飲食店を開業するにあたっては、保健所に営業許可を取ることが法律で定められています。しかし経験のない方は許可の取得がよく分からなかったり、面倒に思えてしまったりすることがあるでしょう。そこでこの記事では、飲食店を開業する予定の方向けに、申請書の種類や書き方、必要となる設備や費用、更新する場合の方法などをご紹介いたします。

飲食店営業許可取得の流れ

飲食店の開業に際しては、食品衛生法に基づく営業許可を取得しなくてはなりません。申請者は個人、法人のいずれも可能で、保健所への事前協議、書類の提出、現地調査を経て、許可証の交付に至ります。

保健所への事前相談

許可を申請する時は、事前に施設の所在地を所管する保健所に出向き、確認や相談を行いましょう。具体的には、工事が始まる前に、開業を予定している店舗の図面を持参して、店舗内の設備が基準に達しているかどうかを見てもらいます。もし直す必要があった場合は指摘に沿って修正を行います。その時点で工事が始まっていると、大きな損失を生んでしまいます。事前の相談は法的に必須というわけではありませんが、現実的なリスクを考えれば、早い段階で行うことが必要です。その際に現地の調査にかかる日程なども聞いておくとよいでしょう。

営業許可申請(書類の提出)

事前の相談で図面に問題がないことを確認したら、実際に店舗の工事を開始します。それとあわせて、必要な書類を準備・提出し、現地で調査を行う日程も確認します。
提出が間際になると、工事が完了してから調査までに日数がかかり、無駄な時間が生まれてしまうことがあります。提出から調査までは、早ければ翌日ということもありますが、1週間以上先になる場合もあります。そのため工事が終了する日から逆算して1週間〜2週間前に済ませておくと安心です。
提出する書類は下記のとおりです。

・営業許可申請書
施設の所在地を所管する保健所で用意されているものを使います。ホームページからダウンロードすることも可能です。特に難しい内容はありませんが、住所や店名などは正しい表記で記載しましょう。迷った場合は空欄にしておき、提出する際に確認してもよいでしょう。

・営業設備の大要・配置図
店舗の面積や内壁の材質などを細かく記入していきます。分からない部分については適当に書くようなことはせず、空欄にしておきます。

・地図と営業設備の配置図
店舗の所在地と図面です。書類に手書きで描いてもよいですが、既成の地図や図面を用意しても問題ありません。地図は担当者が実際に店舗に来る時に利用されますので、道順が分かれば簡略的なものでも問題ありません。

・食品衛生責任者の資格の証明
食品を扱う事業の場合、1人以上の食品衛生責任者を対象となる施設に置くことが義務付けられています。食品衛生責任者は、営業している施設から食中毒や違反を出さないよう、食品を適切に管理する役目を担います。資格を持った人がいることを証明するため、食品衛生責任者手帳等を用意します。
なお、似た資格として「食品衛生管理者」があります。食品衛生管理者は、乳製品や食品添加物の製造を行う事業所で必要とされる資格で、厚生労働省が管轄する国家資格です。

・水質検査成績書
営業に貯水槽や井戸水等を使用する場合は、水質検査の結果を証明する書類が必要です。店舗がビルに入っている場合など、水道水を一旦貯水槽(タンク)に貯めてから供給するのが一般的です。こうした場合の水質管理はビルのオーナーや管理会社の管轄ですので、希望すれば書類を入手することができます。

これらの書類を揃えた上で、手数料を払い込みます。金額は自治体ごとに設定がされています。東京都の港区の場合、営業の種類によって金額が異なりますが、主なところでは、飲食店営業16,000円、喫茶店営業9,600円、飲食店(移動・臨時)4,700円となっています。なお、営業許可は店舗の状況によって5年〜8年の有効期限があります。更新をする場合は、期限が切れる1ヶ月前から申請をすることができます。

施設を検査してもらう

工事が終了したら、図面通りに店舗が工事されているか、施設基準に合致しているかどうかの確認を受ける必要があります。その際は店舗側の責任者も立ち会い、問題がある場合はその場で指摘を受けるようにします。ここで施設基準に満たない部分が発見された場合は、必要な改善をした上で再検査を受けます。

営業許可証の交付を待つ

調査が滞りなく終わると、営業許可書が発行される予定日と引換証が担当者から渡されます。実際の交付までは1週間程度かかります。通告された予定日になったら保健所に行き、引換証と許可書を交換して受け取りましょう。

営業開始

無事に営業を開始したら、設備が当初の基準通りに維持されているかを確認し、衛生的な営業を心がけましょう。なお、廃業する場合は廃業届の提出と営業許可書の返納を保健所に行います。

設備の要件はどのようなものがある?

店舗の中に必要な設備が足りているかも、許可を受けるための大事なポイントです。そもそも飲食を扱う場所ですから、衛生的な設備は必須です。求められる設備は、自治体ごとに細かく規定がされていますが、ここではある地域を例にした代表的な設備について紹介をしていきます。

・シンク
食器の洗浄などに使う台所のシンクは、一般の家庭では1つしかありませんが、飲食店の場合の必要数は2つとされています。お湯と水の蛇口が独立して付いていることも求められます。

・手を洗う場所
手洗い場は、お客さま用と従業員用の2箇所を作り、それぞれに洗剤を入れた容器が固定されていることが求められます。

・調理場と客席エリアの区分
調理場と客席との間がドアなどで区切られており、客席エリアに食材や調理器具が置かれないようにします。ただ、客席に冷蔵庫を置き、その中に飲み物だけを入れておく場合などでは許可が下りることもあります。

・食器棚
食器などをしまう収納棚は、中に置いたものにほこりや汚れが付くことを防ぐため、何らかの扉がなくてはなりません。

その他、給湯器や調理場の材質など、設備に関しては多くの規定があります。こうした規定は自治体単位で決められており、地域の特性によっても違いがありますので、詳しくは地元の保健所に確認し、どのような準備が必要になるのかを把握するようにしてください。

人の要件は?

先程もご紹介しましたが、申請者が個人か法人かは問われませんが、施設に対して最低1人の食品衛生責任者を置くことが求められます。この責任者は専任である必要があるため、もし他の店で既に責任者として登録されている場合は、先にそちらを外しておかねばなりません。それ以外の要件に関しては、特定の条件を満たさないと許可が取れないということはありません。
ただし、次のような状況があると営業許可が取れません。それは「過去に食品衛生法違反で処分を受けた人がいる」、「飲食店の営業許可取り消しを受け、そこから2年以上経過していない」という場合です。法人で申請する場合は、役員以上がこの制限の対象になります。いずれにしても初めて飲食店をオープンするのであれば、こうした点を心配することはないでしょう。

まとめ

飲食店を開業する際に必要な申請自体はそれほど難しくはありません。しかし、提出から現地調査までの時間と、調査から実際に交付されるまでの日数が読みにくいという問題があります。書類の提出が遅れたり、内容に問題があったりすると、余計な待ち時間ができてしまいます。その結果、店舗のオープン日が遅れ、固定費などのコストが無駄にかかり、初期の経営を圧迫してしまいかねません。そうした事態を避けるため、的確なタイミングで的確な書類を提出するようにしましょう。また予定しているオープン日に間に合うかどうか、具体的に確認や相談を行うことが必要です。

 

*記載されている法令、規則等は記事作成日現在のものです。
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