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ひょうが降ったらどうする? 外出時や運転時の正しい対処法 -
たった一度のひょう災で…予想を超える損害 -
雨や雷はあるのに…天気予報に「ひょう」がない理由 -
「気象×保険」の異業種コラボから生まれた最新の降ひょう予測 -
降ひょうリスク予報サービスの開始
氷の塊が空から降ってくる「ひょう(雹)」。2024年4月、兵庫県姫路市で直径1〜2cmのひょうが大量に降り、車や建物の屋根がへこんだり窓ガラスが割れたりするなど多くの被害が出ました。
また、過去にはひょうに当たった人が死亡する事故も起きているほか、企業にとって大きな損害をもたらすケースもあります。今回は意外と知らないひょう災リスク、降ひょう時の対処法、最新の予報サービスなど、大事な命と財産を守るために必ず知っておきたいことを解説します。
ひょうが降ったらどうする? 外出時や運転時の正しい対処法
雷雨や強風をともない、叩きつけるように落ちてくる「ひょう」。発生のメカニズムは、積乱雲が上空で発達する際に水の粒も一緒に巻き上げられて冷やされ、重力で落ちては上昇気流によって再び上昇、こうした上下運動を繰り返すうちに水の粒は氷塊になり、やがて地上へ落下してくるというものです。
天気予報専門メディア「tenki.jp (テンキ・ジェイピー)」などを運営する日本気象協会(以下、JWA)関西支社社会・防災事業課の大野梨野花さんによれば、「過去には、関東や東北などの内陸部を中心に、北海道から沖縄まで全国的に降っています。時期としては春・夏・秋に多いのですが、冬も降るなど季節を問いません」。大野さんにひょうの「前兆」と「対処法」をお聞きしました。
<ひょうが降る前兆>
・急に真っ黒な雲が近づいてくる
・雷鳴が聞こえる
・稲光(いなびかり)が見える など
「天気予報で『大気の状態が不安定』『天気の急変』という言葉が出る場合は、ひょうが降る可能性が高くなります。また、気象庁の『雷注意報』は、ひょうが降る可能性があるときにも発表されます。雷注意報が出た際は、落雷とともに、ひょうにも十分気をつけてください」(JWA・大野さん)
ひょうの落下速度は、ゴルフボール大で時速約100km、野球ボール大で時速約140kmにもなるといい、当たった人が死亡したり重傷を負ったりするなどの事故も起きています。
「ひょうなんてめったに降らないという印象がありますが、近年は異常気象によってひょうの発生源となる積乱雲が発達しやすく、大雨や雷の回数が増えている地域もあるとの研究報告もあります。ひょうの発生リスクは昔よりも増していると言えるかもしれません。今後も警戒が必要です。」(JWA・大野さん)
<屋外にいる時の対処法>
・頑丈な屋根のある建物に避難しましょう。
・避難時は、カバンや上着、帽子などで頭を守りましょう。
・落雷する危険があるため、木の下や軒下への避難は避けましょう。
・豪雨をともなう場合は、アンダーパスのように冠水の危険がある道路は避けて避難しましょう。車での避難時も同様です。
<屋内にいる時の対処法>
・窓ガラスの破損に備え、シャッターなどを閉めましょう。ブラインドやカーテンを閉めることで窓ガラスが割れた場合でも飛び散るのを防げます。
・ひょうが降っている間は窓から離れてください。
<運転時の対処法>
・大型ショッピングセンターなどにある屋根のある駐車場、もしくは地下の駐車場に避難しましょう。
・近くに適した駐車場がない場合は、路肩など安全な場所に停車しましょう。車の走行中にひょうで窓ガラスが割れたら、二次災害が発生する恐れがあります。
たった一度のひょう災で…予想を超える損害
ひょうは、降り始めてから10分以内に止むことがほとんどです。しかし、短時間にもかかわらず、地震や台風などと同様、車や建物といった財産に大きなダメージを残すこともあります。
冒頭に紹介した姫路市のひょう災で、AIG損保では約20億円の自動車保険金支払が確認されました(2025年3月時点)。
「自動車はボディーの広範囲に損害が及んだり、フロントガラスが割れたりして高額な修理費用が発生しがちです」
同社の自動車保険部部長の錦部賢史(にしきべ・まさふみ)はこう話します。
「車の屋根(ルーフ)がひょうに打たれて凹みが広範囲に及ぶと、多くのケースは屋根ごと取り替えなければならない被害になってしまいます。お車全体の大掛かりな修理が必要になるとともに、長期間大切なお車を使えなくなってしまいます。」(AIG損保・錦部)
ひょうから車を守るには、カーポートなど車を守るための屋根を設置する、もしくは普段から屋内に駐車しておけると安心です。必要に応じて、ひょう対策カーボディーカバーなどの活用も検討しましょう。
また、修理代への備えも欠かせません。加入している保険の補償内容を確認しておきましょう。車に関しては、自動車保険の「ひょう等の天災による車の損害」への対応可否について、建物に関しては火災保険の補償内容の確認が必要です。
雨や雷はあるのに…天気予報に「ひょう」がない理由
こうした事前の備えは大切ですが、ビジネスの現場では、ひょうがいつどこで降るのかも具体的に知りたいところ。「雨のように、ひょうも予報を出してくれたらいいのに…」と思いませんか。
実際、降ひょう被害を防ぐためには事前の察知が欠かせません。
「降ひょうリスクがあらかじめ分かれば、社用車を安全な場所に移動したり、営業先までの道で降りそうなエリアを迂回したり、出かける従業員の皆さんに、『雷や大雨と同時にひょうが降るかもしれないから気をつけて』と注意を呼びかけるなどの対策を検討することができます」(AIG損保・錦部)
しかし、ひょうは雨などと異なり発生実態の把握ができているケースが少なく、観測所が国内2カ所に限られていることなどから、これまで予測のスキームがありませんでした。
「社会課題の解決は、保険会社の使命のひとつ。降ひょう予測は、お客さまにとって、また社会にとって必ず大きなメリットになるはず」(AIG損保・錦部)として、AIG損保は課題解決に向けて動き出しました。
「気象×保険」の異業種コラボから生まれた最新の降ひょう予測
2024年5月、AIG損保では「降ひょうリスク予防サービス」の開発チームが発足しました。同年6月にはJWAとの共同研究をスタートしました。
JWA関西支社社会・防災事業課の技師としてプロジェクトに携わった井上年司さんは、「業界でも難易度が高いことで知られる『降ひょう予測』です。私たちにとっても大きな挑戦になりました」と当時を振り返ります。
「問題は降ひょうのデータが少ないことでしたが、AIG損保さんが蓄積されていた事故データが実態解明の大きな手がかりになりました。お客さまの個人情報が含まれない、ひょうの降った日付、地点、被害の規模などが克明に記されたデータをもらえたことで、ひょうの具体的な情報を掴むことができたのです」(JWA・井上さん)
JWAは、海外の気象データや論文なども併せて研究を進め、ひょうが発生する予兆を捉える新スキームの開発に成功しました。さらに、「早くわかったほうが対策の選択肢が増える」との思いから、これまでにない「最大18時間前」という長期スパンでの予測を可能にしました。
「ひょうが降る直前に出す予報に比べれば、予測精度に違いが生じるかもしれません。ただし、いち早くリスクを知ることで、従業員やお客さま、そして会社の資産を守るなど、時間に余裕をもってアクシデントに備えることができます」(AIG損保・錦部)
降ひょうリスク予報サービスの開始
AIG損保では、2025年4月より、降ひょうリスク予報サービス「未来の雹(あしたのひょう)」の提供を開始しました。このサービスでは、ひょう発生の最大15時間前※1に降ひょうリスクをメールにてお知らせする「降ひょうアラート」※2の他、降ひょうリスク発生時間帯やエリアを専用の「Webサイト」※3上に公開しています。
JWA関西支社副支社長の須藤哲寛さんは、「まずはひょうについて知ってもらうことが大切だと考えています。そして、『未来の雹(あしたのひょう)』サービスを通じて、リスクに気付き、対策に向けて行動に移していただくことで結果的にひょう災に遭う方を一人でも減らしていけたら嬉しいです」と述べています。
AIG損保およびJWAは、今後は降ひょう結果の検証を進め、新たなデータを蓄積することでさらなる予測精度の向上を見込んでいます。
「たった一度のひょう災が、大きなダメージとなって企業の事業継続を脅かすケースも考えられます。防災に対する私たちの強い思いを、JWAの協力を得て形にできたのが、この降ひょうリスク予報サービス『未来の雹(あしたのひょう)』です。ご自身はもちろん、企業にとって大切な「ヒト」や「モノ」をしっかりと守るために、ぜひご活用ください」(AIG損保・錦部)
※1 最大18時間前の「予測」、最大15時間前の「通知」が可能になります。
※2 降ひょうアラートは、AIG取扱代理店・扱者を通じて、AIG損保「中小企業さま向けメールマガジン」へご登録いただいているお客さまへご提供します。
※3 WebサイトURL https://ashita-no-hyou.jwa.or.jp
■ 降ひょうリスク予報サービスについて
「未来の雹(あしたのひょう)」降ひょうアラート配信を希望される場合は、取扱代理店・扱者またはAIG損保にお問い合わせください。
取材協力: 一般財団法人日本気象協会
左:大野 梨野花(日本気象協会 関西支社 社会・防災事業課)
データ解析を軸に降ひょう予測開発に携わるほか、鉄道向けにAIを活用した気象予測の提案や、防災機関向けに津波シミュレーション解析を実施するなど、分野を問わず幅広い業務を担当。
中:須藤 哲寛(日本気象協会 関西支社 副支社長)
北海道にて雪に関する業務に従事後、東京で気象レーダによる雨・雪の観測技術開発を担当。現在は、道路などインフラ向けの事業を統括する傍ら、民間企業にも幅広く気象データを活用してもらうプロジェクトを推進中。
右:井上 年司(日本気象協会 関西支社 社会・防災事業課)
官公庁、自治体、民間企業等への営業活動を担当。防災関連イベントをきっかけにAIG損保との接点・取引を開始。
MKT-2025-507
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