はじめに
AIG総研では、リスクに対する人々の主観的な認識、態度、意思決定に関する調査を定期的に実施しており、直近では2022年9月に「身の回りのリスク・新技術・マクロトレンドに対する意識調査」をWeb調査にて実施しました。
前回のリスクコラムでは、この調査結果のなかから、人々がリスクをどのように感じているのかを、直近の結果ならびに過去の回答傾向の時系列での変化からみていきました。続編である今回のリスクコラムでは、リスクに対する備えと意識について紹介します。
リスクに対する備え
下記の図1は、リスクに対する備えについての比較結果を示しています。
図1. リスクに対する備えについての調査結果(複数回答。第2回調査は2020年10月、今回の調査は2022年9月に実施。)
図1. 主観的リスクの大きさについての調査結果(「大きいリスクだと感じる」「やや大きいリスクだと感じる」の合計)
前回調査(2020年10月実施)と比較し、自然災害に対するさまざま備えを実施している割合が増加傾向にあります。特に、「ハザードマップを確認している」は34.2%から41.0%に6.8ポイント増、「生活物資を備蓄している」は32.9%から40.2%に7.3ポイント増と、それぞれ大きく増加しています。「火災保険を契約している」との回答については、55.2%から55.9%へとほぼ横ばいしています。
病気やケガなどへの備えとして「医療・生命保険を契約している」割合は、54.3%から58.0%へと増加し、「食事や体重管理に気を付けている」と答えた割合も37.1%から40.3%へ増加しています。しかし、「健康増進のために意識して運動を行っている」と答えた割合は、33.0%から31.3%へと減少しています。感染症への対応が継続するなかで、運動習慣などに変化が生じた可能性があります。
また、今回初めて気候変動・地球温暖化リスクを設問に付け加えましたが、23.2%が「環境負担をかけない生活を心がけている」と答えました。
リスクに対するさまざまな意識
図2はリスクに対するさまざまな意識についての比較結果を示しています。
図2. リスクに対するさまざまな意識(「そう思う」「ややそう思う」の合計。第2回調査は2020年10月、今回の調査は2022年9月に実施。)
図2. リスクに対する恐怖・不安と、日本の社会がそれらにうまく対処していると考えるかどうかについての調査結果(「そう思う」「ややそう思う」の合計)
前回調査との比較では、リスクに関する情報について、「テレビや新聞といったマスメディアから発信される情報への信頼度」が38.7%から46.8%へと大幅に改善していることが分かります。同様に、「SNSやネットからの情報への信頼」も若干高まっています。反対に「政府・専門家から発信される情報の信頼度」は前回調査とほぼ同じとなっています。
「リスクをゼロにできないならその対策は不十分である」と答えた割合が微減、「ある程度リスクを受け入れるのはやむ得ない」と答えた割合が微増していることから、わずかながらリスクに対する寛容度が向上していることが見てとれます。
また、今回新設した設問のなかでは、「安全保障面のリスクへの対策の強化」、ならびに「気候変動リスクへの取組みの強化」について、いずれも7割近くが「そう思う」と回答しました。病気の受診については、7割超が「軽い症状のうちに積極的に受診をするほうがよい」と思っていることがわかりました。「資産を守るためにリスク型投資を活用すべきと考える」割合は45.2%に留まっています。
次回号では、新技術・マクロトレンドに対する意識についての調査結果を紹介します。
- 調査対象 18歳から80代までの男女
- 調査方法 ネット調査モニター会員に対するオンライン調査
- 調査期間 2022年9月8日から同14日
- 有効回答件数 1,691件
(関連レポート)
- AIG総研インサイト#06【レポート】身の回りのリスクに対する意識調査
https://www-510.aig.co.jp/about-us/institute/insight/06.html - AIG総研インサイト#09【レポート】第2回 身の回りのリスクに対する意識調査
https://www-510.aig.co.jp/about-us/institute/insight/09.html - AIG総研インサイト#11【レポート】第3回 身の回りのリスクに対する意識調査
https://www-510.aig.co.jp/about-us/institute/insight/11.html
AIG総合研究所
AIG総合研究所(以下、AIG総研)はAIGジャパンの研究機関として2017年12月に設立されました。AIG総研は、リスク・マネジメントに関する社会的な議論を喚起するthought leaderとして、グループ内外の様々な知見を結びつけ、リスク管理に関する提言・発信を行う情報ハブを目指しています。