リアルストーリーズ

多様性を活かしたワークプレイスで見えた可能性

多様性を活かす企業「AIGハーモニー」とは  

「ダイバーシティ、エクイティ(公平性)、インクルージョン」は、AIGが以前から重視してきた企業文化だ。たとえば、障がいのある社員とない社員がともに働く、というのもその一つ。それを体現するのが、2017年に誕生したグループ会社「AIGハーモニー」である。

現在、ビジネスアシスト部がある錦糸町本店オフィスでは、障がいのある社員約20名と、その業務サポートを行う“ジョブコーチ”らを含む合計30名で業務に当たっている※。内容は、郵便の封緘や名刺の作成、廃棄書類の裁断、書類のスキャニング、社内便の集配といった作業など。AIGグループ会社社員の業務を効率よく進めるための事務作業を中心としており、依頼元からの評判もいい。

「障がい者がやるから、これくらいのクオリティでも仕方ない、と思われたくないのです」

野上亜紀子、山田豊樹、田井益加(みか)、3名のジョブコーチたちはそう口を揃える。障がいがある人々への固定概念を覆したい、彼らが秘めている実力と可能性を、広く世の中に伝えたいのだ、と。

障がいの垣根を超えてワンチームとなり、クオリティの高い仕事をする。そのためには何が必要なのか。社員それぞれの最大限のパフォーマンスを引き出すにはどうすればいいのか。ジョブコーチを務める3名に聞いた。

ジョブコーチの仕事は「伝え方」を工夫すること  

――みなさんがジョブコーチとして働く上で大切にされていることはなんですか?

野上 :
障がいのある社員たちはみんな「できること」と「できないこと」がはっきりとした個性派ぞろい。私たちがとても真似できないような集中力を長時間発揮できる人もいて、いつも驚かされます。

そんな社員たちと接するときに、我々が日々心がけているのは「伝える」ということ。もっといえば、「相手に伝わりやすい形」で説明をする、指示をするということです。とくに、自分が「言った」かどうかではなく、大切なのは相手が「理解できたかどうか」。障がいのある人の場合、わかりやすいと感じる言い方、理解しやすい見せ方などが、人によって大きく違うのです。


山田:
そういう意味で、私たちがとくに注力しているのが「マニュアル作り」です。新規の仕事を受けたときはクライアントからマニュアルや仕様書をいただきますが、そのまま使うことはまずありません。

内容を分解し、シンプルに、わかりやすく組み替えて、写真なども加えながら作り直すのです。ときには、障がいの特性に合わせて、個人専用のマニュアルを作ることもありますね。

良い関係を築くために「正しい知識」をもつ  

田井:
同時に、私たちが正確な福祉の知識を身につけておくのも大切なこと。障がいと一口に言っても、みんなそれぞれ状況や特性、個性が異なります。特別扱いがよくないと思いこんで、なんでも平等に対応してしまうと、逆にそれが相手を傷つけてしまうこともあるのです。

正しい知識を持つことで、うかつな言動を避けることができ、トラブルやアクシデントにも対処しやすくなります。ジョブコーチたちはみんな、常に新しい情報と知識をアップデートするように努力していますね。

野上:
もし、それでも判断に迷うことがあったり、問題が起きたりした場合は、社長からジョブコーチまでの管理者全員で会議をして、見解を一致させてから指導にあたるようにしています。これは、それぞれが独自に指導して社員が混乱するのを防ぐためです。

このように、コーチによって指導方針をブラさないことも、社員一人ひとりのパフォーマンスを引き出しつつ、みんなで快適に働くためには大切なことだと感じています。

ジョブコーチたちがクオリティにこだわる理由  

――クオリティの高さでも好評を得ているハーモニー。よい成果物をあげるために心がけていることはありますか?

山田:
社員たちは得手・不得手がはっきりしているので、作業をお願いするときは適材適所になるように割り振っています。発注元が驚くような、質の高い仕事をしたいといつも思います。

たとえ障がいがあっても、適切なサポートさえあれば、できることがたくさんある。可能性に満ちているのだ、ということを広く知っていただきたいのです。

田井:
よくミスがないこともお褒めいただきますが、これは1つの案件に対して常に2人の社員が当たり、ダブルチェックを徹底しているから。品物の取り違えを起こさないように、似たような仕事をする席は離したり、紛らわしいものをそばに置かないようにしたり、ミスは誰にでも起きうることだからこそ、防ぐ仕組みを作っています。

野上:
また、仕事のクオリティは各人の健康状態でも左右されますから、みんなの健康面も注視しています。たとえば、毎朝、かんたんな健康の問診票を書いてもらうようにしています。

あるいは、自分の体調を言葉で伝えることが難しい人には、赤色(不良)、青色(良好)、黄色(要注意)の3つのマグネットを渡して、その日の体調やメンタルの状態にあった1色を見やすい位置に貼ってもらうことも。こうした問診票の中身やマグネットの色を見て、お願いする仕事を変えたりもしますね。

ジョブコーチたちが目指す障がい者雇用の未来

――最後に、ジョブコーチとしての今後の目標を教えてください。

野上:
今はどうしても特別視されがちですが、障がい者雇用がどの会社もあたりまえに行われているというのが本来のあるべき姿。いつの日か、障がい者雇用が普通になって、AIGハーモニーのような特別な組織がなくなるのが私の目標です。

田井:
そのままではできないことでも、「どうやったらできるだろう?」と考えて、作業の工程を変えたり、ちょっとしたアイディアと工夫を加えたりで、できなかったことができるようになっていく。なんて前向きな職場だろう、といつも感じます。こうした認知がもっと広がるといいですね。

山田:
同感です。障がい者は「何もできない」んじゃない、適切なサポートさえあれば「何でもできる」ということを知っていただくためにも、私たちは品質を追求し、ビジネスで収益を出し、結果を出す必要があります。ここを証明できれば、障がい者雇用はもっと活発になるはず。これこそハーモニーが目指す未来であり、私たちの使命だと感じています。

  • 2021年9月9日現在、在宅勤務制を導入し、社員は交代で出社している。

<プロフィール>

野上 亜紀子(のがみ あきこ)
業務受託会社等での勤務を経て、2011年にアメリカンホームに入社。テレマーケティングセンター勤務。富士生命プロチャネル業務部勤務を経て、Job Posting制度を利用し、特例子会社設立担当として、AIUへ転籍。2017年5月より、AIGハーモニーに転籍。

山田 豊樹(やまだ とよき)
1999年に国内損害保険会社から転職し、AIU保険会社に入社。以降は、システム部門に在席し主に保険料分割・収納にまつわるシステムの開発を担当。各種プロジェクトで活躍したのち、2017年にJob Posting制度を利用し、2017年11月にAIGハーモニーに転籍。

田井 益加(たい みか)
1997年にAIU保険会社に入社し、熊本支店での勤務を経たあと、ジェイアイ傷害火災保険・事務統括部、アメリカンホーム保険会社・沖縄事務センター、AIGビジネスパートナーズ アドミオフィスでの勤務を経験。2018年1月 AIGハーモニーへJob Posting制度を利用して転籍。

掲載情報はすべて取材当時のものです(取材日:2020年3月18日)。

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