飲食店を経営しているなら、毎日の売上高はとても気になるポイントでしょう。1日単位や週単位、月単位で売り上げ目標を決めて、それに向けて努力しているお店はたくさんあります。しかし、飲食店経営を安定させて長く続けるために本当に重要になってくるのは、売り上げではなく利益です。利益を多く出すためには、人件費にかかるコストをできるだけ抑えることが必要です。
とはいえ、人件費はどれくらいの割合が適切なのでしょうか。この記事では、飲食店における人件費率の目安や、人件費率を下げる効果的な方法について詳しく紹介します。

なぜ人件費率を考えることが重要なのか

人件費とは人に関連して支払われる費用のことで、雇っている社員やパート、アルバイトの給料が含まれます。人件費は、飲食店を経営するコストの中で大きな部分を占めています。お店が繁盛して売り上げがたくさんあがっていても、人件費が高くつくなら手元に残る分は少ししかありません。

そこで、飲食店の売り上げに対して、人件費がどれほどの割合を占めているかをきちんと管理することが重要になってきます。この、売り上げに対する人件費の割合を、人件費率と言います。人件費をしっかり把握しておくことは、お店の収益性に大きな影響を与えるため、経営管理の観点からとても大切です。人件費をきちんとコントロールすることが、お店を成功へ導く一番の近道だと言われることもあるほどです。

近年、各都道府県で最低賃金を見直す動きが広まっています。2018年10月現在、東京都の最低賃金は985円、大阪府は936円。(参考:地域別最低賃金の全国一覧

最低賃金がどんどん上がる中、安い給料ではパートやアルバイトなどの従業員が集まりにくくなっています。少子高齢化により、どの業種でも人手不足が叫ばれており、特に飲食店の人手不足は深刻です。人件費について考えるときは、こうした社会的背景を理解して、それに合わせた適切な給与形態を設けることが欠かせません。
経営者であるなら、お店の適切な運営のためにたくさんある支出の項目の中でも特に人件費を重要項目として捉えて、経営効率を高めることを目指しましょう。

人件費率には保険料など給与以外も含まれる

人件費率を計算するとき、多くの人は「人件費=従業員に支払われる給料」と考えがちです。この考えは正しいものの、人件費に含まれるのはそれだけではありません。
では、人件費の具体的な中身とは何でしょうか。
まずは、すぐに思い浮かぶ給与手当です。給与手当には、基本給のほかに残業手当や賞与、通勤手当なども含まれます。次に、福利厚生の費用です。健康保険・介護保険・厚生年金保険などの社会保険や、労災保険・雇用保険などの労働保険の費用も、お店の負担分は人件費になるのです。従業員の福利厚生のためにサークル活動や社員旅行などを実施している場合は、そうした費用も含まれます。お店を辞める従業員に退職金を支払う場合は、それも人件費として計算します。

飲食店における人件費率の目安はどのくらい?

人件費にはどんなものが含まれるか分かったら、次は人件費率について考えてみましょう。
(人件費÷売り上げ)×100の計算式により、人件費率を算出できます。
人件費率を考えるとき、セットで考えたいのは食材費です。人件費と食材費は変動費であるため、適切な管理が必要になってきます。飲食店経営において、人件費と食材費が主な出費となり、利益率に大きく影響を及ぼします。仮に人件費が高くついても、食材費を安く抑えることができるなら、経営は安定した状態を保てるでしょう。その反対に、人件費をいくら削減しても、食材費が高くついて経営を圧迫してしまうこともあります。そのため人件費と食材費を合わせたコストを、売り上げ全体の55~60%が適正という考え方もあります。

人件費率の数字を下げるための方法

ここからは、お店の人件費率を下げるための効果的な方法を考えてみましょう。オペレーション・労働時間・生産性という3つのポイントから、人件費率の数字を下げるのに良い方法を紹介します。

オペレーションを見直す

まず、従業員の労働を減らすためにオペレーションを見直すことです。ここで言うオペレーションとは従業員が行わなければならない作業のことです。飲食店においては、お客さまに対する席への案内、注文取り、調理、配膳、会計などが含まれます。こうした一連の流れを見直してオペレーションを簡素化するなら、必要な従業員の数を調整できます。

たとえば、お客さまが端末を操作して自分で注文できるテーブルオーダーシステムを導入するなら、毎回注文を取りに行く必要はありません。初期費用はかかりますが、導入後の人件費はかなり削減できます。導入時のコストや年間の人件費などを計算しながらじっくり検討してみると良いでしょう。
小さなことで考えてみると、各テーブルにメニューやカトラリーなどをあらかじめ配置しておくだけでも効果的です。来店や料理の提供のたびにメニューやカトラリーを準備して持って行く手間を省けます。とはいえ、何でもセルフサービスにしてしまうと、顧客満足度が低下してしまう恐れもあります。満足度を低下させないまま、どんな面でオペレーションをシンプルにできるか、考えてみましょう。

労働時間を見直す

2つ目は、時間帯による集客の傾向を分析して、従業員の労働時間を見直すことです。時間帯ごとに集客率や売り上げを計算して、適切な従業員数になっているかどうかチェックしてみましょう。ピークタイムには十分な人手を確保しつつも、それ以外の時間帯については細かく調整するとコストを減らせます。仮に、時給1,000円のお店で1日30分ずつアルバイトの労働を減らしたとすると、1ヶ月では1万5000円、年間では18万円にもなります。短時間労働の従業員が働くシフト時間を調整すれば、全体として見ると大きなコスト削減です。
人件費の高騰の原因である、夜間の労働や残業代を見直すこともできます。下準備や事務作業など、別の時間にもできる仕事はなるべく日中に行いましょう。営業時間終了後に仕事が残っている場合も、翌日にできるものは残業せずに翌日に回すようにします。

生産性の高い従業員を定着させる

最後のポイントは、少ない従業員数でもスムーズに仕事が運ぶよう、生産性の高い従業員を定着させることです。働く人の入れ替わりが激しいお店では新人従業員がよく入ってくるということになり、教育にかなりの時間がかかります。また、注文を聞く、洗い物をするといった簡単な仕事であっても、新人と熟練従業員とでは作業時間や仕事の質に大きな差が出ます。生産性の高い従業員を雇うためには、長く働いてもらえる環境を整えることが必要です。長時間労働をさせない、休暇を取りやすくする、風通しをよくするなど労働環境を整備すれば、長く続ける従業員は自然と多くなり、生産性の向上が期待できます。

まとめ

食事どきに忙しさがピークになる飲食店において、うまく人員を配置して人件費を管理するのは簡単ではありません。しかし、適切な人件費管理は経営の安定につながります。まずは人件費率を計算して、現状をつかむことから始めましょう。この記事で取り上げた「オペレーションをシンプルにする」「労働時間を見直す」などの人件費率削減の方法を参考にして、利益率の向上を目指してください。

 

*記載されている法令、規則等は記事作成日現在のものです。
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