海外でのドライブは、その土地ならではの風景や空気をじっくり味わえる、旅の醍醐味のひとつです。
しかし、近年、日本においても交通ルールの違いによる外国人ドライバーの交通事故が発生しているように、海外で車を運転するには、事前に現地の交通ルールやマナーを把握しておくことが重要です。また、渡航前に国際運転免許証を取得する必要があります。
この記事では、海外でドライブを楽しむために、国際運転免許証の取得方法や海外で運転する前のチェックポイントなどを解説します。
国際運転免許証の取得方法
海外で車を運転するためには、日本の運転免許証と国際運転免許証の両方が必要です。国際運転免許証は、日本の運転免許証の翻訳証明書のような役割を果たします。
取得手続きは意外と簡単で、以下の4つを用意して住所地の公安委員会(運転免許センターなど)に申請します。
<国際運転免許証の申請に必要な書類など>
- 国外運転免許証交付申請書
- パスポートなど海外渡航を証明する書類
- 現在の日本の運転免許証(提示)
- 免許証用写真1枚
申請場所や受付時間、手数料などは都道府県によって異なるため、事前に公式サイトなどで確認しておきましょう。出発前に余裕を持って手続きを済ませておくことが重要です。
出典:「5.国際運転免許証(国外運転免許証)を取得する場合」(警察庁)
国際運転免許で運転できる国、できない国
日本政府発行の国際運転免許証を持っていれば、世界中どこでも車を運転できるというわけではありません。運転できるかどうかは、渡航先の国が「ジュネーブ条約(1949年)」に加盟しているか、あるいは日本との二国間条約などで、一定の条件のもとに現地の免許取得を不要とするような取り決めがなされているかによって変わります。
日本はジュネーブ条約に加盟しているため、同じくジュネーブ条約に加盟している国では、日本の国際運転免許証で運転が可能です。
そのほかは、国や地域によって必要な書類や対応が異なります。そのため、以下の点を警察庁の資料や各国の大使館の公式情報などで確認しておきましょう
- 渡航先がジュネーブ条約に加盟しているか
- ジュネーブ条約に加盟していないが、日本の運転免許証+翻訳などで運転できるか
- 現地の運転免許証が必要かどうか
ジュネーブ条約加盟国 | 日本、アメリカ合衆国、英国、フランス、イタリア、オーストラリア、大韓民国、シンガポールなど | 日本の国際運転免許証で運転可能 |
ジュネーブ条約加盟国ではないが、現地での免許取得までは不要な国 | ドイツ※1、スイス※2 など | 日本の国際運転免許証では運転できないが、翻訳文の携行など一定の条件を満たすことで運転可 |
現地での免許取得が必要な国 | 中国(香港・マカオを除く) など | 現地での対応が必要 |
※1 日本の国際免許証または日本の運転免許証とそのドイツ語訳で6ヵ月間までなら運転可能。
※2 日本の運転免許証で12ヵ月間までなら運転可能。但し、スイスの官憲(警察官等)は、日本語を解さないことが多いため、日本の運転免許証の翻訳として国際運転免許証等を携行することが推奨される。
出典:「ジュネーブ条約締約国等一覧」「国際運転免許証様式資料」(警察庁)「運転免許証について」(ドイツ連邦共和国大使館・総領事館)、「スイスの運転免許制度」(在スイス日本国大使館)「中国(北京)で運転するには」(在中国日本国大使館)
運転に関する渡航前のチェックポイント
海外での運転では、日本とは異なる交通ルールや運転マナーへの対応が求められます。事前に確認しておくべき主なポイントは以下のとおりです。
■海外で運転する前に確認しておく主なポイント
チェックポイント | 内 容 |
---|---|
通行区分 | 左側通行か右側通行かを確認(例:日本やイギリスは左側通行、アメリカや韓国は右側通行) |
免許の有効条件 | 国際運転免許証は、免許証の発給日から1年間(渡航先に入国した日から1年ではないので注意) |
速度表示の単位 | キロメートル毎時(kphまたはkm/h)かマイル毎時(mphまたはmi/h)か。速度標識の単位を見誤らないよう注意 |
距離の単位 | 距離表示がキロメートル(km)かマイル(mile)か、カーナビや標識の読み方に影響するため確認が必須 |
現地の運転マナー | 制限速度、車間距離の取り方、ウインカーの使用頻度などに地域差あり |
歩行者の交通マナー | 歩行者が信号無視や突然の横断をするケースもあるため要注意 |
道路環境の違い | 車線の幅、信号の位置、交差点の形状などが日本と異なることが多い |
交通標識の表記 | 現地語で書かれていることが多いため、よく使われる標識の意味を事前に確認しておく |
例えばシンガポールでは、交通ルールの遵守意識は高いものの、「車間距離を詰める」「合図なしで車線変更する」などの特徴があります。現地の運転慣行をよく観察し、状況に合わせて慎重な運転を心がけましょう。
出典:「安全の手引き~シンガポールでの生活を安全に過ごすために~」(在シンガポール日本大使館)
海外で車を運転するための事前準備を忘れずに
海外での車の運転は、旅の自由度を大きく広げてくれる一方で、交通ルールの違いや手続きの不備によって思わぬトラブルに発展するリスクもあります。
十分な準備と心構えをもって、安全で快適な海外ドライブを楽しんでください。