大規模感染リスクを抑える冬のノロウイルス対策

1 はじめに

ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は、特に冬期に流行する感染症です。感染力が強いため、社内で大規模感染を起こしてしまうおそれがあります。今のところノロウイルスにはワクチンがなく、治療も点滴などの対症療法に限られているため、社員には徹底したノロウイルスの予防を呼びかけたいところです。
そこで、ノロウイルスの原因とおもな症状、社員に共有したい予防策、社員がノロウイルスに感染してしまった場合の対処法についてご紹介します。
 

※出典:厚生労働省HP「冬は特にご注意!ノロウイルスによる食中毒」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000182906.pdf

2 ノロウイルス感染の原因

まずは、ノロウイルスの原因について見ていきましょう。
ノロウイルスには、「人」と「食品」のどちらかが原因となって感染します。厚生労働省が発表している「ノロウイルス食中毒の事例紹介」を参考に見ていきましょう。


事例1 人が原因の事例

2008年1月に、ノロウィルスを保有していた3名の従業員が作った大福もちを食べた431名のうち、333名が食中毒を発症する事件が発生しました。3名の従業員は、感染の自覚がなかったことに加え、この事業所の手洗い設備には消毒液が設置されておらず、手拭きに使う布タオルは共用だったため、製造の際の手洗いが不十分であったことが原因と判明しました。


事例2 食品が原因の事例

2013年3月には、ノロウィルスに汚染した「加熱不十分なカキフライ(推定)」が原因の食中毒が発生しています。発症者は、宿泊していた旅館の「カキフライ」を食べた客21名のうちの6名。冷凍のカキフライの調理にフライパンを使用したため油量が足りず、調理途中で油の温度が低下し中心部が半生の状態で提供されたことが原因と推定されています。
 

※出典:厚生労働省HP「ノロウイルス食中毒の事例紹介」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000104950.pdf

3 ノロウイルスのおもな症状

ノロウイルスに感染してから発症するまでの、ウイルスの潜伏期間は24~48時間です。感染すると、次のような症状が1~2日続きます。一般的には、その後は治癒し、後遺症もありません。

・吐き気

・嘔吐

・下痢

 

・腹痛

・軽度の発熱

 

また、感染しても上記のような症状を発症しないというケースや、軽い風邪のような症状が出る場合もあります。


※出典:厚生労働省HP「ノロウイルスに関するQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html

4 ノロウイルスの予防策

ノロウイルスは、食品取扱者や調理器具からの二次汚染を防ぐことが大切です。ノロウイルス感染者のふん便や吐ぶつには大量のウイルスが含まれるため、食品取扱者がノロウイルスに感染していた場合、大規模な食中毒になってしまうおそれがあります。従業員にノロウイルスの疑いがある場合には、すぐに生産ラインや調理担当から外す等の対応が必要となるでしょう。2つのルートから感染する可能性があるノロウイルスから従業員を守るには、適切な予防策を社内全体に共有しておくことが大切です。では、人と食品、それぞれどのような予防策をすべきなのでしょうか?

 

●人

予防の最も有効な手段としては、付着したノロウイルスを手洗いで落とすことでしょう。調理前や食事の前、トイレに行った後などは、必ず手を洗うよう徹底しましょう。また、石鹸を十分に泡立てて洗い、清潔なタオルかペーパータオルで拭くことも大切です。なお、石鹸にはノロウイルス活性を失わせる効果はありませんが、脂肪等を落とすことでウイルスをはがれやすくする効果が期待できます。人からの感染を防ぐためには、まず社内の手洗いの環境を整備することが重要です。

 

●食品

ノロウイルスを含むウイルスは一般的に熱に弱いため、加熱処理はウイルスの活性を失わせる手段として有効です。加熱が必要な食品については、中心部までしっかり加熱させるよう呼びかけましょう。ノロウイルス食中毒の原因のひとつにノロウイルスに汚染された二枚貝があります。二枚貝は大量の海水を取り込み、プランクトンなどのエサを体内に残し、出水管から排水していますが、海水中のウイルスも同様のメカニズムで取り込まれ、体内で濃縮されるためと考えられています。ちなみに、カキなどのノロウイルス汚染リスクのある二枚貝は、中心部を85~90℃で、90秒以上加熱することが望ましいとされています。

5 ノロウイルスに感染してしまった場合

ノロウイルスによる感染性胃腸炎を発症しても、出勤停止期間が法的に定められているわけではありません。しかし、ウイルスの潜伏期間は24~48時間、症状も1~2日続くため、感染者の増加を防ぐためにも、発症した(感染が判明した)場合は、症状が落ち着くまで自宅療養としたほうが良いでしょう。
また、感染者が使用していた物品については、殺菌するなどの処理が必要です。特に調理器具は、洗剤で洗浄後に次亜塩素酸ナトリウムで浸すように拭いたり、85℃以上の熱湯で加熱したりするなど、徹底した対策を施してください。

6 おわりに

ノロウイルスは、インフルエンザと並んで冬場に予防を徹底したい感染症です。インフルエンザのような予防接種はありませんので、社員が日頃から手洗いを徹底し、食品や調理器具を注意して取り扱うことが求められます。
社内への大規模感染を防ぐには、この時期に社内全体でノロウイルスの予防策を共有しておくと良いでしょう。