1 データでみる中小企業の事業承継

株式会社帝国データバンクが公表をしている全国社長年齢分析(2020年)によると、2019年の社長の平均年齢は、59.9歳(前年比+0.2歳)と過去最高を更新しており、年代構成比を見ると、「60代」が28.1%を占め、「50代」が26.4%、「70代」が19.7%と続いています。

上記資料が示すとおり、最近では、70代になっても第一線で活躍される経営者の方も珍しくありません。一方で、近年は世代交代が進まないまま社長が高齢を迎え、事業承継がうまく進まずに、会社の清算や倒産を選択せざるを得なくなってしまったケースも残念ながら散見されます。

同社が公表をしている全国企業「後継者不在率」動向調査(2020年)によると、同調査において対象とされた約26.6万社(全国・全業種)のうち、全体の約65.1%に当たる約17万社で後継者が不在であることがわかりました。

地域における雇用の受け皿として、中小企業は我が国の経済において重要な役割を果たしており、事業の継続ができないと、従業員の雇用や中小企業の持つ技術力・ブランド価値等の資産が失われてしまうことになり、社会的にも大きな損失となります。

このため、中小企業経営者の方には、これまでに築いた経営資源を次世代に適切に引き継ぐことが求められています。

2 事業承継の方法と最近のトレンド

事業承継には、大きく、①親族への承継、②役員や従業員への承継、③社外の第三者への売却(M&A)の3つの方法があります。

一昔前は、①親族への承継(親族内承継)が一般的でしたが、最近では、②役員や従業員への承継や投資ファンド等の③社外の第三者への売却(M&A)が増えてきています。

いずれの方法にも、下記のとおりメリットとデメリットがあり、どの方法を選択することが最善かは、その会社が置かれている状況により異なります。

大切なのは、早期に自社の現状を把握し、ベストな方法を進めるために必要な準備の棚卸を行い、速やかに実行に移すことです。

3 中小企業におけるM&Aとは?

なお、中小企業の経営者の方からは、うちのような小さな会社でも、M&A、すなわち③社外の第三者への売却は可能なのか?というご質問をよくいただきます。

結論から申し上げると、中小企業であっても、③社外の第三者への売却(M&A)は可能です。

もちろん、売却に際しては、M&Aをするに値する会社かどうか、買い手からシビアに問われることになりますが、事業に継続的な収益性が見込まれたり、M&Aにより買い手の事業とのシナジーが期待されたり、他社にはない技術力等を有している場合など、中小企業でも買い手が付くことは十分にあります。

2020年2月には投資を受けたサーチャー(経営者になる意欲と能力がある者)が自ら社長となって経営を率いる企業(多くは中小企業)を探し、買収する仕組みであるサーチファンドの1号案件が日本でも実行されたとの報道がなされており(日本経済新聞社ウェブサイト:2020年2月10日「若手人材に投資・承継結実 山口FGのサーチファンド」)、中小企業の休廃業・解散を防ぐ選択肢となり得るか注目されています。

親族や社内に後継者がいない場合でも、中小企業だからといって事業承継を諦める必要はなく、行政等のサポートも活用しながら、早期に準備を進めることが大切です。

4 成功のカギは早期の準備・検討

現在、経済産業省及び中小企業庁では、「中小M&Aハンドブック」及び「中小M&Aガイドライン」を作成・公表し、事業承継にあたりM&Aを検討したい中小企業経営者の支援に注力をしています。

先程説明をしたとおり、親族や社内に後継者がいない中小企業にとって、M&Aを通じた社外の第三者への事業の売却(引継ぎ)は、検討すべき選択肢の一つですが、その一方で、中小企業経営者の中には、M&Aに関する十分な知見を有しておらず、不安を感じていたり、長年築き上げた自社を第三者に「売る」ことに躊躇する方もいらっしゃいます。

また、中小企業におけるM&Aを円滑に進めるためには、仲介業者や金融機関、リーガルアドバイザー等の専門家が適切に支援することが必要ですが、これらの専門家との契約や報酬、業務内容等に不安を持つ経営者の方も少なくありません。

「中小M&Aガイドライン」では、①M&Aの基本的な事項や専門家報酬(手数料)の目安等を示すとともに、②M&A業者等に対して、適切なM&Aのための行動指針を提示し、中小企業経営者がM&Aを躊躇することのないよう配慮をするとともに、全国48カ所の事業引継ぎ支援センターにおいて相談窓口を設けるなどの支援をしています。

現在、中小企業の事業承継支援は、重要な政策課題とされており、経済産業省は令和3年の概算要求において、「事業承継・引継・再生等の支援」を掲げており、専門家を活用する際の補助金を措置し、承継等を機縁とした成長促進を強力に支援する見込みです。

どの方法を選択するにせよ、事業承継には一定の時間を要します。早期に準備・検討を開始することが、事業承継を成功させる重要なポイントです。

(このコラムの内容は、令和3年1月現在の法令等を前提にしております)。

(執筆)五常総合法律事務所

MKT-2021-502

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