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パンデミックとは感染症の世界的大流行のこと -
パンデミックを引き起こした感染症 -
企業がパンデミック対策をすべき理由 -
パンデミックに備えて企業ができる対策 -
パンデミックに備え、持続可能な組織力の向上を図ろう
パンデミックとは世界的な感染症の大流行のことで、企業の存続と社会の安定に大きな影響をもたらします。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行を経験したことを踏まえ、改めてパンデミックへの万全な対策を講じる必要性を感じた企業も多いのではないでしょうか。
ここでは、パンデミックの意味や過去に流行した感染症のほか、企業がパンデミック対策をするメリットと具体的な対策について解説します。
パンデミックとは感染症の世界的大流行のこと
パンデミックとは、世界規模で広がる感染症の大流行のことです。
2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の世界的流行がまさにパンデミックに該当します。新型コロナウイルス感染症の原因となるウイルスが、人の世界に存在しなかったため、ほとんどの人が免疫を持っていませんでした。そのため、人から人へと感染し、世界中で病気が広がったのです。
WHO(世界保健機関)では、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの経験を経て、「パンデミック緊急事態」を規定しました。パンデミック緊急事態とは、世界的な感染症の流行を最大限防止できるよう、WHOが発令を可能とする規定のことです。
パンデミック緊急事態の内容は下記のとおりです。
<パンデミック緊急事態>
・感染が地理的な広い範囲に拡大している
・各国の医療システムが対応しきれない、またはその危険性が高い
・国際的な移動や貿易に影響し、社会や経済に大きな打撃を与える可能性がある
・国際的な協力が必要不可欠である
このような状況では、一国だけでは対応が困難であり、世界中の国々が協力して対策を講じる必要があります。
パンデミックは人々の日常生活を大きく変える可能性がある深刻な事態ですが、個人や企業をはじめとする国際社会全体が協力して取り組むことで、その影響を最小限に抑えることができるのです。
パンデミックを引き起こした感染症
人類は有史以前から感染症と戦ってきました。過去にパンデミックを引き起こした感染症にはどのようなものがあるのか、確認してみましょう。
■パンデミックを起こした感染症とその特徴
感染症 |
特徴 |
病原体 |
天然痘 |
紀元前から人類を苦しめてきた感染症。伝染力が非常に強く、致死率も高かった。1980年にWHOによって世界根絶宣言がなされるまで、世界中で大規模な流行を繰り返した。 |
天然痘ウイルス
|
ペスト |
中世ヨーロッパで「黒死病」として知られ、14世紀には人口の4分の1を失わせるほどの大流行を引き起こした。現代でも流行がみられる国があり、毎年2,000人程度の患者が報告されている。 |
ペスト菌 |
コレラ |
19世紀以降、7回のパンデミックを引き起こした。現在も流行が続いており、WHOに報告される年間患者数は20万~30万人に上る。 |
コレラ菌 |
新型インフルエンザ |
20世紀以降、1918年のスペインかぜ、1957年のアジアかぜ、1968年の香港型、2009年の新型インフルエンザなど、数回の世界的大流行を引き起こしている。 |
インフルエンザウイルス |
新興感染症 |
最近(1990年代ごろから)になって新しく認識された感染症を指す。SARS(重症急性呼吸器症候群)、ウエストナイル熱、エボラ出血熱、クリプトスポリジウム症、クリミア・コンゴ出血熱、後天性免疫不全症候群(HIV/AIDS)などが含まれる。 |
SARSコロナウイルス、ウエストナイルウイルス、エボラウイルスなど |
再興感染症 |
一度は制圧されたと考えられていたが、再び流行している感染症を指す。結核、マラリア、デング熱などが該当し、抗生物質耐性菌の出現なども含まれる。 |
結核菌、マラリア原虫、デングウイルスなど |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19) |
2020年にWHOによってパンデミックが宣言された、急性呼吸器症候群(宣言は2023年に解除)。世界中で急速に拡大し、社会経済に大きな影響を与えた。変異株によって現在も流行を繰り返している。 |
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2) |
企業がパンデミック対策をすべき理由
パンデミック対策は、社会全体の安定を守るために欠かせない取り組みです。企業がパンデミック対策をすべき理由について、具体的に解説します。
感染症の被害拡大を抑えられる
企業は多くの人が集まる場所であるため、適切なパンデミック対策を講じることで感染のリスクを大幅に低減させることができます。
マスク着用や手指消毒の徹底、オフィス空間の換気、テレワークの導入といった感染防止策は、従業員やその家族、さらには地域社会全体の安全性を高めるのに効果的です。
企業の社会的責任を果たせる
パンデミック対策を行うことで、企業は社会に対して責任を果たしつつ、結果的に事業の継続も確保することができます。雇用の維持や地域経済への貢献につながるため、企業の社会的な責任は大きく、パンデミック対策によって事業を継続していくことは非常に重要です。
企業が安定的に事業を続けられれば、結果的に自社の経済的損失を抑える効果も期待できます。
従業員の健康を守ることで社会的信頼が高まる
企業がパンデミック対策に取り組み従業員の健康を守ることで、社会的信頼が高まります。
従業員の健康を守る取り組みは、単なる福利厚生ではなく、企業が人材を重要な資本と見なし、投資を惜しまない姿勢の表れです。こうした姿勢は、人的資本経営の実践として従業員の安心感を生み、企業への信頼を高めるだけでなく、取引先や投資家からも評価されます。
リスク管理能力が向上しほかの災害にも備えられる
パンデミック対策の実施により、リスク管理能力が向上し、パンデミック以外の災害に対しても強い企業になります。
パンデミック対策の設計と実施のプロセスは、地震や台風などの自然災害や気候変動といった、企業の事業継続性に影響する危機への対応力も同時に高めることにつながるでしょう。
社会全体の利便性が向上する
パンデミック対策を通じて得られる知識や技術は、社会の新たなニーズに応えるビジネス機会を生むことがあります。非接触型サービスの展開や、新しい働き方に対応するサービスの開発は、社会全体の利便性が向上する可能性があり、企業の成長にも貢献します。
パンデミックに備えて企業ができる対策
企業がパンデミックに対して、強い組織をつくるには何をすべきなのでしょうか。パンデミックに備えて、企業ができる対策を解説します。
事業継続力強化計画(BCP2.0)の策定
強い組織づくりにまず必要なのは、パンデミックを想定した事業継続力強化計画(BCP2.0)の策定です。
事業継続力強化計画(BCP2.0)は、災害時における事業継続のための計画であり、従業員の安全確保や事業の早期復旧を目指す計画のことです。事業継続力強化計画(BCP2.0)は従来の事業継続計画(BCP1.0)とは異なり、計画づくりよりも事業継続力の獲得と継続的な改善が重視されます。
事業継続力強化計画(BCP2.0)を策定しておくことで、パンデミックの発生時には、状況に応じて計画を柔軟に調整し、事業の早期復旧を目指すことが可能となります。
事業継続力強化計画(BCP2.0)などについては、こちらの記事をご覧ください。
感染防止対策マニュアルの作成
コロナ禍における経験を活かしつつ、感染防止対策マニュアルを作成します。
なお、パンデミックの兆しが見える前から、従業員の健康管理(検温、体調チェック)や手洗い、消毒の徹底、社内の換気対策といったことは、日常的に行うことが大切です。
また、コロナ禍ではワクチン接種が可能な医療機関の確保が課題でした。事前に、有事の際には従業員のワクチン接種ができるように医療機関との提携を行うといった対策も行い、マニュアルに記載しておきましょう。
<感染防止対策マニュアルの主な内容>
・従業員の健康管理(検温、体調チェック)
・マスク着用、手洗い、消毒の徹底
・社内の換気対策
・接触、飛沫感染対策
・感染者や濃厚接触者が出た場合の対応手順
・ワクチン接種ができる提携医療機関のリスト
テレワークなど柔軟な勤務体制の導入
感染リスクを低減し、パンデミックに強い組織づくりに有効なのが、テレワークやフレックスタイム制の導入です。
なお、柔軟な勤務体制の導入は、パンデミック対策のほかにも従業員のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上にもつながります。
<柔軟な勤務体制の例>
・テレワーク環境の整備(必要な機器、セキュリティ対策)
・フレックスタイム制の導入
・時差出勤の推奨
・オンライン会議システムやチャットツールの活用
・業務のデジタル化・ペーパーレス化の推進
感染症に関する社内教育の徹底
従業員のパンデミックに対する意識を向上させるため、社内教育を実施することも強い組織づくりにつながります。
パンデミックについての教育や、策定した事業継続力強化計画(BCP2.0)の内容と各自の役割を周知し、感染防止対策マニュアルの遵守も行いましょう。
パンデミック対策の社員教育は、従業員だけでなく、その家族や地域全体を守ることにつながり、地球規模でのパンデミック防止につながると意識させることが大切です。
パンデミックに備え、持続可能な組織力の向上を図ろう
世界的な感染症の大流行であるパンデミックは、起きてしまうと社会の安定と企業の存続に大きな影響を与えます。
企業が事前にパンデミック対策をしておくことで、感染症の流行が見られたとしても、被害拡大を抑えられ、事業の継続にもつながります。また、パンデミック対策によりリスク管理力が向上し、ほかの災害に対しても強い企業として、社会貢献できるようになるでしょう。
感染症を完全に防ぐことは困難です。いつ、また新型コロナウイルス感染症の流行のような事態が起きるとも限りません。事業を継続していくために、企業ができるパンデミック対策を実施し、持続可能な組織力の向上を図ることをおすすめします。
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