“高度な数学的手法を駆使するプロフェッショナル”--。アクチュアリーと聞いて一般的に思い浮かべるのはこのようなイメージではないでしょうか?AIGジャパン・ホールディングスのアクチュアリーは、一味違います。チーフ・アクチュアリーの梅田和彦が、「AIGジャパンならではのアクチュアリーの役割」について話します。

 

「損害保険の3要素」を見極めるプロフェッショナル

━━ そもそも「アクチュアリー」はどういった仕事なのか、わかりやすく教えてください。

名前
梅田

誤解をおそれずに、わかりやすく噛み砕いていいますね。アクチュアリーは「負けないギャンブルのために、数学を使う専門職」です。

━━ ギャンブルですか!?

名前
梅田

早速、誤解されたようですね(笑)。日本アクチュアリー会のホームページにはアクチュアリーはラテン語の「公務の記録員(Actuarius)」という言葉からきているという記載があります。これだと「お役所的」に着々と進めていく印象を受けますが、実際はお役所仕事とは比べものにならないほどの不確定な事象を扱うのがアクチュアリーです。

━━ 不確定な要素が多いということでギャンブルなんですね。

名前
梅田

2001年9月11日、誰もが想像もしない痛ましいアメリカ同時多発テロ事件が起きたとき、私は当時所属していた外資系保険会社があるバミューダ島にいました。世界中に散らばるアクチュアリーが集まるカンファレンスに出席したのですが、そこで1週間足止めされるなか、アクチュアリーの役割について考え続けたことを思い出します。事故があるかどうかわからない、事故が起きた際、いくら払うかもわからない……。もし10人から掛け金100円を集め、保険金の支払いが600円なら問題なくお支払いできます。それが9000円だったらどうなるでしょう。手持ち資金が9000円以上あれば支払えますが、なければ破綻してしまいます。責任は重大です。

━━ 競馬も競艇も仕組みは同じ。確実に起こることがわからないなか賭け金を設定し、手持ち資金を超える負けが続いたら破綻します。だから「数学を駆使して負けないギャンブラー」であることが、アクチュアリーに求められるというわけですね。そういったアクチュアリーの、AIGジャパンでの具体的な役割を教えてください。

名前
梅田

損害保険には他のビジネスにはない、3つの特徴的な不確実性要素があります。1つめは、「保険事故の発生の有無」、2つめが「もし保険事故が発生する場合はいつか」、3つめが「発生した場合の金額」。この3つの要素が、アクチュアリーとしての、もっと言いますと「数理専門職」としての存在意義が問われるところだと考えています。

━━ これらの要素は、損害保険と生命保険の違いも浮き彫りにしますね。

名前
梅田

そうですね。損害保険と生命保険が本質的に異なるところは1と2。つまり保険事故の発生有無とそのタイミングといえるでしょう。生命保険について考えると、残念ですが人にはいつか必ず死が訪れます。一方で損害保険では、「事故が発生しない場合」も十分にありえます。さらに3の金額についていえば、損害保険は生命保険のように定額だけではなく、条件と場合によってはとてつもなく大きな金額になる賠償責任事案もあります。アクチュアリーはこの3つの不確実性がある事象をよく理解、予測。その分析結果から「保険料の設定」「支払保険金の予測」「会社が長期的に健全な運営ができるための必要な資本」を算出し、ビジネス部門と連携して会社の経営基盤を固めていく役割を担っています。

アクチュアリー業務に制限はない!

━━ AIGジャパンのアクチュアリーとして、この役割を担うなかで大事にしていることは何でしょうか?

名前
梅田

とくに損害保険は、身近な日常生活のリスクから海外で発生する製造物賠償責任のような支払いが数十億円におよぶこともあるリスクまで、大きな振れ幅のあるビジネスです。ここで大きく外さないようにするには、「大数の法則」といってサンプル数をできるだけ多くする必要があります。

━━ サンプル数を多くするのは、営業部門の仕事ですよね?

名前
梅田

そうとはかぎりません。「アクチュアリー業務はここまで」と決めつけるのはもったいない。むしろ、保険の募集から支払いまで、あらゆる場面でアクチュアリーサービスをどのような形で提供できるかを考える時代にきていると感じています。

━━ アクチュアリーも営業するということですか?

名前
梅田

そうですね。私がチャレンジしたことをお話しすると営業と一緒に、とある大手警備会社に飛び込んだことがあります。

━━ アクチュアリーが営業とともに訪問したことに、大手警備会社の担当の方は驚かれませんでしたか?

名前
梅田

アクチュアリーが来たのは初めてだと驚いていましたね。びっくりしたせいか、株主でもなくコネがあるわけでもないのに、会長が話を聞いてくれました(笑)。上から攻めると話が早いんですよ。その警備会社の窃盗、盗難、放火などさまざまな統計データをご提供いただき、そのデータを元に競合に勝つための新商品をつくりました。アクチュアリーの立場から考えても、「ビジネスの起点は営業にある」と信じています。

━━ AIGジャパンのチーフ・アクチュアリーチームのメンバー全員、そのようなモチベーションで働かれているのでしょうか。

名前
梅田

私同様にほかの数理メンバーも多様なバックグラウンドと経験をお持ちのためか、各人、それぞれどうすれば会社に貢献できるのか、自分自身をどう成長させたいかをよく考えているように感じます。大きな組織になればなるほど自分の役割を限定してしまい、または歯車の一部分となりがちですが、AIGジャパンではそのようなことはけっしてありません。むしろフィードバックループをしっかりつくり、アクチュアリー業務のすべてがビジネスと経営に有機的につながっているということが重要だと考えています。

ワン・チームとして「有機的につながる」AIGジャパンの理想像

━━ 「有機的につながる」というのはどういうことでしょうか?

名前
梅田

データに落とされた数字の裏には、事故の加害者、被害者がいて一人ひとり状況は違います。契約をとってきた営業にも、そこに行き着くまでにいろいろなことがあったことでしょう。データだけを追うのではなく、私たちの分析結果をビジネスと経営に役立たせるために意識的に部門の外にも発信していくことが、AIGジャパンでのアクチュアリーの本質的な役割だと考えています。

━━ AIGジャパンをいったん離れた後、アクチュアリー業務を中心としていろいろな会社で経験を積まれた梅田さんの目に映る今のAIGジャパンはどのようなものでしょう。

名前
梅田

AIGグループを一旦離れるとき、当時の日本の会長の部屋に呼ばれ「梅田さん、大変だろうけど頑張ってこい」といった意味のことを英語で言われて思わずその場で泣いてしまったことを今でもよく覚えています。会社の組織や人は変わっても、当時感じていた「AIGジャパンの底に一貫して流れているもの」は変わっていない。そう感じます。もちろん、私が離れていたこの20年間にいろいろなことがあったと思いますし、私のように外にいた者にはわからない痛みもあったに違いありません。それでもそれを乗り越えてここまでこられたみなさんは、もっともっとAIGに誇りを持っていいと思います。最後になりますが、「AIGが日本で最大かつ最強の保険会社になること」が私の目標であることをメッセージとして伝えさせていただきます!

プロフィール
梅田 和彦(うめだ かずひこ)
秋田県生まれ、横浜本牧育ち。1988年、大学卒業後AIU(現AIG損保)に入社。同社と、その後異動したアメリカンホームで保険数理部門の業務にあたる。その後、外資系損害保険会社でチーフ・アクチュアリーを務め、2021年6月再びAIGグループに。

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