Global Risk Manager

2022年アメリカのインフレと損害保険市場への影響を考える

2022年11⽉18⽇ 公開

RIMS⽇本⽀部 × AIG損保

Global Risk Manager Vol.002 2022年アメリカのインフレと損害保険市場への影響を考える

本連載シリーズは、リスクマネジメントのグローバルな⾮営利組織、RIMSの⽇本⽀部とAIG損保の共同編集により、これから海外進出を⽬指す、またはすでに海外進出している企業のリスクマネージャーのスキルセット向上を⽬指しています。⽇々の業務はもとよりビジネスの先を⾒据えた洞察・推察にお役⽴ていただければ幸いです。

海外の保険市場は⽇本よりも社会情勢の影響を受けやすい傾向にあります。例えばインフレも、保険の現地調達を難しくする要因のひとつに挙げられます。リスクマネージャーにとって、海外の動向に⽬を向けることも⼤切です。国や地域によって影響度の差はありますが、今回はアメリカの例をご紹介します。

Index

インフレによる物価上昇は、損害保険料にも影響

インフレによる保険会社を取り巻く環境と気をつけたいこと

インフレ下で損害保険の契約更改に備えるポイントと対策

インフレによる物価上昇は、損害保険料にも影響

いつまで?アメリカにおけるインフレの状況

消費者物価指数でみた2022年6⽉のアメリカのインフレ率は9.1%となり、1981年以来の⾼⽔準をマーク。⼀⽅で、労働省の発表によると6⽉の雇⽤は37万2千⼈増加。失業率は4か⽉連続で3.6%にとどまり、インフレにもかかわらず、アメリカ経済は堅調に推移しています。

 

サウスカロライナ⼤学臨床⾦融・保険学准教授で経済学者ロバート・ハートウィグ⽒は「アメリカでは2022年後半にインフレがピークに達することを期待しているが、それが実現するのは年の終わりごろになるかもしれない」と予測しています。

優先すべきインフレ対策は、保険の限度額と予算を拡⼤すること

アメリカの多くの専⾨家は、急速に進むインフレと景気後退に対する警戒感が⾼まることから、保険料の値下げ交渉の機会は限られているとの⽴場を守り続けています。

 

また、アメリカ・保険情報研究所副社⻑で経済分析部⻑である経済学者ミッシェル・レオナール⽒は、保険の限度額と予算を拡⼤することが優先事項だと⾔います。「既存の限度額や予算では⼗分ではない。幸いなことに、CFOはインフレが保険会社の損害コストに与える影響を認識している」。

 

これらは、インフレが続くことで更新時により⾼い損害保険料が必要になる可能性を⽰唆しています。

インフレによる保険会社を取り巻く環境と気をつけたいこと

財物保険の場合

インフレによる物価上昇は、財物の修理や部品交換などの調達コストも上昇させます。保険でカバーする際は、保険会社に⽀払限度額を上げてもらう必要があるため、限度額が⾼くなると保険料が⾼くなるのが⼀般的です。

 

アメリカ・ギャラガー社資産・損害部⾨のマイク・ペシュ社⻑兼アメリカCEOによると、同社では顧客やリスクマネージャーに対して「インフレによる保険会社の損害コストの上昇に対処するため、財産の評価を⾒直し、限度額を10%から30%引き上げる」というメッセージを伝えています。この概算は、格付け機関も同意するところです。

 

中でも、商業⽤不動産事業では、⼤幅な保険料の上昇が起こる可能性が⾼いと考えられます。レオナール⽒は、「保険会社やブローカーと協⼒して、限度額を⾒直し、最適化することが重要だ」とアドバイスします。

⾃動⾞保険の場合

保険ブローカーのマーシュが発表した調査リポートによると、アメリカにおける2022年第1四半期の保険料率は12%上昇。この上昇はインフレに加え、サプライチェーンの混乱、バックカメラや⾞線変更信号システム、ナビゲーション技術などの⾼度な機能の普及に伴う修理や交換の価格上昇などが原因となっています。

 

また、ニューヨーク・タイムズ紙によると、2019年夏から2021年夏にかけて⾃動⾞死亡者数は17.5%増加。事故件数の増加は、修理・交換費⽤の総額を押し上げます。「⾃動⾞修理費が8%から10%⾼くなると、⼀般的に保険料もそれに追随する」と、ハートウィグ⽒は分析します。

労働災害保険の場合

インフレの影響を直接受けないとしても、医療費と賠償⾦の上昇は依然として懸念材料です。ムーディーズ社副社⻑兼上級信⽤調査官ジャスパー・クーパー⽒は、次のように⾔います。「アメリカの医療費の⾼騰は、COVID-19の最初の2年間は⽐較的緩やかでした。しかし⼀般的なインフレ傾向により、ここ数か⽉で上昇しています。また賠償⾯では、社会的インフレ(※)が上昇しています」。

 

景気が悪いと感じると、⾼い⾦額を要求する陪審員も増えるでしょう。社会的インフレは、最終的に⼤きな損害賠償請求につながり、賠償責任保険料に影響を与えます。保険会社は、より⼤きな評決に対応できるような価格を設定しなければならないのかもしれません。

 

  • ここで⾔う「社会的インフレ」は、企業に対する賠償責任訴訟で陪審員が原告側についたときに課される極端な懲罰的損害賠償のことを指しています。

インフレ下で損害保険の契約更改に備えるポイントと対策

早めのデューデリジェンスが重要

リスクマネージャーはインフレの影響を受けた損害保険を検証しながら、財務を保護するために必要な補償限度額を拡⼤することを試みるべきです。保険料の上昇に対処するには、より⼤きな予算が必要ですが、経営幹部から了承を得るのは容易ではありません。特に、インフレ時はより困難になるでしょう。

 

そこでレオナール⽒は「デューデリジェンスを⾏い、CFOと会合を開く必要がある」と⾔います。「現実的な観点から限界を分析し、保険料を低く抑えるために考えられるすべてのリスクの軽減と維持を検討したことを指摘すること。そして、この作業は早めに⾏うこと。誰もサプライズを好まないのだから」。

詳しくはRIMS⽇本⽀部の
『Risk Management』2022年7-8⽉号をご覧ください。

(本記事は会員限定のため、正会員/協賛会員への登録が必要です)

出典

本記事は、リスクマネジメントのグローバルな⾮営利組織、RIMSが発⾏する機関誌「Risk Management」2022年7-8⽉号を、RIMS⽇本⽀部とAIG損保が翻訳・共同編集したものです。原⽂と和訳に相違があるときには、原⽂を優先します。

RIMS⽇本⽀部のページ(外部のサイトに移動します)

グローバルリスクマネジメントの先端を追うキュレーションメディア

まずはお話をお聞かせください

AIG損保にコンタクトする

無断での使⽤・複製は禁じます。