工場・作業所における火災では、電気機器に起因する火災(電気火災)が最も多いということはご存じでしょうか?東京消防庁による2022年のデータを見てみると、東京消防庁管内で発生した3,935件の火災のうち、電気火災は1,399件となっており、これは全火災件数の35.6%を占めています。AIG損保で取り扱いのあった事業者さまの火災事故においても件数の割合はほぼ同じであり、その原因による保険金支払額は総額の約55%を占めています。

出典:「東京消防庁HP」「2022年8月号広報テーマ」より

 

そのため、企業の防火取り組みにおいて、電気火災への対応は非常に重要であると言えます。

1 電気火災のおもな原因と対策

電気火災とは、電気機器や電気関係の配線などが原因となって発生する火災を指しますが、その多くは日常の管理によって防ぐことができると言われています。ここでは火災発生のメカニズムとその予防策を見ていきましょう。


●接続部の緩みによる過熱からの出火の場合

プラグやコンセントの接続部がしっかりと挿し込まれていなかったり、変形していたりする場合や、配電盤や電気機器などの接続端子に緩みや錆があった場合などは、電気の流れに負荷がかかり過熱して出火の原因となる場合がありますので、次のような予防策をとりましょう。

  • 接続部がしっかりと挿し込まれているか、変形などがないかなどを定期的に点検する
  • 挿し込みが緩いコンセントやテーブルタップがないか確認し、あれば交換する
  • 機器類の接続端子のねじが適正に締まっているか、錆びたり汚れが付着したりしていないかなどを定期的に確認する
  • コードとコードをつなぐ場合、素人工事による接続を行わない

●配線のショート(短絡)や半断線、配線の結束からの発熱による出火

コードの破損や絶縁性能の低下により配線がショートすると、大電流が流れて火花が発生し、火災となってしまうケースがあります。また、配線が内部で半断線してしまうと、流せる電気の量が減少し、電気機器の使用中に配線が異常に発熱し、出火することがあるため注意が必要です。

  • コードの上にオフィス家具や機械装置などを置かない
  • たくさんの電気を使用するたこ足配線は行わない
  • コードを折り曲げた状態や、束ねた状態で使用しない(コードリールは伸ばした状態で使用する)
  • コードをステップルと呼ばれるゲート状の釘で固定しない
  • コンセントからプラグを抜く際は、コードではなくプラグ本体を持って抜く

●トラッキング現象による出火

トラッキング現象とは、コンセントに挿したままのプラグに溜まったほこりが湿気を帯びることで電気が流れ一部が炭化、さらに使用を続けることで出火するというものです。電源がオフでも発生する危険があるので注意が必要です。

  • 定期的に差込プラグを抜いて、ほこりを掃除する
  • トラッキング対策を実施した差込プラグや部品に交換、または使用する
  • 使用しないときはコンセントから差込プラグを抜いたりブレーカーを落としたりする(再通電時に注意が必要)

2 漏電のおもな原因と対策

前章で火災発生のメカニズムとその予防策を紹介しましたが、ここではその中でも漏電火災の発生原因と予防策について見ていきましょう。

漏電とは、ケーブル内を流れる電気が、絶縁部分の劣化などで漏れてしまう現象です。漏電した結果、感電事故や火災にもつながることがあります。漏電は、事務所や工場などが無人のときにも起きる危険性があります。

 

●漏電火災のおもな発生原因

漏電火災は、漏電電流が流れた部分やその周囲の可燃物で炭化が発生し、ついには蓄熱により発火することで起こります。そのほか、以下のようなことが漏電の原因となり、火災を引き起こす危険性があります。

  • 雨漏りや結露により機器に水分が付着する
  • 工事施工不良により発生
  • 電気機器の故障・劣化(メーカーが指定している耐用年数越えの使用など)が発生

●漏電火災の予防策

漏電火災の多くは、日常における適切な点検と修繕によって防ぐことが可能です。現場に漏電リスクの高い設備や環境がないか確認しましょう。

  • 漏電ブレーカーの設置
  • 電気機器のアース線の設置
  • 電気コードの定期的な点検・清掃の実施

3 赤外線サーモグラフィカメラによる異常の見える化

電気火災を防止するためには、電気機器や配線などについて正しく使用すると共に、適正な点検やメンテナンスを定期的に実施することが大切です。しかし電気は目で見ることができませんので、どこに異常があるかを目視で確認することは非常に困難です。また安易に機器に触れると感電するリスクもあります。取扱説明書やメーカーの指示通りに対応する必要がありますが、特に事業にかかわる機器類については、必要に応じた資格を持つ専門業者による点検が欠かせません。

そんな中最近では、通電量や抵抗値の測定を中心とした従来の点検方法の他に、赤外線サーモグラフィカメラを使用した画像診断も行われるようになり注目を集めています。

この診断は、電気の流れによって発生する温度変化を計測することで異常を感知し、その原因を推定するものです。

例えば、「1 電気火災の主な原因と対策」で紹介しました「接続部の緩み」の場合、適正な状態に比べ緩みがある状態では電気抵抗が高くなるために熱を帯びます。そのため、電気機器の使用状況が同じであっても、緩みがある接続部の方が他の接続部に比べて温度が高くなる傾向があるので、異常の個所と原因を推定することができます。

操業を止める必要もなく、また機器類に対し非接触で調査できるという大きなメリットがあります。

※AIG損保では2022年10月から、「赤外線サーモグラフィカメラによる危険診断」サービスを開始いたしました。実施には一定条件がありますので、詳細については営業までお問い合わせください。

4 おわりに

工場や作業所における火災は、最悪の場合、事業継続の危機にもつながりかねません。電気機器や設備の適切な使用と管理を心掛け、安全な取扱いを継続させていきましょう。
併せて、火災をはじめとする事故による直接損害の補償や利益損失、営業継続に要する費用といった間接損害の補償ができる保険の加入も考慮したほうがいいでしょう。

MKT-2023-503

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