健康経営における女性へのヘルスケア支援

1 女性の健康課題に対するヘルスケア支援への関心の高まり

近頃、健康経営に積極的に取り組む企業において、女性特有の健康課題に対するヘルスケア支援に大きな関心が寄せられています。
企業における関心の高まりを受け、健康経営を推進する経済産業省からは、女性特有の健康課題に対する取り組みを「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」の選定基準で明確化し、優良な事例を発信していく方針が示されるなどしています。
神奈川県においては、従前より、「CHO(健康管理最高責任者)構想」など、健康経営を積極的に後押しする施策が進められていたところ、「かながわ女性と男性のデータブック」(平成25年3月作成)によれば、県内における就業者数自体は、減少傾向にあるものの、男女別に見ると、女性の就業者数はむしろ増加しており、女性特有の健康課題への取り組みを増やすことで、健康経営の質を高め、企業の更なる活性化を図ることが期待されています。
今回のコラムでは、健康経営のうち、女性に対するヘルスケア支援について、概要をみていくことにしましょう。

2 職場における女性の健康課題

まず、職場における女性の健康課題として、どのようなものがあるのか、確認するところからはじめましょう。

経済産業省・ヘルスケア産業課「健康経営における女性の健康の取り組みについて」(平成30年7月)より引用
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/josei-kenkou.pdf

 

平成30年7月に経済産業省から公表された資料では、職場における女性の健康課題として、上記5つの課題が指摘されています。
具体的には、①女性が比較的多い職種における課題として、接客業やコールセンター等の職種におけるメンタルヘルスや喫煙率の増加、②月経における課題として、プレゼンティーイズム(出勤はしているものの、健康上の問題で労働に支障をきたし、最善の業務ができなくなる状態)による損失やリテラシーの不足、③女性特有の疾病における課題として、仕事との両立や婦人科検診の有無、④妊娠・出産における課題として、キャリアチャンスの喪失、⑤更年期障害における課題として、介護との両立や職場におけるチャンスの喪失等が挙げられています。
同資料では、月経における課題に関し、いわゆる月経随伴症状(PMS)などによる労働損失(会社を休む、労働量・質の低下等)は、年間約4,911億円にのぼるとの試算も引用されており、他の4つの課題についても、相応の経済損失が想定されること、さらには、国内就業者の約44%が女性であることを踏まえると、職場における女性の健康課題に積極的に取り組み、女性が働きやすい職場環境の整備を進めることで、企業の生産性や業績の向上につなげることが期待されているといえます。

3「働く女性の健康推進に関する実態調査」の結果を踏まえた3つの施策

それでは、女性に対するヘルスケア支援として、具体的にどのような取り組みが考えられるのでしょうか?
経済産業省の上記資料では、平成30年1月に実施した「働く女性の健康推進に関する実態調査」の結果を踏まえ、以下の3つの施策が推奨されています。

まず、実態調査の結果、そもそも女性の健康課題が労働損失や生産性へ大きく影響していることについて、男性や管理職だけではなく、女性自身も認識が不足していること、さらには、男性や管理職が、女性特有の健康課題を持つ女性に対し、どのように対応をすれば良いか困惑しており、外部専門家によるサポートの必要性があることが分かりました。
そこで、上記資料では、研修等で女性の健康について取り上げることで、男性従業員や管理職だけではなく女性従業員についても、①リテラシーの向上を図るとともに、女性従業員がちょっとした不調を相談したり、管理職が部下の健康状態を見ながら対処方法を相談することができるための②相談窓口の設置を推奨しています。
また、実地調査では、女性従業員が会社に対し、会社による業務分担・適切な人員配置や柔軟な勤務形態等のサポートを求めていることも分かりました。
そのため、上記資料では、③働きやすい環境として、テレワークや休暇の整備、シフト改善等の制度を整備し、管理職や男性従業員も含め実践することで、女性従業員がそれぞれの健康状態に合わせた柔軟な働き方ができるようにすることも推奨されています。

4 カムバック制度等のワークライフバランスの実現に向けた更なる取り組みも

女性特有の健康課題へのヘルスケア支援とワークライフバランスの実現に向けた制度の更なる拡充は、いわば車の両輪であり、両者をバランス良く進め、女性にとって働きやすい職場環境を整備していくことが、企業には求められています。
産休や育休、時短勤務等のワークライフバランス関連の取り組みについては、一昔前に比べ、環境整備が進んでいるものの、まだまだ出産や子育てを理由に離職してしまう女性が多いのも実情です。
最近では、育児・介護・配偶者の転勤等によって退職した社員に対し、再度就労できる状態になった際に復職してもらうカムバック制度を設ける企業も増えてきており、一定の成果を上げていることが報告され、注目されています。(このコラムの内容は、平成31 年1月現在の法令等を前提に作成しております)。

(執筆)五常総合法律事務所 弁護士 持田 大輔