お客さまと保険会社とをつなぐ大切な役割を果たしている保険代理店。そのなかでも保険代理業を専業とし、保険商品のみならず、中小企業のお客さまが直面し得るさまざまなリスクのことも熟知し、ビジネスパートナーとしてサポートするのが、「プロ代理店」と呼ばれる方たちです。

本連載では、プロ代理店が中小企業の課題をどのように解決しているのか、その実例とともに紹介します。

第二回となる今回は、埼玉県朝霞市にある有限会社ジェーシーエム 代表取締役 水野秀一さんに仕事に向き合う姿勢や信念に加え、中小企業が見落としやすいリスクやその対応についても伺いました。

「顧客満足」ではなく、「顧客本位」で動く

――:水野さんが保険業界に入ったきっかけを教えてください。

先代である父親が立ち上げたジェーシーエムに跡を継ぐため入社し、保険代理業の世界に入りました。27歳の時です。当時は保険のことなど右も左もわからないというのが正直なところでしたが、先代の後ろ姿を見て、業務を体で覚えていきました。

お客さまの元へ同行し、ヒアリングや課題解決の提案などを体感しながらコンサルティングのいろはを学んでいく毎日。その中で「保険を通してお客さまを守る」という当たり前のことだけでなく、「保険以外でもお客さまのお役に立って、ともに繁栄していく」ということを先代から教えられました。この教えは今でも私の指針となっています。

 

――:さまざまなお客さまがいらっしゃると思いますが、ご相談を受ける際に心がけていることはありますか。

お客さまのお話を全身でしっかりとお聞きすることです。お客さまの様子や話しぶりなど、言外に含んだ意図を汲み取ることも意識することで、お客さまのコンディションなども把握できると感じています。さまざまなお話をしていると、お客さまの方から「こんな保険に入りたい」と希望されることもあります。

その場合「なぜ」そう思われたのか、どんな経緯で入りたいと思われたのか、より詳しく聞き取っていきます。細かなことですが、こうしてひとつずつお話を伺うことで、お客さまとの信頼関係が芽生え、ひいては多くの情報を共有することにもつながると考えています。

しかしその一方で、希望に応えるだけではリスクをカバーしきれない場合もあります。やはり万一のときに役立つのが保険の役割ですので、お客さまがそのとき希望しない補償でもお客さまにとって必要と感じたものについては、丁寧にご説明をさせていただいております。

 

数年前のことになりますが、火災保険の基本補償だけを望むお客さまが増えた時期がありました。しかし、自然災害の発生が多くなった昨今、基本補償以外の特約も必要なものが多く、「保険料が安いから」という理由で自然災害に対する特約などを外して万が一のことがあれば、それはトラブルの種にもなってしまいます。「ちゃんとその時にリスクを理解したかった」とあとでお客さまが後悔されるよりも、「あのときこの提案で入っていてよかったよ」と感謝されるような提案をしたいと考え、丁寧な説明を尽くしました。

これがジェーシーエムの掲げる、顧客満足ではなくお客さまを重要視する「顧客本位」の理念です。そのときだけの満足ではなくて、「その方にとって最適だと弊社が思えるものをしっかり提供しよう」という考え方です。この考えは今も変わっていません。お客さまに選択肢をご提示しなかったことがリスクにならないよう、常に配慮しながらお話を進めています。

「リスクに備え会社を守る」保険の役割

――:さまざまなリスクからお客さまを守るために保険があるということですが、お客さまが抱えるリスクにはどんなものがあるのでしょう?

中小企業の経営者におけるリスクとしてまず多いのが、従業員の方が仕事中にケガや病気をされた場合です。政府の労災保険によって全額医療費が給付され、療養のため休業期間中であっても80%相当の収入が補償されます。また、ケガや病気が治癒した後に後遺症が生じた場合に、年金や一時金が支給されます。

その一方でそれだけではカバーしきれない場合もあります。万一従業員が事故等で死亡し、企業や役員などが法律上の損害賠償責任を負った場合、その方がお亡くなりになったことによって喪失した命の利益、つまり「逸失利益」を遺族の方に補償しなければなりませんが、それを労災保険で全て賄えるわけではありません。

こうした仕組みには現在の労働環境における「労災は雇用者の責任」「労働者は保護されなければならない」という考え方が背景にあります。

特に事故の場合、逸失利益や慰謝料は高額化しています。それを支払えるだけの内部留保があればよいのですが、多くの企業は逸失利益のために内部留保を蓄積しているわけではないでしょう。また、補償のためにキャッシュフローが滞ったり崩れたりしてしまうと、会社の経営としても苦しくなってしまいます。その点で、AIG損保の「業務災害総合保険(ハイパー任意労災)」(https://www.aig.co.jp/sonpo/business/product/e-injuries)はこういった万一のリスクに備える保険だと言えます。
さらには、「業務災害総合保険」に付帯できる「ハイパーメディカル」※で病気入院の治療費のサポートを受けることもできます。お客さまにはこのプログラムを福利厚生として活用しましょう、とご提案しています。福利厚生の充実は、人材の確保や定着につながりますからね。

※疾病入院医療費用補償特約(拡張型)

お客さまが見落としがちなリスクを「見える化」するために

――:リスクにはお客さまが気づいていない見落としがちなものもありますよね。そういったリスクにはどうアプローチされているのでしょうか。

日々変わる情勢の中でリスクもまた変化します。その中で見落としがちなリスクを知る手がかりのひとつが、お客さまの現状を知っておくことです。といっても、ただ単にヒアリングするだけではお客さまから必要な情報が聞き出せないこともあります。そのため、弊社では「業務フロー図」の作成に力を入れています。

業務フロー図とは、簡単に言うとお客さまの資産状況や経営状況を見える化したシートのことです。会社の現状や業務の流れを直接お客さまにお伺いしながら、業務フロー図を作っていくので、お客さまと弊社で目線合わせができ、問題点が発見しやすくなるというメリットがあります。

 

実際、この業務フローが活きた事例がありました。

長年取引のある、先代からのお客さまで信頼関係も厚く何でも話してくださる間柄と思えるお客さまだったのですが、念のために、とお客さまと一緒に業務フロー図を作ったときのことです。
「この資材はこの本社の倉庫に行くんですよね?」と確認しながら作っていったのですが、「いやいや水野さん、倉庫は本社以外にももう1個あるんだよ。言ってなかったっけ?」という話になりました。

その倉庫だけは自社物件ではなく賃貸契約なので伝える必要がない、とお客さまの方で判断していたため、これまでお話に出なかったのです。しかし詳しく話を聞いてみると、賃貸契約時に、不動産業者から勧められた火災保険には加入されていましたが、その内容は、ご自身の什器備品に少し補償があるだけで、商品(半製品含む)には補償がされていなかったのです。 そこで、「国内物流総合運送保険」を提案しました。これでお客さまの資産もカバーすることができたのです。

この経験をもとに、現在ではお客さまに「御社の業務内容を一度見える化してみませんか?」と提案しています。お客さまと一緒に業務フロー図を作成し、その業務フロー図から見えた課題に対してしっかり解決を図る。課題を発見するだけではなく、課題解決の道筋まで立てるのもまた、私たちの果たすべき役割だと感じています。

 

――:ほかにも見落としがちなリスクはありますか?

ネットが発達した現代社会では、誰もが常にサイバーリスクにさらされていると言っても過言ではありません。2022年4月に個人情報保護法が改正されてから、サイバーリスクへの意識の高まりも感じます。
また、昨今ではハラスメントや不当解雇も企業の大きなリスクになりえます。こういったリスクに対応した「雇用慣行賠償責任補償」※(https://www.aig.co.jp/sonpo/lp/sme/epl)などもあります。そのため「お客さまが知っておいた方がよいリスク」に関しては、普段のお客さまとの会話の中で情報をお伝えするように心掛けています。

※業務災害総合保険(ハイパー任意労災)の特約です。

信頼関係を築き、お客さまの経営課題の解決をサポート

――:企業経営には様々なリスクがあることがわかりました。そのリスクを未然に防ぎお客さまの経営課題の解決をサポートするため、どんなことに気を付けていらっしゃいますか?

何より重視しているのは、お客さまとの信頼関係です。信頼関係を築くために欠かせないのが密なコミュニケーションです。ときに相談されるお客さまのお悩みは、実はジェーシーエムが抱えるものと同様のことも多いもの。

例えば「当社も人材確保で苦労していて……」と話すと「いや~うちも求人を出してもなかなか人が集まらなくてね……」なんて、私どもの言葉が誘い水になることもあります。そうやって、いろんな切り口からお話を引き出すことも意識しています。

ちなみに、求人をかける際のひとつの強みとして、「メディカル特約があることを福利厚生の強みにしてください」とお伝えしています。万が一の病気に備えることができますので、そこで働く方々の大きな安心感になるからです。それがひいては、入社後の居心地の良い職場環境をつくり、離職率を下げることにつながっていくと私自身体感しているからです。
「何でも話してください」というこちら側の姿勢が、お客さまの胸襟を開き、課題発見へとつながる。それがひいては、さまざまなリスクからお客さまを守ることにつながるのだと思っています。

ほかにも、弊社社員への情報共有として、トラブル事例や事故時のケーススタディ勉強会を開催したり、各保険にどんな補償がついているかを確認したりと、お客さまに万全なサポートができるよう、常に情報のアップデートを行うことにも気を配っています。

 

このようにお客さまとの信頼関係を築くため、さまざまなことに取り組んでいますが、課題もあります。そのひとつが社員における財務知識の習得です。やはり財務のことを知らなければ中小企業経営者の方々とお話することはできません。勉強会はもちろんのこと、さまざまなお客さまを通して、必要な財務知識を積み上げている状況です。今後は、財務・人事・マーケティングといったあらゆる方面で経営者の方々の相談に乗れる存在として、社員教育にも力をいれていきます。

 

――:お客さまのために様々な取り組みをされているのですね。お客さまに保険を勧める上で、AIG損保の保険を選ぶ理由、AIG損保の魅力があれば教えてください。

そうですね、やはり挙げるならお客さまとのコミュニケーション力の高さと知識量でしょうか。これは自動車保険のお話ですが、圧倒的な事故対応力を感じたことがありました。事故の査定をした時のことです。通常は弊社が間に入るのですが、それができなかったとき、AIG損保の事故担当者はいずれも丁寧でかつ安心感のある応対をしてくれました。やはり総合的に見て損害サービスの方の知識量はもちろん、コミュニケーション力や事故解決力が群を抜いていると感じますね。また、自動車保険で人身傷害保険を付けていたお客さまのお話ですが、高校生になるお子さまが自転車事故でケガをしてしまいました。自転車なのでご契約のお車に搭乗中ではないのですが、それでもケガの補償がなされました。このように、人身傷害保険の補償範囲が広いというのも魅力です。

お客さまにとっての「オンリーワンカンパニー」に

――:お客さまに寄り添うジェーシーエムの姿が見えてきました。今後、ジェーシーエムはお客さまにとってどんな存在でありたいと思われていますか?

ひと言で言うと「保険代理店以上の存在」でしょうか。
お客さまが気づいていないリスクに対して適切なアプローチをすることで「ここまで考えてくれているんだ」という保険以上の価値を提供していきたいと思っています。お客さまの事業や会社が発展し続けていく、そのサポートができたら、ジェーシーエムとしてこんなに嬉しいことはありません。

一方で、「事故を起こした際の頼れる存在」でありたいとも考えています。事故はないに越したことはありませんが、起きてしまうこともあります。そんな時にこそ、「ジェーシーエムに任せておいてよかった」と思っていただけるよう「保険の知識だけでなく、さまざまな事故対応例を知り研鑽を積んでいこう」と社員には常々伝えています。

 

――「すべてのリスクを安心に変え、独創的な発想でお客さまの輝ける明日に貢献する」を理念に掲げ「お客さまに徹底的に寄り添う」ことがお話から見えてきたのですが、それを決定づけるような出来事があったのでしょうか。

はい、お客さまと全力で向き合い、寄り添うことの大切さを痛切に感じたのが2011年3月11日の東日本大震災です。

あの地震を経験して、災害や地震に関する考え方が今までと180度変わりました。「災害に遭うのは決して特別なことではない」と認識を改め、「被災後の日常」をより具体的にイメージしたうえで、保険説明を行うようになりました。特に休業補償や利益補償といったところは被災してみて初めて分かる場合も多いもの。「被災後にはこんな補償が必要なんだ」と思わせる体験がたくさんありました。

それだけではありません。被災して、そこからどう復旧していくのか。それはお客さまの数だけ答えがあると感じました。

いつ、どこで発生してもおかしくない災害。「被災したときどうなるの?」というお客さまからの質問にこたえられるよう、より多くのリスクを知っておくことも代理店として必要ではないかと思います。

 

――最後に、今後の展望についても教えてください。

ジェーシーエムとしての展望、という観点からお話させていただくと、今後は2つの目標に向けて取り組んでいきたいと思っています。
1つが、FD宣言(フィデューシャリー・デューティー)です。FD宣言とは、「顧客本位で業務運営を行う」ための取り組みやKPIの設定などを細かく決めた方針のことです。顧客保護を最優先とし「公正かつ誠実にお客さまへ商品を提案する」というお客さまと私たちとのお約束でもあります。FD宣言を公表し、金融庁のサイトにも事業者リストとして公表されることでよりお客さまが安心して相談できると考えています。さらには私たちが体現する「顧客本位」を社内外に知らせるための有効な手段になりうると考えています。

そしてもう1つが自社ビルの建設です。社員がジェーシーエムで働くことを誇りに思えるようなランドマークを建てることができれば、従業員の満足度向上にも寄与すると考えています。

現在、中小企業を取り巻く外部環境は、数年先も読めないくらいめまぐるしく変わっています。もちろん保険業界も例外ではありません。しかし、だからこそこれまで以上にお客さまと真剣に向き合い、柔軟に対応していくために私たち自身も変化をし、保険代理店を超えた価値提供が重要になってくるのではないでしょうか。
「己の利益を追求するのではなく利他の心を持つこと。お客さま目線で物事を考えて行動すること」を繰り返し社員に伝えながら、これからもお客さまの発展に寄与し続けていきます。

水野秀一
1974年生まれ。
埼玉県新座市出身。保険業界歴21年、有限会社ジェーシーエムを先代から引き継ぎ8年。
中小企業の頼れるパートナーとして厚い信頼を得ている。

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