-
気象災害とは大雨、台風などの気象現象によって引き起こされる自然災害のこと -
気象災害の頻発・激甚化が進んでいる -
気象災害の要因 -
気象災害に備えて企業ができる対策 -
気象災害への理解を深め、継続的な災害対策を実施しよう
気象災害は、台風や洪水などで毎年のように日本各地で大きな被害をもたらす自然災害です。災害が発生してから対応をしていたのでは間に合わず、事前の十分な備えとリスクを想定した計画が必要となります。
ここでは、大雨、台風、洪水などで発生する気象災害に対して、企業ができる備えについて解説します。
気象災害とは大雨、台風などの気象現象によって引き起こされる自然災害のこと
気象災害とは、大雨、台風、竜巻などの気象現象によって引き起こされる自然災害を指します。気象災害には大雨害や風害のほか、干ばつ(干害)、雪害、冷害、日照不足害などがあります。気象災害は、特定の自然災害について発生しやすい地域や季節があるのが特徴です。
気象災害の規模が大きくなると、生活はもとより事業活動も大きな影響を受けます。例えば交通網が遮断されて物資の供給が滞り生産が停止する、インフラの破損や停電によって事業継続が困難になるといったケースが考えられます。
出典:「気象災害に関する用語」(気象庁)
気象災害の頻発・激甚化が進んでいる
世界気象機関(WMO)によると、世界各地の暴風雨や洪水、干ばつといった気象災害の発生件数は、1970年から2019年の50年間で5倍に増加し、頻発・激甚化しています。
出典:「WMO Atlas of Mortality and Economic Losses from Weather, Climate and Water Extremes (1970–2019)」(World Meteorological Organization)
日本でも近年、大雨や短時間強雨(集中豪雨)の年間発生回数は増加傾向です。
例えば、気象庁の統計によると、統計期間の最初の10年間(1976~1985年)から、直近の10年間(2014~2023年)で1日分の降水量(日降水量)が200mm以上となった年間日数が約1.6倍に増加しています。同じく、1時間の降水量が50mm以上となる短時間強雨も、約1.5倍です。
■日降水量が200mm以上の年間日数(全国)
■1時間降水量が50mm以上の年間発生回数(全国)
画像引用:「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」(気象庁)
※棒グラフ(緑)は各年の年間発生回数(全国のアメダスによる観測値を1,300地点あたりに換算した値)を示しています。折れ線(青)は5年移動平均値、直線(赤)は長期変化傾向(この期間の平均的な変化傾向)を示しています。
こうした気象災害の頻発・激甚化の傾向は、気候変動や地球温暖化が影響していると考えられています。異常気象といわれる現象が世界規模で継続的に起こり、気象災害の頻度と規模が増大して、被害も拡大しているのです。
一方で、大雨や台風、洪水といった気象災害は、気象庁や民間気象事業者(予報業務許可事業者)の予報サービスが詳細化・充実化してきており、地震災害に比べて予測情報を得られやすくなっています。だからこそ、企業は被害を抑えるために必要な情報を収集し、適切な備えや行動をすることが重要です。
予報サービス:「全国の防災情報」(気象庁)
気象災害の要因
気象災害にはさまざまな要因があります。ここでは、広範囲で被害を受けやすい代表的な5種類の要因を紹介します。
大雨
大雨は、災害が発生するおそれのある雨のことです。大雨による災害が予想されるときは大雨注意報や大雨警報が発表されます。
近年では、「線状降水帯」という言葉もよく耳にするようになっています。線状降水帯は、次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなし、線状に伸びて広範囲に大雨が降る雨域のことです。線状降水帯の範囲は長さ50~300km程度、幅20~50km程度におよび、数時間にわたってほぼ同じ場所に大雨をもたらします。
線状降水帯が発生すると、土砂災害や洪水の危険性が急激に高まり命に危険が及ぶため、厳重な警戒と安全確保のための行動を取る必要があります。
台風
台風は、東経180度より西の北西太平洋および南シナ海に存在する熱帯低気圧が発達し、最大風速が毎秒約17m
以上になったものを指します。毎年7月から10月頃、日本に接近・上陸することが多く、暴風を伴う大雨や洪水などの被害をもたらします。台風の進路は太平洋高気圧の影響で決まることが多く、沖縄や九州、四国などの南西部の地域は、特に被害を受けやすいため注意が必要です。
洪水
洪水は、河川の水位が急激に上昇することで、水が堤防を越え出るなどして氾濫し、周囲の土地を水浸しにする現象です。大雨や雪解けが原因となり、量が増した水が堤防を越えたり、激しい水の力に堤防が耐えきれずに決壊したりすることで発生します。堤防の決壊が起こると、広範囲で住宅地や農地が浸水する可能性が高くなります。
なお、河川の水が堤防を越え出る現象は外水氾濫とも呼ばれます。これに対し、市街地に降った雨量が下水道や排水路などの排水能力を超えるなどして下水道・用水路・マンホール・小川などから水があふれ出す現象は内水氾濫です。外水氾濫と同様、大規模な内水氾濫も、各地に大きな被害をもたらします。
高潮
高潮は、台風や低気圧の影響で海面の高さ(潮位)が平常よりも上昇する現象です。高潮が発生すると、海水が堤防を越えて後背地が浸水する、あるいは河川を遡上して氾濫するなどして、大きな被害をもたらすことがあります。
災害をもたらす高潮は台風によって発生する可能性が高く、特に南に向かって開いた水深が浅めで奥深い湾は警戒が必要です。東京湾、伊勢湾、大阪湾、有明海といった湾奥は、高潮の起こりやすい条件を備えているため、浸水の危険域が広く、この近辺にオフィスなどがある場合は特に注意しましょう。
竜巻
竜巻は、発達した積乱雲によって発生する、高速な渦巻き状の上昇気流です。現象自体は小規模に見えても、非常に強い破壊力を持ち、進行方向にあるものを吸い上げて破壊します。竜巻によって家屋の屋根や2階部分が飛ばされたり、車が持ち上げられたりすることもあり、非常に危険です。
日本において竜巻は、台風や低気圧などに伴い、季節を問わず発生していますが、特に積乱雲が発生しやすい夏から秋にかけて発生件数が増える傾向にあります。
気象災害に備えて企業ができる対策
企業は気象災害に対してどのような準備をしておくべきなのでしょうか。気象災害に備えて、企業ができる対策を解説します。
■気象災害に備えて企業ができる主な対策
ハザードマップの確認
気象災害が起こる前に企業が備えるべきこととしてまず重要なのは、事業所が位置する地域のハザードマップを確認し、台風や洪水時のリスクや被害を想定して把握しておくことです。
避難路や避難所の位置をチェックし、従業員に情報を共有するようにしましょう。ハザードマップを活用することで、どの地域がどのようなリスクにさらされるのかを事前に理解し、適切な対策を講じることができます。
ハザードマップポータルサイトについてはこちらご参照ください
「ハザードマップポータルサイト」(国土交通省)
災害情報に基づいた行動ガイドラインづくり
災害情報にもとづいた行動ガイドラインをつくります。従業員が、事業者からの指示を仰がなくてもみずから行動できるようにするガイドラインです。例えば、災害情報にもとづく出社の中止、早期退社、車の運転禁止などの策定が考えられます。
このガイドラインにより、災害発生時に従業員は迅速かつ適切な対応が可能となります。災害時の行動基準を明確にすることで、従業員の混乱を最小限に抑えられるでしょう。
従業員の安全対策
ハザードマップの確認や行動ガイドラインと併せて、従業員の安全対策を施します。具体的には、安否確認を行うための連絡方法の確立や、オフィスからの避難場所と経路の確認、非常用品の備蓄などです。
安否確認は、緊急時に情報共有ができるシステムの構築を行い、従業員が使えるようにしておきます。備蓄については、救急キット、懐中電灯、簡易トイレ、ブランケットなどの非常用品を準備し保管します。非常食や水は、最低でも3日分以上を用意しましょう。
防災グッズについては、こちらの記事をご覧ください。
地震で避難する際の持ち物とは?会社に備えたい防災グッズリスト
従業員の安否確認については、こちらの記事をご覧ください。
建物や設備の補強を実施
気象災害が起こる前に、企業は台風や洪水を想定し、事業所の建物や設備に被害がおよびそうな箇所を確認し、補強を行いましょう。窓の強化や防水対策、屋根の補修などにより、災害時の被害を軽減し、事業の継続性を強化することができます。
気象災害発生後は、雨や風が止むなど危険度が低下した段階で、建物や設備の安全評価を実施します。専門家による評価を受けるなどして、損傷の有無や修復の必要性についてチェックしましょう。安全が確保され次第、必要な修繕を行い、業務の再開準備を進めます。気象災害は毎年繰り返される傾向があります。災害発生後の修繕や補強が、次の気象災害への備えにつながります。
気象災害の対応策については、こちらの記事をご覧ください。
事業継続力強化計画(BCP2.0)の策定
気象災害に備えて、企業は事業継続力強化計画(BCP2.0)を策定しておくことが大切です。事業継続力強化計画(BCP2.0)は、災害時における事業継続のための計画であり、従業員の安全確保や事業の早期復旧を目指す計画のことです。事業継続力強化計画(BCP2.0)は従来の事業継続計画(BCP1.0)とは異なり、計画づくりよりも事業継続力の獲得と継続的な改善が重視されます。
事業継続力強化計画(BCP2.0)を策定しておくことで、気象災害の発生時には、状況に応じて計画を柔軟に調整し、事業の早期復旧を目指すことが可能となります。
事業継続力強化計画(BCP2.0)などについては、こちらの記事をご覧ください。
地域社会との連携強化
気象災害に備えて、企業は地域全体で支え合う連携を強化しておきましょう。
災害が起きた場合、地域内のほかの企業や組織との連携が不可欠です。災害用に備えた備蓄や機材などを、自社だけではなく地域全体でも使えるように準備します。その上で、備蓄共有や情報交換といった、相互支援を可能にする企業同士のネットワークを確立することで、災害が起きた場合に、地域全体での復興を早めることにつながります。
気象災害への理解を深め、継続的な災害対策を実施しよう
台風や洪水などの気象災害は、時として企業の事業活動に重大な影響を及ぼします。事前の備えを万全にし、事業を継続するための計画を策定することで、災害発生時に迅速で適切な対応をすることができるでしょう。
企業として平時から気象災害に対する意識を高め、継続的に計画のアップデートを図ることがポイントとなります。気象災害の理解を深め、事業継続のために企業ができる対策を確認して、継続的に災害に備えることが大切です。
<企業が行うべき安全配慮義務>
<自然災害と企業ができる備え>
地震災害とは?地震対策で企業ができる備えや災害時の対応を解説
<事業継続力強化計画(BCP2.0)について>
MKT-2024-519
「ここから変える。」メールマガジン
経営にまつわる課題、先駆者の事例などを定期的に配信しております。
ぜひ、お気軽にご登録ください。
関連記事
パンフレットのご請求はこちら
保険商品についてのご相談はこちらから。
地域別に最寄りの担当をご紹介いたします。
- おすすめ記事
- 新着記事