海外旅行を計画する際、見落としがちなのがワクチン接種(予防接種)です。
海外では、国や地域によって感染症が流行っている場合があります。これらの感染症への対策として有効なのが、ワクチン接種です。
ワクチン接種には2つの重要な役割があります。
(1)自分自身を感染症から守り、周囲の人への二次感染を防ぐ
(2)入国時に予防接種証明書の提出を求められる国もあるため、渡航に必要な証明書として取得する
ワクチン接種によってすべての感染症を防げるわけではありませんが、ワクチンを接種することで感染や重症化のリスクを抑えることができます。
この記事では、海外渡航前に知っておきたい感染症の情報収集方法や、医療機関への相談方法、ワクチンで予防できる主な病気の種類について解説します。
出典:「海外渡航のためのワクチン(予防接種)」「FORTH」「旅行前の準備」(厚生労働省検疫所)
海外の感染症情報の収集方法
ワクチンについて確認する前に、まずは渡航先で注意すべき感染症の情報をチェックしておきましょう。感染症の種類によっては、マラリアのようにワクチンではなく予防薬がある病気や、E型肝炎のようにワクチンがない病気もあります。
病院で相談をする際にも、事前にこれらの情報を確認しておくと話をスムーズに進められます。
・厚生労働省検疫所「FORTH(フォース)」
海外の感染症に関する最新の流行状況や予防方法などの情報が掲載されており、渡航者向けの注意喚起も確認できます。
・外務省「海外安全ホームページ」
各国の危険情報(テロや紛争、犯罪発生状況など)とあわせて、感染症に関する情報も確認できます。
出典:「マラリアに注意しましょう!」「海外で注意しなければいけない感染症【一覧】」(厚生労働省検疫所)
渡航前に医療機関へ相談するポイント
海外旅行の際には、事前に渡航先の情報に加えて、自分の健康状態を把握し、必要なワクチンについて医師に相談することが重要です。これまでに自分が受けたワクチン接種については、母子手帳などで確認しておきましょう。
相談のポイントは、以下の2点です。
(1)出発の3ヵ月前から相談する
ワクチンの種類によっては2~3回の接種が必要なものもあるため、余裕を持って接種スケジュールを立てることが大切です。
(2)ワクチンが接種できる場所を確認する
ワクチンの種類によっては、接種場所が異なる場合があります。一般の医療機関で接種できるワクチンもあれば、黄熱ワクチンのように指定された施設でのみ接種可能なワクチンもあります。
一般的には、ワクチンを接種できる医療機関は、トラベルクリニックや渡航外来がある医療機関などです。かかりつけの病院でも対応が可能か、事前に電話などで問い合わせてみることをおすすめします。
このほか、検疫所でも電話相談を受け付けています。
・厚生労働省検疫所「予防接種実施機関の探し方」
検疫所電話相談機関一覧が掲載されています。黄熱ワクチンについては「黄熱ワクチン接種機関一覧」をご参照ください。
・厚生労働省検疫所「予防接種実施機関検索」
渡航者向けの予防接種機関の情報を蓄積したデータベースです。都道府県名、施設名、ワクチン名などを入力して検索することができます。
ワクチンで予防できる感染症
ワクチンで予防できる感染症には限りがありますが、以下に紹介する病気に対して、感染や重症化を抑える効果が期待できます。
また、黄熱など一部の感染症については、予防接種証明書を携帯していないと入国できない国や、複数の国を渡航する場合に国ごとに予防接種証明書の提示を求められることもあるため、渡航先ごとに必要なワクチンについて事前に確認しておきましょう。
■ワクチン接種で予防できる感染症
予防接種の種類 |
推奨される方 |
---|---|
黄熱 |
感染リスクのある地域に渡航する人 入国に際して証明書の提示を求める国へ渡航する人 |
A型肝炎 |
A型肝炎ウイルスに汚染された飲食物等を介して経口感染(糞口感染)するため、衛生環境が心配な地域に渡航する人 |
B型肝炎 |
血液や体液に接触する(受診や性行為など含む)可能性のある人 |
ポリオ |
流行地域に渡航する人 ポリオに対する免疫が低いことが分かっている1975年~77年(昭和50年~52年)生まれの方 |
狂犬病 |
動物と直接接触し感染の機会が多い地域、特に医療アクセスがよくない地域へ行く人 |
日本脳炎 |
流行地域に長期滞在する人(主に東南アジアでブタを飼っている農村部) |
髄膜炎菌 |
流行地域に渡航する人、留学等に際して証明書の提示を求められる人、学生寮や宿舎での共同生活を予定している人 |
麻しん風しん |
疾患への免疫が不十分な人 |
破傷風 | 破傷風菌は世界中の土の中に存在し傷口から感染するため、野外での活動が多い人 |
インフルエンザ | 流行時期または流行地域に渡航する人 |
ダニ媒介脳炎 | 流行地域の森林地帯へ渡航する人、草むらや藪など、マダニが多く生息する場所へ行く人、野外活動や屋外での仕事に従事する人 |
腸チフス | 南アジア、東南アジア、アフリカ、カリブ海、中央アメリカおよび南アメリカなどの一般に衛生水準の高くない地域に渡航する人 |
引用:「海外渡航のためのワクチン(予防接種)」(厚生労働省検疫所)
渡航前のワクチン接種で安心な旅を!
海外旅行前のワクチン接種は、自分自身を感染症から守るだけでなく、周囲の人への二次感染を防ぐ重要な対策です。
渡航先の感染症情報を事前に確認し、旅行前には早めに医療機関などに相談するようにしましょう。
海外旅行中の感染症予防については、次号でご紹介します。
出典:「旅行前の準備」(厚生労働省検疫所)