お客さまと保険会社とをつなぐ大切な役割を果たしている保険代理店。なかでも保険代理業を専業とし、保険商品のみならず、法人のお客さまが直面し得るさまざまなリスクのことも熟知し、ビジネスパートナーとしてサポートするのが、プロ代理店と呼ばれる方たちです。

本連載は、プロ代理店がリスクのプロフェッショナルとして、中小企業の課題をどのように解決しているのか、その実例とともに紹介します。

第一回はまず、そのリスクのプロを身近に感じていただけるよう、建設業のリスクを専門とする東京都新宿区ライフコンシェルジュ株式会社 代表取締役 山本純さんに、仕事に対する取組みやエピソードをお伺いしました。

強さの秘訣は「きく」ことから

――:保険代理店として建設業に特化していったのは何か理由がありますか。

もちろん、最初から建設業に強かったわけではありません。わたしは代理店研修生出身なのですが、入社当初は業種を絞らずに片っ端から企業訪問をしていました。でも、火災・水災といった日常への備えについてのご提案はできても、事業特有のリスクというのは複雑で多岐に渡りますので、十分に期待にお応えすることができず、ジレンマを感じていました。痒いところに手が届くような細かな提案ができない。そこにリスクを扱うものとしてもどかしさを感じていました。

そんな折、喜んでもらえるような懐が深い提案をするためには、浅く広くではなく、知識量で誰にも負けない専門分野を持てばいいのでは?と気がつきました。先輩からのアドバイスもあり、専門とする業種を建設業に絞りこむことにしました。

――:とはいえ、その業界のことを知らなければ提案するのも難しいですよね?

そうですね。そこで、まず手始めに建設業ではどんな事故が生じやすいのか、現場で使う道具は? 過去に起きた事故は? などについて実際に事業を行われている皆さまに徹底したヒアリングを行いました。時には建設現場でフィールドワークさせてもらいましたね。刑事じゃないですけど、現場の人の話には色々なリスクケアへのヒントがあって興奮したことを覚えています。こうして得た知見が、建設業の皆さまをサポートする上で非常に重要な知見となりました。

ですから、弊社の「行動指針 10ヶ条」には3つの「きく」を駆使するように、ということが含まれています。話を「聞く」、一生懸命に、感じるようになるまで「聴く」、そしてそれを元にどんどん「訊く」。駆け出しの頃の、この経験が元になって生まれた10ヶ条というわけです。

*代理店研修生
AIG損保が1964年に業界の先陣を切って開発したプロ代理店(プロフェッショナル・エージェント)の養成制度で、研修生は5年間のトレーニングと実務経験により必要な知識と営業力を身につけます。本制度開始以来、数千のプロ代理店を輩出しています。詳しくはこちらをご覧ください。

「希望」を守もるサービス

――:その後、仕事観を大きく変えるような出来事はありましたか。

はい。それは、あの東日本大震災です。2011年3月11日、私が福岡で全国区研修に参加していた時でしたね。午後2時に始まったイベントの真っ最中、東北で大地震が起きたというニュースが流れてきたことを覚えています。イベントに参加していた東北地方から来ていた何人かが、地元に電話しても通じず、テレビの映像を見て泣き崩れていました。私はすぐさまお客さまの安否確認や関係各所への手配を試みましたが、やはりなかなか連絡がつかずに苦労をしました。あらためて、大規模災害に備えた危機管理の重要性を思い知りました。
その2年後、宮城県仙台市に行く機会があったので、その際に被災地を訪れました。急ピッチで街の復興が進められていましたが、更地になっている場所も多く、被災者の方々が本来の生活を取り戻すには、もっとサポートが必要だと痛感しました。やがて、とある小学校前に差し掛かった時に、ふと笑い声が聞こえてきました。その方向に目を向けてみると、子どもたちが楽しそうに野球をしている。「辛かったはずなのに、子どもたちはなんて強いんだろう。こういう子どもたちの未来のためにできることをしよう」と、より強い責任感が湧き起こってきたことを覚えています。

万が一、あのような悲惨な災害がまた起こってしまったとしても、何としても未来の幸せや希望は守っていきたい。それが今の私を突き動かす原動力になっています。

リスクは日々変化するからこそ「きく」ことをやめない

――:保険代理店として、大切にすべきことは何ですか?

新しいリスクへの予測をしてその備えがご提案できるようにすることだと思います。危険の多い建設の現場でも、またそれを支える会社内においても、発生するリスクというのは日々変化しています。そのため、今でも日頃から社長さんたちへのヒアリングを徹底的に行うように心がけています。

皆さんのお話を伺う中で気付かされたことが、ひとつあります。建設業の経営者にとって、現場事故の怪我防止が最重要ケア事項であるのですが、意外な盲点として従業員が病気になるリスクも他の業種と同様に有り、やはりケアをする必要を感じていることです。

もし、入院が必要な病気にかかってしまうと、社員さんは治療費や休職後に復職できるのかといったお金や生活の面での不安が大きくなる。そんな社員さんの心配をしつつサポートをする社長さんにも当然負担がかかってきます。

会社にとって、従業員は人財。貴重な戦力であり、かけがえのない仲間です。そんな社員さんが安心して治療を受けられるように、また無理なく復職してもらえるようにするため、社長さんにできるのは日頃からしっかりと備えておくことだと思います。最もケアしなければいけない事故や怪我ばかりではなく、もう一方では、病気へも配慮しなくてはいけないので、建設業の社長さんは本当に大変だと思います。

いただいたつながりに感謝して業界を盛り上げていく

――:お話を伺っていると、人にフォーカスされている、ということがよくわかります。そんな山本さんは、どのように建設業界の未来にかかわっていきたいと考えているのでしょうか。

小学生男子の「将来なりたいもの」ベスト5に、今でも「大工さん」がランクインしているという調査結果があります。それぐらい、建設業というのはかっこいい職業なんですよね。ところがこれが、高校生、大学生と年齢が高くなるにつれ入ってこなくなる。それは、仕事の現場が「暑い」「寒い」「肉体的にきつい」「時間に追われる」という大変なものだとわかってくるから。

でもそういう「3K」と呼ばれる建設現場のイメージを変えていきたいと思っているんです。

最初は一人親方だったのが、稼げるようになってくると右腕を採用するようになる。独立して一人親方になるような人は、もともとオールマイティなんですが、従業員の人数が増えれば請け負える範囲も広がってきますよね。

そうして、また稼ぎが大きくなったら人に投資して……と組織を大きくして、あるところで法人化する。かっこいいうえに、成長できるストーリーが用意されているのが建設業なんです。

私にできるのは、保険によって安心して事業に専念していただくことで、その成長をサポートすることです。ほかにも社労士や税理士といったパートナーを紹介できる。そうやって一つ一つの企業の成長を支えることで業界を盛り上げていければいいなぁと感じています。

実は、私には大きな夢があります。

30才で代理店研修生になり、その後独立して今日に至るまで、ご契約いただいたみなさんと一同に会する機会がありませんでした。保険は、ゆりかごから墓場まで責任のある重い仕事です。その保険に私を通して入っていただいた感謝の気持ちを伝えたいと常に考えています。

できるのであれば、「安全協力会」と銘打って武道館のようなところを貸し切り、みなさんを集めて異業種交流会をしたいと思っています。お世話になっているみなさんに「ありがとうございます!!」という感謝の気持ちを込めて、一人一人を抱きしめたいという思いでいます。そして、集まったみなさん同士もこの機会に知り合いになっていただき、たくさんのネットワーキングをしてもらえたら、そんなに幸せなことはないと思っています。

――:最後に、中小企業の経営者の皆さんへのメッセージをいただけますか。

大企業のようにさまざまな経営課題やリスクなどをすべて自社で対応し、管理できればいいですが、なかなかそうはいきません。それに代わる方法としては、さまざまなパートナーと連携して経営していくというのがありますよね。それは業務のアウトソーシングだったり、税理士や弁護士といった専門的な仕事だったり。こういった信頼できる良いパートナーをたくさん持っている企業が強いのではないかなぁと思うんですよ。

経営者の皆さんには、「事故や病気の時だけの保険代理店」ではなく、税理士や弁護士と同じように、わたしたちプロの保険代理店が、事業のパートナーとなり得るということを知って欲しいです。

わたしたちは、保険が下りるかどうか難しいような事案や相談が来ても、紋切り型な対応はせず、「何かしらできることがあるかもしれない」と考えて、必ずお客さまのところにお伺いするようにしています。

「ビジネスライク」に終わるような付き合いではなく、お互いを思い合えるようなパートナーとして、わたしも経営者の皆さまから選ばれるように努めていきたいです。それがお互いのビジネスの発展につながるものですから。

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