建設業界は就業者の高齢化が進み、次世代への技術継承や人材育成が大きな課題となっています。人材確保には、働き方改革の促進による労働条件の改善をはじめ、社会保険の加入徹底、福利厚生の充実による処遇改善などがポイントとなります。また、人材育成については、政府の助成金や、訓練・指導による支援が活用できます。

ここでは、建設業界で人材確保をするために役立つ職場づくりのポイントや、利用できる助成金などについてご紹介します。

建設業界の人手不足の現状と原因

少子高齢化の影響を受け、建設業界の人手不足問題は顕著です。人手不足の理由としては、労働環境が他業種に比べて良くない傾向がみられることです。

例えば、建設業界は、ほかの全産業と比較して、年間300時間以上も長時間労働をしているデータもあります。さらに、建設業生産労働者(技能者)の賃金は、45~49歳でピークとなっています。

このような状況が、若年層の建設業への入職希望に影響しているといえるでしょう。

 

出典:「最近の建設産業の行政について」(国土交通省)

働きやすい職場づくりの一助になる施策

建設業界の労働観環境を改善し、人材確保をしていくには、「働きやすい職場」がキーワードとなります。しかし、事業主が働きやすい職場づくりをするためには、知識や資金が必要です。ここでは、国土交通省と厚生労働省が「建設業の人材確保・育成に向けて」と題して紹介している、建設業界向けの施策をご紹介しましょう。

 

・雇用管理の知識習得

国土交通省は、中小建設事業主を対象に、雇用管理制度導入のコンサルティングやセミナーの開催も行っています。コンサルティングやセミナーを受けることで、中小建設事業主は雇用管理の知識を習得することができます。

 

・現場の安全管理の徹底

国土交通省が熱中症対策の講習会を開催したり、厚生労働省が墜落・転落災害防止対策普及のための研修会などを実施したりしています。この講習会や研修を受けることで、安全な労働環境を作りましょう。

 

人材育成に関する助成金

人材育成も、事業主が行うべき改善策です。厚生労働省では、建設業の人材確保・育成に向けた取り組みとして、「工業高校等への出前講座や、現場見学会の開催にかかる経費の助成」「技能訓練にかかる経費や、訓練期間中の賃金の助成」「賃金体系や研修制度等の雇用管理制度を導入等した場合に対する助成」「65歳以上が働きやすい者の活用促進のために雇用環境整備を行う企業に対して助成等、建設業の人材確保育成に対して助成金」があります。この制度を用いて、事業主は従業員の人材育成を行いましょう。

 

出典:「建設業の人材確保・育成に向けて」(国土交通省・厚生労働省)

建設事業促進に利用できる助成金

行政では、建設事業主や建設事業主団体などによる、労働者の雇用改善や技能の向上の取り組みに対して、下記のような助成金を用意しています。適用可能な助成金があれば申請し、雇用問題解決に役立てていきましょう。

なお、助成金は、生産性要件を満たすことで、割増される助成金があります。生産性要件は「(直近の生産性-3年前の生産性)÷3年前の生産性」を計算して算出され、6%以上伸びている場合生産性要件を満たしたことになります。

トライアル雇用助成金

若年層や女性の建設業界への雇用を促進するため、「トライアル雇用助成金」があります。この助成金は、中小建設事業主に対して35歳未満の若年層男性や、女性を試行雇用した場合のものです。1人あたり毎月4万円を3ヵ月間助成する、「若年・女性建設労働者トライアルコース」が用意されています。ただし、就労した日数が、予定していた就労日数よりも少ない場合、減額になる場合があります。

人材確保等支援助成金

雇用環境の改善などで人材の定着を目的とした「人材確保等支援助成金」には、3つのコースが用意されています。

 

・雇用管理制度助成コース

「雇用管理制度助成コース」では、中小建設事業主が「評価・処遇」「研修」「健康づくり」「メンター」といった制度を導入し、従業員の離職率の低下や若年層や女性の労働者を増やすことに注力した場合に助成されます。助成金は、入職率が5.5%以上か、雇用管理制度整備計画スタート時の従業員数を超えている場合に、57万円が支給されます。生産性を満たしている場合は増額され、72万円が支給されます。

 

・若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース

「若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース」は、雇用保険料率が1,000分の12である建設の事業を行っている企業の中でも、雇用管理責任者の選任が済んでいる企業向けの助成です。若年層や女性にとって魅力ある職場づくりを事業として取り組んだ場合、中小建設事業主は使用した経費の5分の3、中小建設事業主以外は使用した経費の20分の9が、最大で1年間、助成金として支払われます。

また、「雇用管理研修」や「職長研修」といった、助成の対象となる研修を行った場合は、労働者1人あたり1日8,550円が支払われます。生産性を満たしている場合は増額されます。

 

・作業員宿舎等設置助成コース

「作業員宿舎等設置助成コース」は、被災3県(岩手県、宮城県、福島県)を対象としたコースです。雇用保険料率が1,000分の12である建設の事業を行っている企業の中でも、雇用管理責任者の選任が済んでいる企業向けの助成です。

この助成では、被災3県(岩手県、宮城県、福島県)に所在する工事現場で、「作業員宿舎」「賃貸住宅」「作業員施設」の賃借を行う場合に、支給対象費用の3分の2が支給されます。ただし、賃貸住宅の場合は、月額3万円が上限となっています。

人材開発支援助成金

「人材開発支援助成金」の中で、建設業界向けの助成としては、「建設労働者認定訓練コース」があります。

建設労働者認定訓練コースに関する助成は、中小建設事業主で雇用管理責任者の選任が済んでいる企業が対象です。都道府県から認定を受けている「訓練助成事業費補助金(運営費)」または「広域団体認定訓練助成金」の交付を受けて、認定訓練を行う場合に助成されます。助成対象は、訓練にかかった経費の6分の1となります。

支援制度で健全な労働環境を作ろう

建設業界に若年層や女性の入職を働きかける施策はたくさんありますが、いくら周囲が盛り上げたところで、「実際に働いてみたら予想と違っていた」となれば離職してしまうかもしれません。

これまで受け継がれてきた建設業界ならではの慣例も大切ですが、若年層に受け入れてもらえなければ、建設業界自体が立ち行かなくなりかねません。したがって、若年層ができるだけ長く安心して働き続けられる労働環境を作ることが大切なのです。そのためにも、助成金などの支援を得て、労働環境改善を行ってみてはいかがでしょうか。

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