リアルストーリーズ

子どもたちの命を守りたい AIGが木を植え続ける理由

子どもたちとともに小学校に760本の苗を植樹

2021年10月、大阪府岬町にある多奈川(たなかわ)小学校で「いのちを守る植樹祭」が行われた。これは大阪府とAIGの防災連携協定に基づくイベントで、小学校の児童53名とその保護者、教諭、岬町町長、そして地元の人たち200名が参加。AIG損保とその代理店からも30名のボランティアが駆けつけ、青空のもとで汗を流した。

「多奈川小学校は近くに河川などがなく、一見安全な場所に立っています。しかし、ハザードマップでは、この小学校は危険区域に指定されています。今回は土砂災害に備えて、専門家の指導のもと、760本の植樹を行いました」

こう話すのは、本イベントを企画した関西地域事業本部・業務統括部長の吉井 健だ。

「今植えた苗木が育てば、土石流が起きてしまった際にその勢いをそいでくれます。実は、植樹ってすごいんですよ。他にもいろんなメリットがあって、津波であれば押し寄せる波の勢いをそぎ、引き波によって漂流物が沖に流されるのを防ぎます。火災であれば、水分を含んだ枝葉が延焼を防ぐ効果もあるなど、いろんな防災・減災に役立つのです」

植える場所や角度といった専門的な監修は、全国の植樹を推進する「公益財団法人鎮守の森のプロジェクト」が担った。実は、AIGが鎮守の森プロジェクトとともに植樹イベントを開催するのは今回が初めてではない。最初の開催は2014年、吉井はその翌年からボランティアとして参加を始めた。

「もとはAIGが2013年に大阪府と連携協定を結んだことがきっかけでした。AIU保険※の組織名称が関西地域事業本部となって、保険会社として地域事業では何ができるのかを考えていました。ちょうどその時、震災後の仙台で植樹をする機会があったのです」

その仙台で、吉井は、津波が来る前から植樹をしていたという現場を視察した。大津波の中で、実際に人命を救ったという木の壁を目の当たりにして、感銘を受けたと言う。

「私たちが事業を行なっている関西エリアも、南海トラフ地震の津波が心配されている地域です。人工の防波堤を築くのも大切ですが、莫大な費用がかかり、人の手では限界があります。でも植樹なら、育つまでにやや時間はかかりますが、自然の力で育ち、減災の効果も見込めます。だから、この活動を、ぜひ関西でも広めたい。地域事業として、行政と一緒に実現できないかと考えました」

関西に戻った吉井は、各地の行政を回り、植樹を提案し始めた。もし植えるならどんな場所がいいか。一番守りたいところはどこだろうか。

「実際に植えるまでには、地域行政はもちろん、土地の持ち主や地域の住民との調整のため非常に長い時間を要します。とくに市町村では、費用もかかる、将来的にどうなるかもわからないという企画に一歩を踏み出すことに難色を示した方も多かった。そこで、大阪府の方と一緒に仙台の植樹に赴き、実際に植樹を体験していただいたんです。何かが起こってからではなく、リスクが想定される地域にこそ植樹が必要ですよね、と」

最終的に候補地が決まり、地域行政の方々にヒアリングを行うと、「子どもたちを守ってほしい」と答えた方が多かった。

その結果、2019年には、大阪府阪南市・尾崎小学校で植樹祭が決まり、生徒や保護者たちと1000本の苗木を植えた。その木々は今、2mの高さを越えて成長している。

地域にとって大切なものを守る 広がる植樹の輪

「ぼくたちの命を守ってください」「いろんなひがいから人の命を守ってほしい」「いっぱいおおきくなりますように」。これは、多奈川小学校の子どもたちが木札に一つ一つ書き入れ、苗木にかけた願いの言葉だ。

「どこかの企業がオフィスのある土地などに独自に植えるのではなく、地域行政とともに考え、どこに防災・減災の植樹が必要なのか。地域の方々が理解をしてくれた上で、子どもたちと大人が一緒になって、防災・減災への思いを込めながら植えることにこそ価値があると思うんです。地域の人は成長していくこの木を見るたびに、きっと防災・減災の大切さを思い出し、備えの気持ちを新たにしてくれるはず」

「また、今回のイベントは、小学校の子どもたちや先生方、岬町や大阪府の方々、地域の住民のみなさんなど、たくさんの方が喜んでくださる結果になりました。植樹は、地域に“うれしい”輪をもたらすプロジェクトなのだと実感しています」

いま、AIG損保には、さまざまな企業や行政から植樹の相談が入っている。植樹の希望があった場合は、鎮守の森プロジェクトと連携しながら地質調査を行い、減災効果の見込める場所であれば工事費用などを算出する。苗木の費用は、全国で結ばれた法人会・納税協会の「ビジネスガード」という保険契約1件ごとに1本の苗木をAIG損保が寄付するという仕組みになっている。

この事業は、AIG損保からの参画者だけでなく、法人会や納税協会といった団体など、沢山の方々の思いと努力、労力によって成り立っている。

「2022年には、大阪府阪南市で、二回目の植樹を予定しています。私たちは損害保険会社として事故や災害があった際に保険金をお支払いするのが生業です。ですが、事前にハザードマップを持ち、地域行政と共に、まだ被害が発生していないときから防災・減災のために積極的に地域の皆さんとともに動けるというのはうれしいこと。子どもたちにもそうしたリスクへの備え、準備の大切さを知ってほしいと願うとともに、これからも植樹を推進し、事前の防災・減災という社会的責任を果たしていきます」

  • 2018年1月1日、AIU損害保険株式会社と富士火災海上保険株式会社が合併し、AIG損害保険株式会社として営業を開始。

<プロフィール>

吉井 健(よしい たけし)
関西地域事業本部 業務統括部長。AIU損害保険に入社し、佐賀、徳島、広島、中国営業本部や大阪などの責任者を歴任。その後、エリア全体で戦略を考えるエリアカンパニーの戦略統括部長へ。AIU保険会社と富士火災の統合を前に、富士火災に出向し、統合と同時に現在の職務となる。大阪府・AIG連携協定担当も兼任。

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