1 はじめに

 これから夏本番を迎えるにあたり、注意したい労災のひとつとして、熱中症が挙げられます。

屋外作業はもちろんですが、屋内でも発症する可能性があるため、オフィスワークであってもきちんと予防策を実施することが大切です。また、万が一従業員が熱中症になってしまったときのためにも、応急処置の方法を社内で共有しておくことをおすすめします。

ここでは、熱中症予防や応急処置のポイントに加えて、労働環境の指針である「暑さ指数(WBGT)」について解説します。

2 職場における熱中症死傷者数

 厚生労働省の調査によると、2018年の職場における熱中症死傷者数の速報値は1,128人で、うち29人が死亡という結果になっています。

厚生労働省の「第13次労働災害防止計画」では、職場での熱中症の予防について「2018年から2022年までの5年間で(それまでの5年間と比較して)死亡者数を5%以上減少させる」ことを目標にしています。

※出典:厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン(職場における熱中症予防対策)」

3 熱中症予防の基本

 職場における熱中症予防のためには、社内全体で正しい知識共有すること、そして従業員それぞれが体調管理を意識し、周囲にも配慮することが大切です。

ここでは、熱中症対策の基本事項をまとめましたので、社内での注意喚起にご活用ください。

暑さを避ける

熱中症は、体内に熱がこもった状態です。これは高温多湿な環境下で、体内の水分・塩分のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなってしまうことで起こります。そこで、屋内・屋外どちらにおいても、暑さをできるだけ避けることが、予防のための最優先事項といえるでしょう。

 

 <屋内の場合>

・扇風機やエアコンで室温を調節する

・室温をこまめに確認する

・遮光カーテンを利用する

 

<屋外の場合>

・外出時や屋外作業では日傘や帽子を着用する

・日陰や涼しい場所でこまめに休憩をとる

・気温が高くなる時間帯の外出を極力避ける

 

<体の蓄熱を避けるためのコツ>

・通気性の良い衣服を着用する(吸湿性・速乾性のある素材など)

・保冷剤や氷、冷やしタオルなどを活用する

こまめな水分補給

大量に汗をかく夏場は、のどが渇いていなくても、こまめな水分補給を行うことが重要です。屋外作業のように大量に発汗する可能性が高い場所では、経口補水液などの塩分を含んだ物をとるようにしましょう。

節電を意識するあまり、熱中症予防を忘れないよう注意

企業によっては、節電対策を実施しているところもあると思います。ただし、節電を意識するあまり、熱中症リスクを高めてしまうことは非常に危険です。気温や湿度が高い日は、冷房や扇風機を使って、きちんと熱中症予防を行いましょう。

4 熱中症の疑いがある従業員がいた場合

 従業員が熱中症またはそれに近い症状を引き起こし、呼びかけに反応しないといった場合は、すぐに救急車を呼びましょう。

呼びかけに反応した場合は、すみやかに「涼しい場所へ移動する」「体を冷やす」「水分補給する」といった応急処置を行うことが重要です。体を冷やす際は、首回りや脇の下、足の付け根などを重点的に冷やしましょう。

ですが、呼びかけに反応するものの、自力で水が飲めなかったり、症状が良くならなかったりするようなら、医療機関での診察が必要です。現場にいた従業員を同行させて、治療に向かいましょう。

5 労働環境の指針にもなる「暑さ指数(WBGT)」とは?

 「暑さ指数(WBGT)」は、外気と人体との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、熱中症の予防を目的に1954年に米国で提案されました。WBGTは、Wet Bulb Globe Temperatureの頭文字を取ったものです。「日光」「日射などの熱環境」「気温」の3つの要素を取り入れており、日常生活や労働環境の指針にも活用されています。ここでは、WBGTについて詳しくご紹介しましょう。

日常生活に関する指針

 WBGTの単位は、気温と同じく「摂氏度(℃)」ですが、気温とは異なる値として取り扱われています。環境省の「熱中症予防情報サイト」では、WBGTに基づいた日常生活に関する指針について、次のように紹介しています。

 

・危険:WBGTが31℃以上(参考気温35℃以上)

あらゆる生活活動で熱中症発症の危険度が高い状態です。高齢者の場合は安静な状態でも熱中症になるリスクが高いといわれています。外出は極力避けて、涼しい屋内で過ごすことが推奨されている値です。

 

・厳重警戒:WBGTが28℃以上31℃未満(参考気温31~35℃以上)

こちらも、熱中症発症の危険度が高い状態です。外出時は炎天下を避けて行動し、屋内にいる場合でも室温上昇に注意しましょう。

 

・警戒:WBGTが25℃以上28℃未満(参考気温28~31℃以上)

運動や、激しい作業などに取り組む場合、熱中症を発症するリスクが高くなります。作業時はこまめに休憩をとりましょう。

 

・注意:WBGTが25℃未満(参考気温24~28℃以上)

一般的に熱中症のリスクは低いですが、激しい運動や重労働を行うと発症する危険性があります。

 

※出典:環境省「熱中症予防情報サイト」

身体作業強度等に応じたWBGT基準値

 厚生労働省のパンフレット「熱中症を防ごう!」では、「身体作業強度(代謝率レベル)等に応じたWBGT基準値」が掲載されています。作業内容に対してそのときのWBGTが高い場合は、冷房などを用いて、作業場のWBGTを下げる必要があります。また、身体作業強度の低い作業内容に変更することを検討すべきケースも出てくるでしょう。屋外作業の従業員がいる場合は、こちらも参考にすることをおすすめします。

なお、ここで注意したいのは、普段の業務内容により「熱に順化している人」と「熱に順化していない人」では、後者のほうが低いWBGTでも熱中症リスクが高くなるということです。そのため、作業者それぞれの暑さに対する慣れや体調に配慮した作業内容にするということも、熱中症予防のポイントといえるでしょう。

 

※出典:厚生労働省「熱中症を防ごう!」

6 おわりに

 熱中症は体調不良に陥るだけにとどまらず、場合によっては死亡のリスクもあるものです。

本格的な暑さを迎える前に、改めて社内で熱中症のリスクと具体的な予防法について共有し、発症リスクを最小限にとどめるための取組みを実施することをおすすめします。

MKT-2019-503

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