身の回りのリスク・新技術・マクロトレンドに対する意識調査③

はじめに

 AIG総研では、リスクに対する人々の主観的な認識、態度、意思決定に関する調査を定期的に実施しており、直近では2022年9月に「身の回りのリスク・新技術・マクロトレンドに対する意識調査」をWeb調査にて実施しました。

 この調査結果のなかから、前々回のコラムでは「人々のリスクの感じ方の変化」について、前回のコラムでは「リスクに対する備えと意識」についてふれました。最終回である今回のコラムでは、「新技術・マクロトレンドに対する意識」についての調査結果を紹介します。

新技術・マクロトレンドに対する意識について

図1は、現在利用しているIT機器やオンラインサービス等についての質問への回答結果です。

図1 現在利用しているIT機器・オンラインサービス等

図1. 主観的リスクの大きさについての調査結果(「大きいリスクだと感じる」「やや大きいリスクだと感じる」の合計)

 「よく利用している」「利用したことがある程度」の合計(以下、「利用率」)でみると、スマートフォンが9割弱、PCが8割強と高い利用率をしています。ただし、この調査がネットを介したオンライン調査によって実施されている点は考慮する必要があります。

 それ以外では、SNS、ネットフリマ・オークションサービス、動画・音楽配信サービス、QR決済サービス等の利用率が5割を超えています。しかし、スマートスピーカー、オンラインデリバリーサービス、Eラーニング、オンライン保険見積り・契約サービスについては2割程度と低めの利用率に留まっています。

 図2は、今後普及が期待される新技術・新サービスへの関心・利用意向についての回答です。

図2 将来の新技術・新サービスへの関心と利用意向

 「興味があり、できるだけ早く利用したい」「興味があり、広く普及した後に利用したい」までを、新技術・新サービスへの積極的な利用意向のある「強い関心層」と想定すると、提示したすべての項目について、強い関心層の割合は5割を切っており、新技術・新サービスへの関心や利用意向はいずれもそれほど高いものではないという現状を示唆しています。

 その中でも比較的支持されているものとしては、完全自動運転車(強い関心層の割合46.4%)、マイナンバーによる個人情報等の一元管理(同49.1%)があげられます。逆に数値が低かったのは、身体埋め込みセンサーによる健康管理(同24.4%)、より先進的な生殖医療(同29.0%)など、私たちの身体に影響を与える(侵襲性のある)もの、メタバース(同31.4%)やスマートグラス(同29.5%)などいわゆる「スマホの次」と想定されているものの、具体的な利用イメージなどが必ずしもまだ明確に提示されていないと考えられるものなどになります。

 また、いずれの設問についても、「興味はあるが、利用するかどうかは分からない」という「態度保留層」の割合が2.5割から4割弱を占めている点も注目されます。

 図3では、これらの新技術・新サービスのリスクに対して不安を感じるかどうかについても聞いています。

図3 将来の新技術・新サービスのリスクに対する不安の強さ

 先ほどの設問で利用意向の高かった、完全自動運転車とマイナンバーによる情報一元管理が、それにより生じるリスクへの不安感でも1位、2位を占め、7割弱の回答者が、「強い不安を感じる」または「やや不安を感じる」と答えています。これら2つの新技術・新サービスについては、多くの人々が「リスクへの不安はあるものの、実用化されたら利用したい」と認識していることが示唆される結果となっています。

おわりに

図2. リスクに対する恐怖・不安と、日本の社会がそれらにうまく対処していると考えるかどうかについての調査結果(「そう思う」「ややそう思う」の合計)

 以上、3回シリーズにて「身の回りのリスク・新技術・マクロトレンドに対する意識調査」の内容を紹介しました。調査結果に対する各種集計や統計的解析の結果、現在のリスクについての意識と、将来のリスクについての意識には関係があり、いずれのリスクに対しても警戒の強い層、逆に無関心な層などが存在することなど、多くのインサイトが得られました。

 人々のリスクに対する意識は、刻一刻と変化します。今後もこのような形で調査を継続し、人々のリスクに対する意識の変化を多面的に追うことで、今後のリスクコミュニケーションや新技術の社会受容性向上の取り組みなどに活用できるものと考えます。

(調査概要)
  • 調査対象 18歳から80代までの男女
  • 調査方法 ネット調査モニター会員に対するオンライン調査
  • 調査期間 2022年9月8日から同14日
  • 有効回答件数 1,691件

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AIG総合研究所

AIG総合研究所(以下、AIG総研)はAIGジャパンの研究機関として2017年12月に設立されました。AIG総研は、リスク・マネジメントに関する社会的な議論を喚起するthought leaderとして、グループ内外の様々な知見を結びつけ、リスク管理に関する提言・発信を行う情報ハブを目指しています。