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関東地方の平野部など、あまり多く雪が降らない地域で大雪が降ると、さまざまな被害をもたらします。企業にとっても、従業員が通勤中に転倒してケガをしたり、交通機関が麻痺して通勤できなくなったりするなど、業務に影響が出ることが少なくありません。
この記事では、大雪のリスクと中小企業が雪害対策として備えるポイントのほか、事業継続力強化計画について解説します。
中小企業にとっての大雪のリスク
大雪が降った場合、中小企業にはどのようなリスクがあるのかを整理しておきましょう。中小企業にとっての大雪のリスクは次のようなことが考えられます。
通勤時、営業時の身の危険
大雪が降ると、通勤時や外回りの営業時に転倒するなど、ケガをするリスクが高くなります。滑って転ぶだけではなく、段差が雪に隠れていて気づかずに、つまずいてしまう場合もあります。通勤時や就業中のケガは、基本的に労働者災害補償保険(労災保険)の対象です。
インフラ被害などによる業務停止
大雪のリスクとして、インフラ被害による業務停止も挙げられます。鉄道や道路などの交通機関が被害を受けると、出勤できなくなったり、物流がストップしたりすることもあるでしょう。
また、湿って重くなった雪が電線に積もるなどして電線が切断され、停電が発生することも考えられます。ガス設備が積雪や落雪で被害を受けて、使用できなくなるケースもあります。
事故を起こした場合などの賠償責任
大雪による事故とその賠償責任もリスクのひとつです。大雪が降ると、積雪や凍結によるスリップ、吹雪による視界不良などにより、交通事故を起こしてしまうかもしれません。従業員が就業中に交通事故を起こした場合は、企業が賠償責任を負うことになります。
また、企業が私用車の使用を認めていた場合、通勤中や就業中の私用車での事故でも、企業は使用者責任や運行供用者責任が生じることがあるのです。
実際に、私用車の使用を認められた従業員の通勤時の交通事故において、企業の使用者責任が認められ、企業が賠償責任を負うとされた判例もあります。
事業活動の中断
前述のようなリスクも含めて、雪害によって事業活動が中断してしまうこともあります。交通機関がストップすることで従業員が出勤できなかったり、積雪が原因の停電によって社内設備が使用できなかったりすることが長期間に及ぶと、事業の継続が危うくなってしまうかもしれません。
後述する事業継続力強化計画を策定し、雪害も含めた災害時でも事業を継続できるような体制づくりをするようにしましょう。
大雪時の雪害対策として何を備えるべきか
前述のとおり、大雪が降ると、業務にさまざまな影響をもたらします。ここからは、中小企業が大雪時の雪害対策として備えておくべきことを見ていきましょう。
ライフラインの確保
雪害対策として、ライフラインを確保することが大切です。地震や台風などの災害同様、ライフラインが断たれたときのために、水や食料などの備蓄をしておきましょう。
また、大雪時の気候を考えると、使い捨てカイロや毛布なども必要です。社用車がある場合は車載用防災セットやスタッドレスタイヤも準備しておいてください。
労務対応
大雪時の労務対応についても、ルールとして定めておくといいでしょう。
労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない」とされています。そのため、企業が従業員の安全を考えて自宅待機や早退などを判断・指示した場合は、休業手当を支払う必要があります。
しかし、大雪で交通機関が使えず通勤できない場合や、従業員が危険回避のため自己判断で休んだ場合などは、従業員が就業していない時間に対して給与を支払う必要はありません。大雪などの天災は「使用者の責に帰すべき事由」にあたりませんが、企業が自宅待機などを指示した場合はこれに該当するのです。
また、在宅勤務に対応できるようにすることも雪害対策になります。職種にもよりますが、在宅勤務が可能な環境を整えることで、大雪時に出勤しようとしてケガをするリスクを回避しつつ、業務を通常どおりに行うことが可能となります。大雪だけでなく、地震や台風、感染症の流行などに対する備えとしても、在宅勤務への対応を積極的に進めておくべきでしょう。
さらに、この業務はこの人しかできないという状態にしておくと、その人が出勤できないときや退職したときに事業の継続性が危ぶまれるため、複数の人で業務を把握しておくということも重要です。
従業員への対策の周知
災害マニュアルや就業規則、社内規定などは、変更があるたびに従業員へ周知する必要があります。
また、大雪時の対策について、従業員がいつでもその内容を確認できるようにしてください。クラウドサービスなどを使って共有し、社外でも確認できるようにしておくと便利です。同時に、大雪時の従業員の行動についても、社内研修などを実施して周知しておきましょう。
事業継続力強化計画を策定する
雪害をはじめとする災害対策として、事業継続力強化計画を策定しておきましょう。災害が起こると、事業継続が危うくなる可能性があります。災害が起こる前に事業継続力強化計画を策定しておけば、災害時に事業継続のための行動を迅速に行うことができるでしょう。
また、中小企業庁では事業継続力強化計画認定制度を設けています。事業継続力強化計画認定制度とは、中小企業が自然災害などの防災・減災対策を計画として取りまとめ、経済産業大臣が事業継続力強化計画として認定する制度です。この制度は、中小企業の自然災害などに対する備えを促進するため、2019年に施行された中小企業強靭化法によって設けられたものです。事業継続力強化計画が認定されると、税制優遇や金融支援のほか、補助金などの支援を受けられます。
事業継続力強化計画の認定を受けるには、「自然災害等が発生した場合における対応手順」「事業継続力強化に資する対策および取り組み」「事業継続力強化設備等の種類」といった、事業継続力強化の内容を記載する必要があります。雪害対策も「自然災害等が発生した場合における対応手順」にあたるため、事業継続力強化計画のひとつとして、対策を組み込んでみてください。
大雪の情報を入手する方法
普段からの大雪に対する備えも大切ですが、大雪に関する情報を入手して、適切な行動をとれるようにしておくことも重要です。予測ができない地震などとは異なり、大雪は予測することができます。実際に大雪が降ったとき、もしくはこれから降りそうなときに、積雪や降雪量、交通機関に関する正しい情報を入手できるようにしておきましょう。
積雪・降雪量や交通機関の運行状況については、下記を参照してみてください。
<積雪・降雪量の情報>
・現在の雪(解析積雪深・解析降雪量)(気象庁)
・雪の状況(気象庁)
・天気分布予報・地域時系列予報(気象庁)
<交通機関の運行情報>
・運行情報(JR、私鉄、地下鉄、新幹線、フライト) - Yahoo!路線情報(Yahoo! JAPAN)
・道路交通情報Now!!(日本道路交通情報センター)
損害保険会社の保険も事業継続に有効な手段
大雪は、あらかじめ備えをしていないと事業に影響が出ることもあり、企業として大きなダメージを受ける可能性があります。地震、台風、感染症などの対策と同様、雪害対策も策定しておくことで、大雪時でも適切な対応ができるようになります。従業員を守り、自社の事業を継続するためにも、さまざまなシチュエーションを想定したリスク管理に取り組んでいきましょう。
また、事業継続力強化計画の認定を受けることも検討してみてください。認定によって金融支援を受け、さらに損害保険会社の保険に入ることも事業継続には有効な手段です。任意の労災保険など、中小企業のバックアップとなるさまざまな保険商品があります。ぜひ一度、検討してみてはいかがでしょうか。
また、技能実習生がきちんと日本で建設業のノウハウを学ぶためには事前知識も必要と考え、日本で就労する業務と同種の業務に、外国において経験していることを条件とすることで、日本でスムーズに就労できるようになりました。ただし、技能水準に条件はないため、雇用した外国人によってレベルの違いは出てしまう問題が残っています。
建設業では、日本の若年層や女性の入職に対する対策をしていますが、それだけでは成り立たず、外国人労働者の力も必要です。苦労やデメリットもありますが、外国人労働者の雇用も検討してみることをおすすめします。
監修者プロフィール:
山本喜一(やまもときいち)
特定社会保険労務士、精神保健福祉士
上場支援、労働基準監督署、労働組合、メンタルヘルス不調者、問題社員対応などを得意とする。現在は同一労働同一賃金対応に力を入れている。著書「補訂版 労務管理の原則と例外 働き方改革関連法対応」新日本法規など多数。
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