「またか…」三度の水害が会社を襲う
濁った水が自社の倉庫に流れこむ。保管していた商品が、みるみる水に沈んでいく。市からは最大級の避難情報である「緊急安全確保(警戒レベル5)」が発令され、雨が止むまでなすすべはなかった。
2024年11月2日、愛媛県松山市では明け方から1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降った。ますます雨足が強まっていく午前10時、やっとのことで「金井商会」3代目・金井正和さんが自社に駆けつけた時、近隣の川は氾濫し、裏山から鉄砲水が押し寄せて、本社の倉庫は水に沈みつつあった。
周囲の水位は瞬く間に上昇したが、午後になると雨はぴたりと止み、水もまもなく引いていった。倉庫を見渡した金井さんは「ああ、またか…」と肩を落とした。
金井商会では、農薬・肥料・農業用フィルムといった農業資材の販売を行っている。商品はパレットやラックに載せて保管していたが、今回の浸水位は想像を上回り、多くの商品が水に浸かった。水害に遭うのは、これが3度目だった。
西日本豪雨で受けた深刻な打撃
最も被害が大きかったのは2018年7月、西日本全域で大きな被害をもたらした「西日本豪雨※1」だった。
金井商会は、愛媛県内に5つの営業所を持つ。そのうち、大洲と宇和島にある2か所が濁流にのまれた。ニュースでその様子を見た金井さんは「想像を超えた被害の大きさに愕然とした。そして、復旧できるのだろうかという不安でいっぱいだった」と心境を吐露する。
幸い人命は無事だった。しかし、営業所は腰の高さまで浸水。倉庫にあった農薬や肥料、農業用の鉄骨やビニール資材などの商品、事務作業用のOA機器類もほとんどが使えなくなっていた。
「被災後、一番大変だったのはゴミ出しです。倉庫の中は、他所から流れこんだ廃材やゴミであふれかえっていました。でも、産廃業者には依頼が殺到してなかなか連絡がつかなかったのです」
愛媛県の夏は暑く、電気の止まった倉庫での清掃作業は困難を極めた。人手が欲しいと願っていたところに「社員や仕事仲間、友人をはじめ、取引メーカーの担当さん、果てはお客さままでが応援に駆けつけてくださり、本当にありがたかった」と金井さんは当時を振り返る。
水に濡れた農薬やフィルムは変質していた。一方で、問題がなさそうに見える商品もあるが、一度濡れているので品質が保証できず、受荷主が受け入れを拒むケースもある。その結果、ほとんどが廃棄処分になり、損害額は甚大だった。
「幸い、仕入先や取引先によって救っていただきましたが、水害の恐ろしさを改めて知る思いでした。その後も各地で豪雨や洪水が続き、『水害って起こるんや。そういう時代になったんや』と思うようになったんです。思いがけない災害で商品の大部分を失いましたが、ネガティブに捉えるよりも、倉庫の中がスッキリしたこの機会に心機一転し、保険もきちんと見直そうと考えました」
※1正式名称は「平成30年7月豪雨」(前線及び台風第7号による大雨等)
全ての物流をカバーする「物流保険」
西日本豪雨の損害をきっかけに、保険や補償を見直した金井さんが新たに加入したのはAIG損保の「国内物流総合運送保険」。商品の仕入れから保管、配送・販売と、納入先に商品が届くまで丸ごとカバーできる保険だ。
加入をサポートしたAIG損保の代理店「グッド・チョイス愛媛」代表・岩田博史さんは、同保険の魅力をこう話す。
「最大の特長は、契約者となる企業が所有する商品や在庫品であれば、どこにあっても、保険金額の上限まで損害を担保できること。金井商会さまのように、倉庫を複数お持ちの企業にはぴったりの保険です」
金井さんも「場所の特定をしなくても全ての保管場所がカバーされるという点に一番惹かれました」と頷く。
「どこで被災してもカバーされるというのがとてもわかりやすい。また、物流のどこで事故が起きるかわからないので、ワンストップで守ってもらえる点にも安心しています」
さらに、「火災や水害に加え、地震による損害も対象となる※2のが特長」だと岩田さん。この点が、水害と特に地震リスクへの備えを望んでいた金井さんのニーズに合致した。
「実際、岩田さんは弊社の事業をよくご存じで、2024年に再び被災した時も事故対応は非常にスムーズで、煩雑なやりとりは特にありませんでした。リスクコンサルティングの面でも、会社の内情を理解した上で最適な提案をもらえるので、とても心強く信頼しています」
※2オプションで「地震危険担保特別約款」を付帯した場合
保険金が復旧の原動力に
松山では2019年にも水害が発生したが、金井商会では日頃から防災意識を高めていた甲斐もあり、被害はほとんど出なかった。その後、2024年に発生したのが冒頭の豪雨災害だ。
倉庫が沈んでいく様子は2018年の西日本豪雨を彷彿とさせたが、社内の空気は違っていた。雨がやんだ瞬間から、金井さんや社員、そして代理店の岩田さんも一丸となって会社の復旧に向けて動き出した。
「社員たちは自発的に倉庫や商品が水没した様子を写真に撮ってどんどん送ってくれて。さらに、前回の被災時に浸かった商品名と金額をまとめた一覧表を活用してその品数を更新し、今回の損害額をすぐ算出してくれました。過去の被災によって、社内の災害対応スキルが格段に上がっていたんですね」
資料をもとに岩田さんが報告書を作り、鑑定人が現場を査定した。鑑定後、約1.5ケ月程度で保険金を受け取った。
「すごい早さでしたね。おかげで、廃棄になった商品をすぐに買い足せた。とくに大量の商品を前払いで予約されていたお客さまもいらっしゃったので、商品を期限内に納められないと会社の信用に関わります。保険金の支払いが早かったことで損失をすぐに補填できたのはもちろん、事業を中断することなく、お客さまに品物をお届けできました」
災害の時代に「安心」を持てる仕組み
被災後、金井さんは天気予報に敏感になった。線状降水帯が発生したというニュースが出れば、安全のために社員は自宅作業に切り替え、浸水を見張るべく所長のみが出勤したり、新たな買い入れを延期して極力倉庫の中の在庫量を減らしたりする対策を講じている。
会社を取り巻くリスクは災害だけではない。事業リスクや事故リスク、社員の健康リスクについても「多様な脅威に向けて備えるべき時が来たのだろう」と思って検討を始めているという。
3度の被災を乗り越えて、必要なこと、なすべきことがはっきり見えたと言う金井さん。繰り返し口にするのは地域への感謝の言葉だった。
「苦しいことがあるたびに、いつも周りの方々に助けていただきながらやってきました。だから、これからも地域のために尽くしながら商いを続けたい。そのために保険は欠かせない支えだと実感しています。私たちの夢は、農家さんに利益が今以上にきちんと還元されるシステムを作ること。それがきっと日本をもっと元気にすることにつながっていくと思いますから」
記事に紹介されている保険商品(国内物流総合運送保険)の補償範囲などは、ご契約の内容によります。詳細につきましては、パンフレット等をご覧いただくか、取扱代理店・扱者または弊社にお問い合わせください。
<プロフィール>
金井 正和(かない まさかず)
1951年(昭和26年)創業の農業資材販売会社「金井商会」の3代目代表。愛媛県松山市を拠点に、農薬・肥料・農業用フィルムなどを扱い、県内農家の営農を支えている。近年は、高齢化や人材不足に悩む農家に向けたヘリコプターによる農薬散布など、新たなテクノロジーを駆使した事業にも携わる。
岩田 博史(いわた ひろし)
愛媛県松山市を拠点とする1951年創業の「グッド・チョイス愛媛」の3代目代表。AIG損保をはじめとする各社の保険に幅広く精通しており、企業の事業継続や発展を見据えながら対策を講じるリスクコンサルティングを得意とする。
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