1. はじめに
10月号コラム「内陸型地震を引き起こす活断層~首都圏を例に~」では、内陸型地震を引き起こす活断層のメカニズムと首都圏の活断層について紹介しました。
現在、日本には2,000を超える活断層が存在しており、中でも、近畿地方は最も活断層が密集している地域の一つです。近年も活断層による地震が発生しており、代表的な地震としては1995年の阪神淡路大震災(M7.3)や2018年の大阪北部地震(M6.1)などがあります。
阪神淡路大震災で出現した野島断層
そこで、今回のコラムでは、近畿地方周辺のプレートの動きについ触れた上で、近畿地方の主要な活断層について紹介します。
2. フィリピン海プレートの移動による影響
近畿地方は、「ユーラシアプレート」という陸のプレート上に位置しています。そして、南東からは「フィリピン海プレート」という海のプレートが「ユーラシアプレート」の下に1年あたり3~5センチのスピードで沈み込んでいます(図1)。
図1:日本列島周辺のプレート
これらのプレートがぶつかりあうことで岩盤内ではひずみが蓄えられ、プレートの境界やプレート内のほか、陸の浅いところでも地震が発生します。このうち、陸の浅いところで発生する地震は、蓄積したひずみが限界に達し、「断層」を境に急速に動きだすことにより引き起こされます。過去に地震を引き起こし、将来も地震を引き起こすと考えられている断層は「活断層」と呼ばれています。
3. 近畿地方の活断層はどこにあるのか
政府の地震調査研究推進本部(地震本部)は、阪神淡路大震災のような規模の大きい地震が発生する可能性のある主要な活断層について、長期的な発生の予測を行っています(図2)。
図2:近畿地方の活断層
発生確率が高い順に、赤色(の活断層)は「30年以内の地震発生確率が3%以上」、黄色は「同確率が0.1%~3%」、黒色は「0.1%未満」、灰色は「地震発生確率が不明」を示しています。
近畿地方では、中央構造線断層帯(20番)より北側の地域に活断層が多く分布し、今後強い揺れが起こる確率が高いと評価されている活断層とその位置は下記になります。
- 「琵琶湖西岸断層(北部)」(4番):滋賀県高島市
- 「奈良盆地東縁断層帯」(13番):京都市山科区~宇治市付近、京都府城陽市~奈良県桜井市
- 「上町断層帯」(18番):大阪府豊中市~岸和田市
これら活断層によって地震が引き起こされると強い揺れに見舞われます。強い揺れにより建物が倒壊することで火災が発生したり、地盤の緩んでいるところでは土砂災害の発生も予想されます。
加えて、活断層が海域まで及んでいる場合には、津波を引き起こす可能性もあります。例えば、大阪湾断層帯(22番)は、神戸市沿岸から大阪湾を縦断して大阪湾の南部に至る、約39kmの活断層ですが、政府の発表によると、大阪湾断層の地震が発生すると、高いところでは3m~5mの津波が発生すると試算されています。
活断層による地震の被害に備えるためには、自身の身の回りに存在する活断層の所在を確認し、日頃から準備を整えることが大切です。例えば、国土地理院は主要都市を中心に丁町目単位で活断層の情報を公開しています。活断層の情報を活用し、家庭や事業所の防災・減災対策に役立てましょう。
(出典)
- 文部科学省, 気象庁, 「活断層の地震に備えるー陸域の浅い地震―近畿地方版」, (平成30年9月)
(https://www.static.jishin.go.jp/resource/pamphret/katsudanso_sonaeru_kinki.pdf) - 文部科学省, 地震調査研究推進本部事務局, 近畿地方の地震活動の特徴
(https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_kinki/), (2021年10月26日に利用) - 中央防災会議, 東南海、南海地震等に関する専門調査会(第36回), 「中部圏・近畿圏の内陸地震に関する報告」, P52~53
(http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/senmon/tounankai_nankaijishin/index_chukin.html), (平成20年12月) - 図1:大阪管区気象台, 南海トラフ地震特設ページ
(https://www.jma-net.go.jp/osaka/jishinkazan/nankai/QandAmenu/kiso.html), (2021年10月26日に利用) - 図2:文部科学省, 気象庁, 「活断層の地震に備えるー陸域の浅い地震―近畿地方版」, (平成30年9月), 6ページより
AIG総合研究所
AIG総合研究所(以下、AIG総研)はAIGジャパンの研究機関として2017年12月に設立されました。AIG総研は、リスク・マネジメントに関する社会的な議論を喚起するthought leaderとして、グループ内外の様々な知見を結びつけ、リスク管理に関する提言・発信を行う情報ハブを目指しています。
執筆:玉野絵利奈