飲酒運転の基準は法律によって定められています。従業員がその基準を上回る状態で運転をした場合には、従業員を雇用する企業にも厳しい罰則が科されます。そのため、車を業務に使用する企業はその基準を知っておくことはもちろん、飲酒運転を防ぐための対策を講じなければいけません。

本記事では、飲酒運転の基準や飲酒運転が発生した場合における企業の責任を詳しく解説します。

飲酒運転の基準とは

飲酒運転とは、飲酒後にアルコールの影響がある状態で運転をすることです。

飲酒運転は状態によって「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」に分かれており、ともに飲酒運転であることには変わりませんが、それぞれの基準で行政処分や罰則が異なります。

「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の違い

飲酒運転の区分

酒気帯び運転

酒酔い運転

基準

呼気1リットルあたりのアルコール濃度が0.15mg以上

客観的に見て酔っている状態

・まっすぐ歩けない

・受け答えがおかしい

など

酒気帯び運転とは、呼気1リットルあたりのアルコール濃度が0.15mg以上の状態で運転することです。これは、体重60kgの人がビール中びん1本、または日本酒1合を飲んだときのアルコール濃度に相当します。

たとえ自分では問題なく運転できていると思っても、酒気帯び運転の基準を超えていれば検挙の対象になります。

 

一方、酒酔い運転は、アルコール濃度に関わらず、アルコールによって運転に支障をきたしている状態のことです。

アルコール濃度がたとえ低くても、正常に運転ができない状態であれば酒酔い運転に該当します。たとえば、まっすぐ歩けない、受け答えがおかしいなど、客観的に見て酔っている状態であればアルコール濃度に関わらず酒酔い運転になります。

 

出典:「飲酒運転の罰則等」警視庁

出典:「飲酒運転防止」公益財団法人アルコール健康医学協会

従業員の飲酒運転を防ぐために知っておくべきポイント

ここまで「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の基準について解説してきましたが、飲酒運転とは「酒気帯び運転」「酒酔い運転」両方を総称した言い方で、どちらの状態も法律によって罰則の対象となります。

従業員の飲酒運転を防ぐためには、管理者自身が基準値やアルコールに関する知識を身につけ、従業員に教育を行う必要があります。

ここでは基準を守るために知っておくべきポイントを解説します。

アルコールが体内から抜ける時間

アルコールが体内から抜ける時間には個人差があります。

体重60kgの人の場合、純アルコール20gが約4時間で体内から抜けるといわれています。純アルコール20gとは、ビールだと500ml1本分、ワインだと200ml分の量です。

個人差はありますが、たとえば体重60kgの方が22時までに500mlのビールを3本飲んだ場合、アルコールが体内から抜けるには10時間かかるため、翌朝のアルコールチェックで検知される可能性があるということです。

 

翌日に運転を予定している場合は、飲酒量と運転までの時間を考慮する必要があります。

意外と知らないアルコール食品

飲酒運転として検知されるアルコールは一般的にアルコール類を含む飲料(ビール、ワイン、ウイスキーなど)と思われがちですが、実は多くの食品にもアルコールが含まれています。

以下はアルコールが検知される可能性のある食品の例です。

●    栄養ドリンク

●    キムチ

●    味噌汁

●    食パン

●    あんドーナッツ

 

キムチや味噌は発酵食品であるため、食べた直後にはアルコールが検知される可能性があります。また、パンは製造する過程で微量のアルコールが含まれる場合があるため、パンの種類によっては食べた直後にアルコールが検知される可能性があります。

こういった食べ物による検知は、口をすすぐことで防げます。検査前には水でうがいを行うなど、社内の運用ルールを検討しましょう。

従業員の飲酒運転における企業の責任とは

業務に関わる車の運転は、従業員(運転者)個人の問題でおさまりません。ここからは、従業員の飲酒運転における企業の法的責任について解説します。

●    民事責任

●    行政責任

●    刑事責任

民事責任

従業員が会社の業務において飲酒運転し事故を起こした場合、事業者も被害者に対して賠償責任を負います。

翌日に運転を予定している場合は、飲酒量と運転までの時間を考慮する必要があります。

行政責任

貨物・旅客運送事業者などの企業は、飲酒運転の事故により一定期間の車両使用停止や事業停止などの処分が科せられることがあります。

なお、処分内容については事故当時の運用や管理体制など、企業が飲酒運転に関してどれだけ注意をしていたかによって内容が異なります。

出典:「自動車運送事業の監査方針、行政処分基準等の改正について」国土交通省

刑事責任

企業が従業員に飲酒運転のおそれがある状態で運転をさせた場合や、運転を容認していた場合は、車両提供者として「車両等提供罪」が該当し罰則が科されます。

具体的には、企業の代表者など責任者に対して5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。 

出典:「道路交通法の一部を改正する法律の一部施行等に伴う交通指導取締り上の留意事項等について」警視庁

従業員が飲酒運転にならないよう気をつけるべき対策は

従業員の飲酒運転を防止するためには、企業の徹底した対策が必要です。

主な対策は以下の3つです。

●    従業員の教育

●    業務に車を利用する社員のアルコールチェック

●    処分の検討と社内規定の整備

従業員の教育

従業員の中には「少しなら大丈夫」「昔は問題なかった」「一晩たてば酔いは覚めるだろう」など、飲酒運転を軽率に考える従業員もいるかもしれません。そうした意識を変えるために、従業員に教育をすることが大切です。

たとえ少量でも「飲酒した」ということになりますので、アルコールを摂取した直後は、絶対に車を運転してはなりません。また、一晩寝たからと言ってアルコールが体内から抜ける訳ではないこと、体内から抜ける時間には個人差があることも周知しましょう。飲酒運転による事故により、被害者や会社にも迷惑がかかることを認識させ、飲酒運転に対する意識強化を図りましょう。

社用車を利用する従業員のアルコールチェック

2022年4月から、一定の基準に該当する企業には、改正道路交通法施行規則でアルコールチェックが義務付けられました。

顔色や声、臭いといった状態を目視で確認するなど、法律に則ったチェックを行い、その記録を保存しなければいけません。また、2023年12月からはアルコールチェックに検知器を使用して行うこと、その検知器を常時有効に保持することなどが義務付けられます。

また、従業員にアルコールの反応が出た場合には運転を禁止させるなど、社内ルールを整備することも大切です。

 

アルコールチェック義務化についてはこちらをご覧ください。

【社労士解説】アルコールチェック義務化に伴い企業が行うべき対応とは?

処分の検討と社内規定の整備

飲酒運転は、刑事責任を負う重大な問題です。

飲酒運転を未然に防ぐためにも、従業員が飲酒運転をした際にどのような処分をするか社内で検討し、就業規則などの社内規程に規定したうえで従業員に周知しましょう。

減給や出勤停止、懲戒解雇など飲酒運転に対する明確な処分を設定することで、企業の飲酒運転に対する姿勢が示され、従業員の意識を高めることができます。

日報&アルコールチェック記録アプリを活用し徹底した管理を

飲酒運転が発覚した場合は、賠償問題や信用低下など、企業にはさまざまな影響が生じます。また、飲酒運転をした従業員に対しては、降格や減給、出勤停止といった懲戒処分に加え、運転業務のない部署への異動も検討する必要があります。

もし運転免許が取消され、運転業務以外の職務に変更できないのであれば、労務の提供が不可能になるため、解雇も視野に入れる必要があるでしょう。

 

飲酒運転を防止するためには、社内ルールの策定やアルコールチェック、従業員の教育など、総合的に実施することが大切です。また、アルコールチェックが義務化されている現在では、アプリのようなデジタルソリューションを導入して管理することも有効な手段のひとつです。

運転日報を含めた面倒な紙の管理が不要となり、PC専用画面で一括管理が可能になるため、従業員の負担を軽減しつつ適切な管理ができるようになります。

 

飲酒運転防止対策の一つとして、運転管理記録システム「日報&アルコールチェック記録アプリ」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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