1 実務的には影響の大きい年次有給休暇の時季指定義務

 「働き方改革法」への対応のポイント①では、時間外労働に対する上限規制、それから労働時間の把握義務について、概要を説明いたしました。

 本コラムは、すでに中小企業を含め2019年4月1日より施行されている有給休暇に関する改正点(時季指定義務のポイント)と勤務間インターバル制度について、対応のポイントを含め、概要を説明いたします。

2 年次有給休暇発生要件と付与日数

 前提として、労働基準法における年次有給休暇制度の概要から確認していきましょう。

労基法39条は、労働者の心身のリフレッシュを図ることを目的として、使用者に対し、労働者が雇入れの日から6か月間継続して勤務し(①)、その6か月間の全労働日の8割以上を出勤した場合(②)、原則として10日の年次有給休暇を与えなければならないと規定しています(なお、就業規則や労働協約等により労基法の内容よりも有利な定めがある場合については、当該就業規則等の内容が基準となります)。

注:パートタイム労働者など所定労働日数が少ない労働者については、所定労働日数に応じて比例付与されます(労基法39条3項、労基則24条の3)。

3 法改正の概要(年5日の年次有給休暇付与の義務化)

 年次有給休暇は、原則として労働者が請求する時季に与えることとされていますが、職場への配慮等の理由から、取得率が低く、どのように取得を促すかが課題となっていました。

そこで、今回の改正では、年次有給休暇の取得を促進し、実効性を確保する観点から、使用者は、年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者(対象となる労働者には、管理監督者や有期雇用労働者も含まれます)に対し、年次有給休暇のうち5日については、基準日から1年以内に労働者ごとにその時季を指定する義務を負う旨の規定が新設されました(労基法39条7項、8項)。

 なお、時季指定に際し、使用者は、労働者の意見を聴取しなければならず、また、できる限り労働者の希望に沿った取得時季となるように聴取した意見を尊重するよう努める努力義務が課されています。

※厚生労働省「年次有給休暇の時季指定義務」より引用

 ただし、労働者が有給休暇取得の時季を指定した場合(労基法39条5項)や使用者から計画年休による付与(同条6項)がなされた場合、あるいは、その両方が行われた場合には、これらの日数は当該義務の履行から除外され、これらによって取得した年次有給休暇の日数の合計が年5日に不足する場合においては、その不足日数について使用者に時季指定義務が残ることになります。

 たとえば、労働者が自ら2日時季指定をして有給を取得した場合、使用者は、3日を時季指定すれば足ります。

4 対応のポイント

 次に、実務上の対応のポイントついて、見ていくことにしましょう。

(1)就業規則の記載

 まず、休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項(労基法89条)であるため、使用者による年次有給休暇の時季指定を実施する場合には、就業規則に記載が必要となります。

 具体的には、時季指定をする場合には、就業規則に①時季指定の対象となる労働者の範囲および②時季指定の方法等を記載する必要があります。実際の規定例については、厚生労働省が公表する「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」にも掲載されているので、参考にされると良いでしょう。

 なお、就業規則を変更したら、忘れずに労働基準監督署への届出を行いましょう。

(2)計画的付与制度(計画年休)の活用

年次有給休暇の取得に際しては、前述のとおり、労働者の意思を尊重することが求められますが、繁忙期に有給休暇取得者が集中する事態を避ける観点からは、年次有給休暇の計画的付与制度(計画年休)を活用する方法があります(労基法39条6項)。

 就業規則への規定と過半数組合等との労使協定により、あらかじめ5日分の取得日を確定することができれば、労働者はためらいを感じることなく年次有給休暇を取得することができるとともに、計画的付与制度で取得した年次有給休暇は取得が義務化された5日としてカウントされるため、労使双方にメリットがあります。

 実務的には、計画的付与制度をうまく活用し、夏季あるいは年末年始に年次有給休暇を付与して大型連休としたり、ブリッジホリデーとして連休を設けたり、アニバーサリー休暇制度を設けるなど、労働者の利便性にも配慮した様々な取り組みが行われています。

(3)年次有給休暇管理簿の作成

 また、使用者には、年次有給休暇の確実な取得に向けて、時季、日数および基準日を労働者ごとに明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作成し、当該年次有給休暇を与えた期間中および期間経過後3年間の年次有給休暇管理簿を保存する義務が課されていることにも注意が必要です。

5 勤務間インターバル制度

 最後に、労働時間等設定改善法の改正により導入された勤務間インターバル制度について、概要を見ていくことにしましょう。

 これは、勤務終了時刻から翌日の勤務開始時刻までの時間(勤務間インターバル)を一定以上確保しなければならないとする制度で、労働時間の上限を制限するという従来の規制の在り方とは別に、勤務終了後、一定時間は休まなければならないという観点から、労働者の休息時間を制度として確保しようとするものです。

※厚生労働省ウェブサイトより引用

あくまで努力義務のため、導入するかどうかは各企業の経営判断ですが、労働者に十分な睡眠を確保させ、生産性や効率性の向上を図るとともに、労働者に十分な生活時間を確保させてワーク・ライフ・バランスを推進し、従業員の離職を防止するという観点からは、導入を検討することが望ましい制度と言えます(なお、勤務間インターバル制度は「始業および終業の時刻」に関する事項となるため、導入には就業規則への記載が必要です)。

 厚生労働省では、実際に勤務間インターバル制度を導入した企業からのヒアリングをまとめた「導入事例集」を公表しており、自社で導入を検討する際には、参考にされると良いでしょう。

6 大切なのは各制度を利用しやすい職場作り

 施行から半年が経過し、今回紹介した年次有給休暇の付与や勤務間インターバル制度がうまく機能している企業では、職場全体として、これらの制度を積極的に活用し、より良い労働環境をみんなで作り上げようという意識を持っていることが多いと感じています。

少子高齢化に伴う労働人口の減少を受け、健康を害し、時には過労死さえも生じさせる長時間労働に対しては、社会から厳しい目が向けられています。

そして、マンパワーの少ない中小企業においてこそ、経営者がリーダーシップをとって、職場環境を改善していくことが求められている点に留意する必要があります。

(このコラムの内容は、令和元年6月現在の法令等を前提にしております)。

(執筆)五常総合法律事務所 弁護士 持田 大輔

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