コロナ禍を機に、多くの企業がリモートワークを導入するようになりました。コロナ禍以前から働き方改革などが叫ばれており、リモートワークへの関心は高まっていたものの、緊急事態宣言の発出をきっかけに普及したといえるでしょう。

この記事では、リモートワークの概要と普及率のほか、リモートワークを導入できない理由と今後の展開について解説します。

リモートワークとは?

リモートワークとは、自宅やコワーキングスペースなど、オフィスから離れた場所で働くことです。インターネットに接続して、メールやチャット、ウェブ会議などを活用して業務を行います。

テレワークも、リモートワークとほぼ同じ意味で使われる言葉です。リモート(remote)は「遠い」「遠隔の」といった意味があり、テレ(tele)にも同様の意味があります。テレワークは、情報通信技術(ICT)を活用し、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を指す言葉とされています。

 

なお、一般社団法人日本テレワーク協会は、テレワークには「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライト/コワーキング」「ワーケーション」の4つの働き方があるとしています。一方、リモートワークには、明確な定義はありません。

リモートワークはIT企業などで使われ、テレワークは省庁や自治体、大企業などで使われる傾向がありますが、インターネットを活用してオフィスから離れた場所で働くという意味では、同じだと考えていいでしょう。

日本でのリモートワーク(テレワーク)の歴史

日本では、1984年に日本電気株式会社(NEC)が、日本初のサテライトオフィスを吉祥寺に開設して話題になりました。これが、日本で初めてのテレワーク導入事例だとされています。

1991年には日本サテライトオフィス協会(現・一般社団法人日本テレワーク協会)が設立され、国家公務員へのテレワーク勤務実験も開始されました。

2014年には、政府による「世界最先端IT国家創造宣言」の中で、雇用形態の多様化とワークライフバランスの実現手段のひとつとして、テレワークの必要性が提示されました。そして、2019年には「働き方改革関連法」が施行されます。これを契機に、働き方改革の一環として導入するのが望ましい就業形態として、テレワークが認識されるようになります。

しかし、急速に普及したのは2020年の新型コロナウイルス感染症拡大の影響が大きかったといえるでしょう。コロナ禍を機に、国内の多くの企業がリモートワークを導入するようになりました。

 

出典:「NECグループが進める働き方改革」(日本電気株式会社)

出典:「一般社団法人日本テレワーク協会 概要」(一般社団法人日本テレワーク協会)

出典:「世界最先端IT国家創造宣言について」(内閣官房)

コロナ禍前後のリモートワーク導入状況の変化

では、コロナ禍によってリモートワークの導入状況はどのように変化したのでしょうか。コロナ禍前後のリモートワーク導入状況について解説します。

緊急事態宣言による影響

総務省が発表した「令和2年通信利用動向調査」によると、「テレワークを導入している」と答えた企業の割合は、2018年が19.1%で2019年は20.2%となっています。それが、コロナ禍となって緊急事態宣言が発出された2020年には、47.5%と急増しました(2020年8月調査)。

■企業のテレワークの導入状況

  ※「令和2年通信利用動向調査の結果」(総務省)をもとに作成

なお、テレワークの実施率については、総務省が2021年8月に公表した「『ポストコロナ』時代におけるテレワークの在り方検討タスクフォース(第1回)」にもまとめられています。

それによると、企業のテレワーク実施率は2020年5月28日~6月9日には56.4%(中小企業は51.2%)にまで上がりました。2020年5月25日に緊急事態宣言が解除されたこともあり、その後は30%台(中小企業は20%台)にまで低下するものの、2021年1月7日に東京、埼玉、千葉、神奈川に緊急事態宣言が発出され、2021年3月1日~3月8日には38.4%(中小企業は33.0%)に上昇しています。

■企業のテレワーク実施率

※「『ポストコロナ』時代におけるテレワークの在り方検討タスクフォース(第1回)」(総務省)をもとに作成

 

これらのデータからは、リモートワークの普及には緊急事態宣言の影響が大きかったことがわかります。

 

出典:「令和2年通信利用動向調査の結果」(総務省)

出典:「『ポストコロナ』時代におけるテレワークの在り方検討タスクフォース(第1回)」(総務省)

リモートワークに移行できない理由

総務省の「令和2年通信利用動向調査」には、産業別のテレワーク導入率も記載されています。それによると、情報通信業が92.7%と非常に高い割合になっているものの、運輸・郵便業では30.4%、サービス業・その他では34.7%です。業種によっては、テレワークを導入しにくいことがうかがえます。

■産業別テレワークの導入状況

※「令和2年通信利用動向調査の結果」(総務省)をもとに作成

また、テレワークを導入・実施していない理由についても、調査結果が記載されており、「テレワークに適した仕事がないから」が80.0%で最多です。運輸・郵便業やサービス業・その他でテレワーク導入率が低かったのは、この理由が大きいでしょう。

 

ほかの理由としては、「業務の進行が難しいから」の34.0%、「情報漏洩が心配だから」の19.3%、「文書の電子化が進んでいないから」の17.1%と続きます。作業環境やオペレーションの難しさ、コミュニケーションへの不安が多いようです。

■テレワークを導入しない理由

※「令和2年通信利用動向調査の結果」(総務省)をもとに作成

今後リモートワークは定着する?

コロナ禍を機に、多くの企業がリモートワークを導入するようになりました。しかし、業種による差が大きく、企業の規模によっても普及率に差が生じています。では、今後リモートワークは定着していくのでしょうか。

 

総務省の「ポストコロナ」時代におけるテレワークの在り方検討タスクフォースによる「提言書」では、「日本においても継続的なテレワークの実施を希望する労働者は多いが、特に中高年の管理職のあいだには、同じ場所と時間を共有する大部屋主義、対面主義、暗黙知等の利点を過度に意識し、テレワークへの不信感(バイアス)が根強く残っている」と指摘されています。

さらに、「十分な準備や移行期間がないままにテレワークを導入した結果として、生産性が低下していると感じる労働者も多く、このことはテレワークの課題として挙げられる」としています。

 

このように、リモートワークがより普及していくには、まだ多くの課題がある状況です。しかし、リモートワークには、多くのメリットがあります。ITツールを活用することで、既存業務を見直して生産性を向上させたり、時間や場所にとらわれない働き方で事業継続力強化にもつなげられたりすることができるのです。

 

なお、経済産業省・中小企業庁の「ミラサポplus 補助金・助成金 中小企業支援サイト」では、中小企業・小規模事業者向けの補助金や給付金などの情報を提供しています。前出の「令和2年通信利用動向調査の結果」では、テレワークを導入しない理由として「費用がかかりすぎるから」という回答も見られましたが、テレワーク導入の課題を解決できる方法のひとつとして、補助金や助成金の申請を検討してみてはいかがでしょうか。

 

大企業や情報通信業では、今後もリモートワークを推進していくでしょう。リモートワークとオフィス勤務を組み合わせた、ハイブリッドワークという働き方も注目されています。

この先、コロナ禍が収束することになれば、オフィス勤務への回帰が起こるかもしれません。しかし、全体の流れとしては、リモートワークをはじめとする働き方の多様化は、今後も進んでいくものと考えられます。

 

出典:「提言書」(総務省「ポストコロナ」時代におけるテレワークの在り方検討タスクフォース)

リモートワーク環境を整えて事業継続力強化につなげる

リモートワークはコロナ禍を機に、多くの企業で導入されるようになりました。しかし、現状ではまだ導入していない企業もあり、業種によっても普及率に差があります。リモートワークの課題はさまざまありますが、リモートワークをはじめとする働き方の多様化を推進することは、既存業務の見直しや事業の継続力を強化するというメリットもあります。

リモートワークの環境を整えることで、事業継続力強化につなげてみてはいかがでしょうか。

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