200以上の国や地域で保険事業を展開するAIGグループ。AIG損害保険はそのネットワークを生かし、グローバル企業のリスクマネジメントを数十年にわたって支援してきた。時代の変化とともに登場する新たなリスクと向き合い、25年もの間、賠償保険の最前線で活躍してきた企業賠償保険部 部長 大谷洋喜が考えるAIG独自の強みとは。
グローバルにビジネスを展開する日本企業が直面するさまざまなリスクは高度化、複雑化の一途を辿っている。企業が持続的な成長を遂げ、新たな価値を生み出し、安定した経営を実現するには、戦略的なグローバルリスクマネジメントが重要な鍵となる。
そうした中で、保険業界もまた大きな転換期を迎えている。日本の損害保険業界では長らく、系列企業や株式の持ち合いを重視した取引が根強く残っていたが、近年、様々な環境変化により業界の体質やビジネスの進め方が大きく変わろうとしている。損害保険業界で30年以上、賠償保険に25年以上携わってきた大谷はこの変化を好機と捉える。
「商品やサービスの内容、提案の質で保険会社が選ばれる時代へ向かいつつあります。AIG損保は、これまで企業のリスクコンサルティングを通じた提案力にこだわって地道に勝負してきた会社です。この流れは私たちにとって大きな追い風だと感じています」
グローバル市場で求められるリスクマネジメントの水準は、国や地域によって大きく異なる。特に訴訟大国アメリカでは「資力のある者が負担すべき」というディープポケット・セオリーが浸透し、事故との直接の因果関係がない場合でも賠償対象とされたり、陪審制度により被害者に同情的な判決が出やすいというリスクもある。このような現地の法制度や訴訟慣行に不慣れなまま世界進出する日本企業が多いことに、大谷は危惧の念を抱く。
こうした国際的なリスクは、近年の高額賠償訴訟の事例にも表れている。昨今、アメリカでは医療費の高騰や企業の社会的責任の拡大、所得格差の拡大などを背景に「ソーシャルインフレーション」といわれるように、賠償訴訟の高額化が顕著となっている。
大谷はAIG損保が対応した訴訟事案として、アメリカでの象徴的なケースを振り返る。消費者がある市販製品を本来の用途とはまったく異なる形で使用した結果、事故を起こしたのだ。被害者は加害者であるこの製品の消費者だけではなく、小売店を相手に損害賠償請求を行った。小売店は卸売業者を、卸売業者は製造元をいもづる式に訴訟に巻き込み、結果として商流に関わった全ての会社が訴訟に巻き込まれた。
AIG損保のお客さまは、流通の過程に関与していただけであり、また調査の結果、問題となった製品ロットとは無関係であることも判明したが、この製品をアメリカに販売するというビジネスへの関与があったため訴訟から逃れることはできなかった。
この事案においても、AIGグループのグローバルネットワークが最大限に生かされた。司令塔となったのは日本の損害サービス担当者だ。AIG損保ではひとりの担当者が1事故に対して一貫して対応することで、きめ細やかで迅速に対応できる仕組みを整えている。担当者はお客さまの立場や事故に至る経緯、原因、証拠資料を確認・整理したうえで、世界各国の損害サービスチームや調査機関、法律事務所と密に連携し、現地の法制度と訴訟慣行を踏まえて交渉戦略を構築した。
「最前線で訴訟対応にあたったのは現地の弁護士ですが、裏側では日本の損害サービス担当者が常に全体像を俯瞰し、各所とやりとりを重ねていました。お客さまのビジネスリスク全体を見据えた解決策を追求した結果、原告側との交渉も粘り強く進めることができました」
最終的には和解という形で決着し、保険金によって損害賠償金や訴訟対応費用が賄われた。AIGのグローバルネットワークと豊富な経験によって裏打ちされた訴訟対応力が、日本企業の海外事業を守った一例である。
AIG損保の強みは事故対応の迅速さや正確さにとどまらない。社会や法律が変われば、企業が直面するリスクも大きく変化する。そうした時代の変化を見据え、AIG損保は商品設計やソリューションを進化させてきた。
大谷もその中心に立ってきた人物のひとりである。大学院でMBA取得後、1993年に旧AIU保険会社(現AIG損保)へ入社。イギリスのAIG Europeでの4年半に及ぶ勤務を経て、賠償保険という専門分野におけるアンダーライティング、商品やサービスの提供を通して、日本企業のリスクに対してさまざまなソリューションを提供してきた。
「世の中が変わるとリスクが変わり、必要なソリューションも変わります。この原理原則を常に念頭に置いて、変化に迅速に対応し、商品設計やアンダーライティングに柔軟に反映させる努力をしてきました」
インバウンド需要の拡大やサプライチェーンの国際化に伴い、日本企業は海外での賠償リスクへの備えも求められるようになった。例えば、訪日外国人観光客が日本で購入した製品を帰国後に使用して事故を起こした場合、従来の賠償保険では補償対象外となることが多かった。AIG損保はこうした課題にスピード感を持って対応し、海外での事故や訴訟にも対応する特約を設けた。
賠償保険のプロフェッショナルとしてキャリアの円熟期を迎えた大谷は、AIG損保の商品やサービスの品質を高める役割のみならず、人材育成の面でも大きな貢献をしている。事故対応も引き受けの可否も、すべては人の判断力と経験に基づくものだ。若手スタッフに知的好奇心と想像力、情熱を持って仕事に挑むことの大切さを伝え続け、一人ひとりが得意分野を極め、スペシャリストになっていける環境づくりに力を入れる。
「本人の希望だけでなく、リーダー側が新しいチャレンジの機会を積極的に設け、1年経つ頃には驚くほど成長を遂げた事例もあります。一人ひとりの成長がチーム力向上、ひいてはお客さまへの価値提供につながると信じています」
グローバル市場で挑戦する日本企業を支えるAIG損保は、各国のAIGと連携して得る最新情報やトレンド、知見をお客さまに提供し、リスク予防・軽減の支援を行っていく。それを体現する大谷のようなプロたちが世界中にいて連携し合っている。これこそが、「AIG=グローバルリスクの戦略的パートナー」である証といえる。
大谷 洋喜(おおたに ひろき)
AIG損害保険株式会社
企業賠償保険部 部長
1993年旧AIU損害保険株式会社に入社。AIG Europe (UK) で英国に進出する日系企業へのソリューションの提供や賠償保険分野でのアンダーライティング実務を経験したのち、帰国後は賠償保険シニアアンダーライターとして、主に中堅・大企業の賠償保険アンダーライティングに従事。2004年から現職、AIG本社との連携を密に、アンダーライティング、商品開発、収益管理など、企業賠償保険全般を統括している。
本記事の内容は、2025年8月時点の事実に基づき記述しています。記事内の数値や部署名または人材の所属は現在の内容と異なる場合がございます。なお本記事は、Forbes JAPAN BrandVoiceへ寄稿した記事です。より多くの方にご覧いただくため、当社ホームページに掲載しています。
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