中だけでなく加工中や保管中の貨物も補償の対象になる点が特徴です。
なお、外航貨物海上保険が補償するのは貨物そのものの損害や再調達費用、調査費用などが中心で、納品遅延や機会損失といった間接的な損失までは対象外となることが多い点には注意が必要です。
海外拠点の保険をCMPで一元管理する
複数の国に拠点を持つ企業では、拠点ごとに現地の保険会社と契約すると、国によって補償条件や保険金額の水準にばらつきが生じやすくなります。
そこでAIGでは、本国のマスター契約と現地契約を組み合わせてグループ全体の補償を統一的に管理する、コントロールドマスタープログラム(CMP)を提供しています。
CMPを活用し、各国のリスク情報を本国に集約して管理することで、海外子会社に対しても安定した補償を提供でき、国ごとに存在していた補償条件や限度額のギャップの解消にもつながるでしょう。
AIGのサプライチェーンリスクへのソリューション
AIGの外航貨物海上保険は、企業ごとの取引形態やサプライチェーンの構造に応じて、補償内容を柔軟にカスタマイズできる点が特徴です。
さらに、地域ごとの専門チームが世界規模で連携する体制を整えており、事故発生時には各国のグループ会社が連携して迅速に対応します。国境をまたぐサプライチェーンのリスクに対しても、グローバルな知見とネットワークを生かしたサポートが可能です。
AIGの外航貨物海上保険の詳細については、下記をご覧ください。
サプライチェーンリスクへの備えはAIG損保にご相談ください
サプライチェーンリスクは、自然災害やサプライヤーの倒産など多様な原因で発生し、拠点と輸送の両面で自社の事業継続に影響を及ぼします。BCPで対応方針を定めるとともに、企業財産保険や外航貨物海上保険、CMPによる一元管理など、保険によるリスクの移転を組み合わせることが重要です。
AIGでは、外航貨物海上保険をはじめとするグローバルなリスクソリューションについて、専門の担当者がご相談を承っています。海外拠点の拡大や取引先の見直しを検討しているタイミングは、既存の補償に抜け漏れがないか確認する良い機会でもあります。サプライチェーンリスクへの備えを検討する際は、お気軽にお問い合わせください。
ご相談・お問い合わせは、下記フォームをご利用ください。