1 従業員が安心できる職場環境づくり

 新型コロナウイルス(COVID‑19)は、現在もなお、世界中で深刻な影響を与えています。

 我が国においても、2021年1月8日には、新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて、首都圏を中心に2度目の緊急事態宣言が発出されました。

 一刻も早い終息を願う一方で、一旦、感染者数が減少をしても、再度、感染者が増加に転じている地域も多く見られ、今後はWithコロナの状態がニューノーマルになる、少なくともしばらくの間は継続するという見方も有力です。

 このため、企業には、従業員の安全・健康を守る観点から、Withコロナ時代を見据えた新しい職場環境づくり、働き方の導入、さらには労務管理が求められています。

 本コラムでは、新しい職場環境づくりの出発点となる平時における対応方針の策定と実務上、質問を受けることの多いテレワークの導入時に必要な手続と労働時間の管理について、概要を解説いたします。

2 対応方針の策定と周知

 まず、企業には、平時における対応として、新型コロナウイルス感染症に対する会社としての対応方針を策定し、従業員に周知・徹底し、同方針を踏まえ日常業務を行うことが求められています。

 テレワーク(在宅やサテライトオフィス等での勤務)や時差通勤等をどのような形で導入するのか、社内や社外の打ち合わせについて、オンラインを推奨するのか、人数を制限し、マスクの着用と十分な換気等を条件に対面での打ち合わせを容認するのか、県外や海外への出張をどのような条件で認めるのか、休憩スペース等の共用スペースの利用条件等をどのように定めるか、従業員からの自転車通勤の要望にどのように対応するかなど、事前に検討が必要な事項は多岐にわたります。

 一般社団法人日本経済団体連合会では、「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を公表し、検討すべき基本的な事項を列挙しており、参考されると良いでしょう。

 特に職場の消毒については、漏れのないよう網羅的かつ定期的に行うことが重要なだけに、社内のルールとして明確化しておくことが有益です。

3 テレワーク導入時に必要となる手続と導入後の労務管理

 次に、実務上、質問を受けることが多いテレワークを導入する際に必要な手続とテレワーク導入後の労働時間の管理について、見ていくことにしましょう。

(1)テレワーク導入の際に必要な手続

 まず、テレワークを導入する際、就業規則の変更が必要かという質問を良くいただきます。 

 テレワークの導入に際し、通常の勤務と労働時間やその他の労働条件について何ら変更をしない場合には、従前の就業規則を変更しなくても、テレワーク勤務を導入することは可能です。

 しかしながら、通常、テレワークを導入する場合、従業員に一定の通信費用を負担させるなど、通常勤務では生じない費用負担が生じる場合が考えられ、このような費用の負担は「作業用品その他の負担」(労基法89条5号)に該当するため、就業規則の変更が必要となります。また、テレワーク導入に際し、いわゆるフレックスタイム制を採用する場合も多く、従前の就業規則に当該制度が定められていなければ、就業規則を変更する必要があります。

 厚生労働省が公表をしている「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」では、テレワークを導入する際には、①テレワーク勤務を命じることに関する規定、②テレワーク勤務用の労働時間を設ける場合はその労働時間に関する規定、③通信費などの負担に関する規定を就業規則に定めることが必要としており、変更の要否を確認する際には、上記手引きを参照しながら、確認することが有益です。

(2)テレワーク導入後の労働時間の管理

 次に、テレワーク導入後の労働時間の管理について見ていくことにしましょう。まず、使用者は、従業員の労働時間について適正に把握する責務を有します。みなし労働時間制が適用される場合や労働基準法41条に規定する労働者を除き、厚生労働省が公表する「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づき、適切に労働時間を管理する必要があり、これはテレワーク導入後も同様です。

 同ガイドラインでは、原則的な方法として、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録に基づき労働時間を把握すること等を挙げるとともに、やむを得ず、従業員の自己申告に基づき労働時間を把握する場合でも、以下の措置を講ずることを使用者に対し求めています。

 

  1. 自己申告を行う労働者や、労働時間を管理する者に対しても自己申告制の適正な運用等ガイドラインに基づく措置等について、十分な説明を行うこと
  2. 自己申告により把握した労働時間と入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所用の労働時間の補正をすること
  3. 使用者は労働者が自己申告できる時間数の上限を設ける等適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならないこと。さらに三六協定の延長することができる時間数を越えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、労働者等において慣習的に行われていないか確認すること

 

 上記措置を講ずる必要がある点については、実務上、見落としがちなところですので、テレワーク導入後、やむを得ず従業員の自己申告に基づき労働時間の把握をしている場合には、再度、これらの措置を講じているか、確認をしてみてください。

 なお、テレワークにおいては、どうしても、一定程度、従業員が業務から離れる時間(いわゆる中抜け時間)が生じやすいという問題があります。

 中抜け時間については、使用者が業務の指示をしないこととし、従業員が労働から離れ、自由に利用することが保証されている場合、就業規則への記載や労使協定の締結を前提に、その開始と終了の時間を報告させる等により、休憩時間として扱い、従業員のニーズに応じて始業時間を繰り上げるまたは終業時刻を繰り下げる、あるいは休憩時間ではなく時間単位の年次有給休暇として取り扱うことが認められています。

 その他の点も含め、社内の手続・対応等について不備はないか確認をする際には、厚生労働省が公表をしている「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」を参照することが有益です。

 同ガイドラインでも言及されているとおり、テレワークの対象者を選定するに当たっては、正規雇用労働者、非正規雇用労働者といった雇用形態の違いのみを理由としてテレワーク対象者から除外することのないよう注意してください。

4 感染症対策を含む健康経営のススメ

 企業にとって、従業員の健康を守り、優秀な人材を定着させ、健康で長く働き続けられる職場を提供すること、すなわち健康経営に向けた取り組みを行うことは、事業を継続するうえで重要な経営課題の一つです。

 新型コロナウイルス感染症の蔓延により、いわゆる「3つの密」を避けることが求められ、職場環境や働き方に大きな変革が迫られた結果、特に中小企業においては、労務管理が難しくなっている実情があります。

 その一方で、職場環境の整備や労務管理を怠ると、従業員から安全配慮義務違反を問われたり、予期せぬ残業代請求を受けてしまう、あるいは、長時間労働により従業員がメンタルヘルスを害する、さらには過労死を招く等のリスクも生じます。

 このため、企業には、行政の公表するガイドラインや手引き等を適宜参照しながら、従業員が安心して働ける職場環境を構築し、変化に応じて適切に労務管理を行うことが求められています。

(このコラムの内容は、令和3年3月現在の法令等を前提にしております)。

(執筆)五常総合法律事務所

MKT-2021-503

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