いざ飲食店を開業しようと考えても、開業資金がどの程度必要なのかがわかりにくく、不安を感じる方も多いでしょう。中には資金が足りないと諦めてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、初期費用や毎月のランニングコストの目安、開業資金の調達方法についてご紹介します。資金を調達する方法は1つではありません。資金調達に悩む前に、まずは初期費用を計算して開業計画を立ててみましょう。

まずはいくらかかるのかを把握しよう

「開業資金」という言葉は「開業に向けて準備する資金」という意味で捉えがちですが、開業資金には開業後数ヶ月分の運営資金も含まれます。
開業後しばらくは客足が伸びたり遠のいたりと安定せず、収入が不安定になります。しかし食材や飲料の仕入れや家賃、経営者自身の生活費などの出費は必ず発生するため、その資金を用意しておかないと仕入れや生活ができなくなり、すぐに廃業に追い込まれてしまいます。そのため、まずは開業資金として初期費用と開業後の運営資金を用意しましょう。運営資金は約6ヶ月分が理想ですが、最低でも2~3ヶ月分を用意しておきたいところです。

それでは、初期費用から順番に解説していきましょう。
まずは店舗物件の取得費用についてです。賃貸物件を借りるためには、家賃の9ヶ月から12ヶ月分の資金を用意する必要があります。住居として賃貸物件を借りる時と同じで、店舗物件の取得費用には敷金(保証金)や礼金、仲介手数料、契約日から入居するまでの前家賃が含まれます。特に敷金は住居の場合と異なり、一般的には賃料の6~10ヶ月分を請求されます。
また、その物件を直前まで借りていた人が飲食店を経営していた場合、内装や設備(造作)がそのまま残っていることがあります。こうした物件は「居抜き物件」と呼ばれ、その状態のまま使用することが可能です。しかし、前の借主に「造作譲渡代金」を、物件紹介業者に「造作譲渡に係る手数料」をそれぞれ支払う必要があるので、資金が十分ではない場合は新しく内装工事をするのか造作を買い取るのかを慎重に決めなければなりません。

物件を取得したら、次に設備や内装を整えます。居抜き物件を契約した場合は、この費用を抑えることができます。まず内装工事は、デザインや材質などのこだわりや規模によって価格が変動しますが、一坪あたり30~60万円程度の費用を見積もっておきましょう。あまり広い店舗で凝ったデザインを発注すると内装工事だけで1,000万円を超えてしまう場合があるので、予算と折り合いをつけながら進める必要があります。
また、物件によっては外装工事を行う必要があります。特に看板の設置はほぼすべての店舗が行う工事ですし、外壁の工事をすることもあります。こちらも数十万~数百万円を用意することになります。

テーブルや椅子、ガスコンロ、冷蔵庫といった厨房設備も新品で揃えたいところですが、大きな出費となってしまうので、中古品を購入したり、リースを活用したりして負担を減らしましょう。

ここまでが初期費用です。地域や業態、店舗のコンセプトによってかかる費用が変わってきますが、一般的には1,000万円あると安心と言われています。初期費用の計算式は以下のとおりです。

初期費用=店舗物件の取得費用(家賃の9ヶ月から12ヶ月分)+設備費+内装費+外装工事費

次に毎月の運営資金の予測を立てていきます。運営資金は原材料費、人件費、諸経費、その他で成り立っています。原料費は前述した食材や飲み物の原価に加えて、テイクアウトの容器も含まれます。これらを売上の30%程度に収めると「販売価格の割に料理の見た目が悪い」という事態を避けられます。
人件費には、従業員の給与、通勤手当、福利厚生、求人費などが含まれます。求人については、正社員だけで運営しようとするとコストがかかるのでアルバイトやパートも雇用しましょう。新しく人材を採用する際は、情報誌への掲載料がかかるので注意しましょう。こちらも売上の30%程度で抑えましょう。

売上の12%程度で収めたい諸経費には、光熱費、広告費、消耗品費、事務用品費などの細かな費用が含まれます。その他の費用には家賃、高額な設備を購入した場合の減価償却費、融資を受けた場合の支払金利、個人店オーナー給与などで、売上の18%以下が理想です。

このように、コスト管理を行えば運営資金を売上の90%に収め、10%を経常利益とできる健全な運営が実現します。売上計画はホールの席数や、満席時に実際埋まっている席の割合である満席率、客単価など細かな条件から算出しますが、一番簡単な目安として月間売上高が一坪あたり8〜14万円、一席あたり5〜9万円という数値を参考にするとよいでしょう。これを元にして借りる物件の広さやメニューを決めたり、運営資金とのバランスを考えたりしましょう。売上日数と運営費は以下の式で求められます。

売上予想=席数×稼働率×1日の回転数×1ヶ月の営業日数

運営費=原材料費(売上予想の30%)+人件費(売上予想の30%)+諸経費(売上予想の12%)+その他の費用(売上予想の18%以下)

いくつもある資金調達手段

算出した開業資金を自己資金で用意できなくても開業を諦めることはありません。資金調達手段には知人から借りたり、融資を受けたりとさまざまな方法があるので、自分に合った融資を複数選んで申し込んでみましょう。

親族や友人から借りる

最も一般的な方法が、親族や友人から資金を借りる方法です。並行して融資を受ける際、親しい人から借りて自己資金を増やしておくことでより多くの融資を受けられる可能性があります。親しい人から借りるからといって口約束だけで借りることはせず、利子はつくのか、返済期限はいつなのかなどを明記した借用書を作成しましょう。
ただし、110万円以上借りた場合、利子をつけないと利子の分が贈与されたとみなされて税金が発生するので注意が必要です。また、友人から資金を借りた上で融資を受ける場合、友人の身元確認や贈与契約書を作成する必要があります。融資を受けるためだけに資金を借りて、審査が通ったらすぐ返済するという事態を防ぐため、親族以外からの資金調達には融資担当者の厳しいチェックが入ります。

日本政策金融公庫から借りる

新規開業時に利用できる融資の中で最も一般的なのが、日本政策金融公庫の融資制度です。日本政策金融公庫は国が資金を出している金融機関で、他の金融機関に比べて低金利で審査が通りやすいという特長があります。
中でもよく利用されるのが「新創業融資制度」で、新しく事業を始める方や税務申告を2期終えていない方に対して、無担保・無保証で融資を行っています。細かな条件はありますが、従業員を雇用するような開業や6年以上経験した業種と同じ業種での開業であれば、条件をほぼ満たします。

地方銀行や都市銀行から借りる

有名な制度としては他に地方銀行や都市銀行といった金融機関の保証協会付融資があり、多くの方が利用しています。大企業と比べて中小企業、個人事業主の信用は低く、そのままの状態では銀行から融資を受けにくいため、保証協会が間に入ることで信用を高めて融資を受ける方法です。
ただし、この制度は、審査結果が出るまでに時間がかかる上に、店舗の準備がすべて完了した後で発行される営業許可書を必要とすることが多いため、初期費用として利用することはできません。

補助金や助成金を活用する

融資とは少々異なりますが、国や地方自治体が運営する補助金や助成金を活用する方法もあります。新しい制度ができたり、逆にこれまであった制度がなくなったりと毎年動きがあるので、開業のタイミングに合わせて「開業 補助金 〇〇年」といったキーワードで検索する必要があります。
参考までに、平成31年度は中小企業庁が扱う創業支援等事業者補助金や、東京都が行う創業助成事業などがありました。いずれも公募期間が決まっているので見逃さないようにご注意ください。
また、求人とセットで活用できる制度としてキャリアアップ助成金があります。〇ヶ月間と期間を決めてパートやアルバイトで契約し、雇用期間終了後正社員に転換する際に利用できるものですので、正社員として雇用する前にまず試用期間を設けて様子を見たい場合に検討しましょう。

まとめ

開業するにあたって、初期費用の他に数ヶ月分の運営資金を準備しておくことが重要です。その2点を合わせて1,000万円あれば安心とされていますので、開業のハードルがとても高く感じられるかもしれません。
親族の援助や金融機関からの融資等含めて自分がいくら用意できるのか必要な開業資金と共に算出してみましょう。

 

*記載されている法令、規則等は記事作成日現在のものです。
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