Global Risk Manager

アメリカの⾃然災害、90%は洪⽔関連。その準備と対策とは?

2025年12⽉8⽇ 公開

RIMS⽇本⽀部 × AIG損保

Global Risk Manager Vol.013 アメリカの⾃然災害、90%は洪⽔関連。その準備と対策とは?

本連載シリーズは、リスクマネジメントのグローバルな⾮営利組織、RIMSの⽇本⽀部とAIG損保の共同編集により、これから海外進出を検討する企業、またはすでに海外進出している企業のリスクマネージャーのスキルセット向上を⽬指しています。
⽇々の業務はもとよりビジネスの先を⾒据えた洞察・推察にお役⽴ていただければ幸いです。

気候変動による気温の上昇は、⼤気中に含まれる⽔分を増やし、激しい降⾬や嵐、洪⽔をもたらす要素のひとつになっています。厳しい気象現象は増加傾向にあり、洪⽔に対する準備と対応計画がますます重要になっています。今回は、アメリカの例をもとに、洪⽔対策や洪⽔保険について、リスクマネージャーが知っておくべきポイントを解説します。

アメリカにおいて洪⽔は⾝近な災害

⾃然災害の90%は洪⽔に関するもの

⽶国保険情報協会(The Insurance Information Institute)によると、アメリカにおける⾃然災害の90%は洪⽔に関するものでした。
激しい気象現象によるものだけでなく、⽔道管の破損、消⽕栓の不具合、排⽔不良などが原因の洪⽔も、ビジネスに深刻な損害をもたらす可能性があります。

連邦緊急事態管理庁(FEMA)は、1996年から2019年の間に、全⽶の99%の郡が洪⽔の被害を受け、平均5万2,000ドルの洪⽔保険⾦が⽀払われたと報告しています。

わずか1インチの浸⽔が2万ドルの損害に

保険を検討する際、過去に⼀度も起こったことのないことに保険料を⽀払う理由はないと結論づけたくなるものです。しかし、統計によると、洪⽔被害に関する⾼額な保険⾦請求は、通常は洪⽔が起こりにくい地域でしばしば発⽣しています。

全⽶保険監督官協会(NAIC:National Association of Insurance Commisioners)は、わずか1インチの浸⽔が2万ドルの損害をビジネスに与える可能性があると指摘しています(※)。

洪⽔による在庫の損失、事業の中断、被害からの復旧作業などに対処するコストを考慮すると、⽕災保険や家財保険を検討するか、保険に加⼊しないことを選択した場合には、何が危機に瀕しているかを⼗分に理解しておくことが重要です。

洪⽔発⽣前の対策

春に⽅針を⾒直す

専⾨家によると、洪⽔による保険⾦の請求は9⽉にピークを迎えます。組織のリスクマネージャーは、毎年春に⽅針や復旧の⼿順、想定する不測の事態を⾒直すといいでしょう。

災害復旧計画は社外からアクセスできるようにしておく

すべての災害対策と同様に、災害復旧計画の策定と実施に関連する責任を明確にしておくことも重要です。事業所が被害に遭うことも考慮し、災害復旧計画は、必要な関係者全員が社外からアクセスできるようにし、保険代理店の連絡先、保険証券番号も確認できるようにしておきます。

また、⽕災保険や家財保険は⼀般的に、カビ、カビ関連の損害、カビの修復、または空間を使⽤可能にするために必要なHEPA(⾼性能フィルター)機器には適⽤されません。カーペットや布製品は⽔に濡れると表⾯にカビが⽣えやすくなります。在庫の損失を最⼩限に抑えるために、カーペットや布製品を取り除くオペレーションも、災害復旧計画に含めておくといいでしょう。

加⼊している保険の補償内容を確認し、不測の事態にも備える

⼀般的な⽕災保険や家財保険の多くは事業中断を補償していません。補償内容を確認し、全体的なリスク軽減戦略の⼀環として、事業中断にかかる費⽤を補償する別の保険を検討することも重要です。

定期的に在庫の棚卸しをする

洪⽔対策の⼀環として、オフィスや商業スペースの定期的な棚卸しを⾏います。オフィス家具、専⽤機器、電⼦機器、電化製品、その他の備品の写真を撮っておくと、保険⾦請求⼿続きの合理化に役⽴ちます。

ほとんどの保険では、100ドル以上の品物にはシリアルナンバーの記⼊が義務付けられているため、現場の電⼦機器のシリアルナンバーを控えておくことが理想的です。

洪⽔発⽣後の対応

洪⽔発⽣後、直ちに保険⾦の請求を開始する

洪⽔が発⽣した場合、まずは保険代理店またはブローカーに連絡し、できるだけ早く保険査定⼈を⼿配してもらいます。その後、損害の記録を取り始めます。請求額の合計が⼀定額を超える場合、保険査定⼈は、情報を検証するために公認会計⼠を連れて来なければならないため、綿密な記録が不可⽋です。

在庫の損失については、各アイテムの損傷を記録します。保険会社がお払いするのは、販売価格ではなく、⾃⼰負担額であることに注意してください。

損害を写真で記録したら、修復を依頼する

損害を記録したら、復旧に向けた準備です。修復業者に依頼して、カビの原因となるものをすべて取り除きましょう。

修復業者の選定は、保険契約者の責任で⾏います。保険査定⼈や代理店がそれらの業者を推薦することは、法律で禁⽌されているので注意が必要です。修復業者も、保険でカバーされるものとされないものを正確に把握しているとは限らないので、補償内容に含まれている物が何であるかを理解し、それに従ってサービスを契約することが重要です。

詳しくはRIMS⽇本⽀部の
『Risk Management』【Web特別版】2024年3-4⽉号をご覧ください。

出典

本記事は、リスクマネジメントのグローバルな⾮営利組織、RIMSが発⾏する機関誌「Risk Management」【Web特別版】2024年3-4⽉号の記事を、RIMS⽇本⽀部とAIG損保が翻訳・共同編集したものです。

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